『ONCE ダブリンの街角で』(06)のジョン・カーニーが監督した『はじまりのうた』は、音楽は人を幸せにすると思わせてくれる佳作だった。
ミュージシャンの恋人に裏切られたグレタは、ライブハウスで歌う中、音楽プロデューサーのダンに才能を見込まれ、ニューヨークの街角でゲリラレコーディングを敢行することになるのだが…。
グレタ役のキーラ・ナイトレイをはじめ、無名のバンドメンバーが実に楽しそうに演奏する姿が印象に残る。ダンが「音楽は平凡な風景を真珠の輝きに変える魔法を持っている」と語るように、音楽と溶け合うニューヨークの風景も見ものだ。
ところで、この映画で落ち目の音楽プロデューサーのダンを演じたマーク・ラファロがなかなかいいなあ、と思っていたら、『カポーティ』(05)『マネーボール』(11)のベネット・ミラー監督が、デュポン財閥の御曹司が起こした殺人事件を映画化した『フォックスキャッチャー』で早くも再会することができた。
実話を基に映画化したこちらでは、レスリング五輪金メダリストで、コーチとしても一流、弟思いのデイヴ・シュルツを魅力的に演じ、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。全く違う役柄で続けて好演を見せたマーク・ラファロは、近頃注目の俳優である。