先日受験した「大河ドラマ検定」は北区王子の中央工学校で行われた。王子で降りたのは今回が初めてのこと。試験まで少し時間があったので、駅のすぐ横から始まる音無親水公園を経て王子神社に参拝した。
道(飛鳥坂)の反対側には、徳川8代将軍・吉宗が桜の名所として奨励した飛鳥山があり、徒歩でも簡単に登れるであろうこの小山を、「アスカルゴ」なるモノレールがゆっくりと登っていくのが見える。そして、上方で急カーブになる飛鳥坂を都電荒川線が行く。
何とものんびりとしたいい風景だと思いながら、以前この場所につい書かれた一文を読んだことを思い出した。
それが『東京坂道散歩』(冨田均)で、読み直してみたら、飛鳥山周辺も近年すっかり様変わりし、「変わらぬは桜と都電ばかりだ」とあった。
冨田氏には『東京映画名所図鑑』という映画のロケ地めぐりを記録した名著があるが、『東京坂道散歩』の飛鳥坂の件でも、“王子映画”として、衣笠貞之助監督の『川のある下町の話』(55)と柳町光男監督の『十九歳の地図』(79)について触れ、「やはりここでも映画の中に「昔」をみるしかないのか…」と書いてあった。
前者はもちろん未見だが、後者はリアルタイムで見ているのにほとんど覚えていない。我が記憶力のなんと曖昧なことか。
とは言え、初めて訪れた地を、映画に関連付けて振り返ってみるのはなかなか面白い。