イチローの日米通算安打記録にいちゃもんをつけ、男を落とした感のあるピート・ローズ。その人間性はともかく、彼が不世出の大選手であることは周知の事実。だから、イチローの記録達成で、ローズの記録が見劣りするようなことは決してないのだ。
逆に、ローズがいかに素晴らしい選手だったかをイチローが思い出させてくれたのではないか。つべこべ言わずに、余裕を見せて「イチローおめでとう」の一言で済んだはずなのに…。
『墜ちた打撃王 ピート・ローズ』(04)
と、以前、ローズを描いたテレビドラマを見ていたことを思い出した。その際のメモを。
現役時代、ラフプレーすれすれの全力プレーで人気を博し、“チャーリー・ハッスル”(原題の「Hustle」はここからとられている)と呼ばれた男、ピート・ローズ。
何しろ、通算出場試合3562、通算打数14053、通算安打4256、通算単打3215というメジャーリーグ記録を持つ不世出のバッターで、おまけにシンシナティに生まれ育ち、主に地元のレッズで活躍したのだから地元では神のような存在だったと言っても過言ではない。そのローズがギャンブル狂で、果ては野球賭博にまで関わって野球界から永久追放されるとは…。なんという運命の皮肉か。
このテレビドラマは、監督時代のローズがどのようにギャンブルにのめり込んでいったのかを明らかにし、性格破綻者ぶりも知らされるので、見ていていささかつらくなる。またトム・サイズモアがローズそっくりに演じているから、さらに哀れさが増す。恐らく、今後もローズが復権を許されて野球殿堂入りすることはないだろうに、何故今ごろこんなドラマが作られたのかちょっと疑問が残る。
監督は『ラスト・ショー』(71)や『ペーパー・ムーン』(73)などのピーター・ボグダノビッチだったが、残念ながら“雇われ監督”といった感じだった。*自業自得とは言え、こんなふうに描かれたりするから、ひねくれてしまったの? ローズさん。