田中雄二の「映画の王様」

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『二ツ星の料理人』

2016-06-09 09:17:53 | 新作映画を見てみた

そんなにミシュランが偉いのかい?



 人生につまずいたシェフが、復活を懸けてミシュランの三ツ星に挑む姿を描いた美食エンターテインメントという触れ込み。原題は「BURNT=焦げ」。

 舞台はロンドン。ブラッドリー・クーパー演じる問題児的な主人公は、これまで彼が演じてきた『世界にひとつのプレイブック』(12)『アメリカン・ハッスル』(13)『アメリカン・スナイパー』(14)の延長線上の男だ。

 この男、わがままで情緒不安定、「俺は『七人の侍』(54)を目指してチームを作る」なんてしゃれたセリフを吐くくせに、集めたメンバーを全く大事にしないばかりか、思い通りにならないと彼らに当たり散らす始末。見ていてイライラしてくる。

 また、高級料理に縁のない者にとっては、調理のシーンも、出来上がった料理もあまりぴんとこない。それに、そんなにミシュランが偉いのかい? という反発すら覚える。「こちとら高級料理なんか知らないよ」という感じだ。

 何故見ながらこんなに嫌な気持ちになるのかと考えたら、それはこの映画が食べる側、つまり客のことを全く描いていないからだと気づく。ただのわがままな料理人のエゴや自己満足を描いているだけなのだ。

 監督はテレビドラマの「ER」を撮っていたという。彼にとっては手術同様、料理の過程を見せることが重要だったのか。

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