ぜひ完結編を
『イップ・マン 序章』(08)『イップ・マン 葉門』(10)に続く、ウィルソン・イップ監督、ドニー・イエン主演によるパート3。今回も実在の人物であるイップ・マンを主人公に、フィクションを巧みに入れ込んだオリジナルストーリーが展開する。『~葉門』のラストに登場した少年が成長し、李小龍(後のブルース・リー)となって弟子入りを志願するシーンも楽しい。
舞台は1959年の香港。大筋は、町を牛耳ろうとするアメリカ人(何とマイク・タイソン!)の前に、イップマンが立ちはだかるというもの。その中に、タイソンとの異種格闘技戦はもちろん、ムエタイの使い手、詠春拳の後輩(マックス・チャン)との対決など、ドニー=イップ・マンの見せ場が満載。タイソンとは3分間の限定、ムエタイとはエレベーター内外と階段、後輩とは棒、剣、素手の三段階と、アクションの見せ方にも工夫を凝らしている。
今回の新味はがんに侵された妻(リン・ホン)との夫婦愛が描かれているところ。二人の身長差も含めて、イップ・マンの恐妻家としての一面がほほ笑ましく描かれていただけに、死を覚悟した妻の前で木人を打つ姿が余計に切なく映った。ここはアクターとしてのドニーの見せ場である。
さて、『~葉門』でドニーのイップ・マンと初めて出会った時、「最初は賢者なのか愚者なのか分からない雰囲気を持って現れたのだが、見ているうちに彼の不思議な魅力にはまっていく。とにかくアクションシーンは、驚きを通り越して思わず笑ってしまうほどすごい」と記したが、そうした彼のアクションは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)『トリプルX:再起動』(17)といった客演的なハリウッド映画よりも、やはり主戦場である香港映画の方が映えるのだと、この映画を見て再確認させられた。
本シリーズの完結編として、ぜひイップ・マンと李小龍の師弟関係を描いてほしいものだ。