「松坂桃李さんの演技力に加えて、気合と本気度の高さが伝わってきた」
「真のエリートが寄り添うべき他者とは、つまり弱者のことだ」
『ゴールデン・チャイルド』(86)(1989.10.28.ゴールデン洋画劇場)
謎の邪教集団に誘拐された神の子「ゴールデン・チャイルド」の奪還に奔走する探偵(エディ・マーフィ)の活躍を描く、コミカルな冒険アクション。
『がんばれ!ベアーズ』(76)のマイケル・リッチーの久々の監督作ということで期待を込めて見てみたのだが、ただ単にエディ・マーフィのキャラクターに頼っただけの、どうということもない映画になっていたので、少々がっかりした。
ただ、主役が子どもだから、規制の厳しいアメリカでは、いろいろと抑えて作らなければならなかったのかもしれないが、同種の『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(84)などは、それでもきちんと作っているから、それが言い訳にはならないだろう。
ところで、前から思っていたのだが、近鉄のブライアントは本当にマーフィとよく似ていると再確認させられた。
『君がいた夏』(88)(1989.11.3.ビデオ)
落ちぶれた野球選手のビリー(マーク・ハーモン)は、疎遠だったいとこのケーティー(ジョディ・フォスター)が亡くなったことを知る。6歳年上のケーティーはビリーの初恋の女性だった。故郷フィラデルフィアへ向かうビリーに、ケーティーとの甘く切ない思い出が去来する。デビッド・フォスターの音楽も美しいノスタルジックな青春ドラマ。
映画全体から見れば、ストーリーの脱線や散漫さが目につき、現在と過去の描き方もいまひとつ弱いということでそれほどの出来ではない。ただ、どうもこうした過去と現在が交錯するノスタルジックでセンチメンタルな題材には弱く、どうしても見方が甘くなってしまうところがあった。
加えて、ストーリーのキーポイントに、またしても父と子のキャッチボールがあり、現在の落ちぶれた主人公が過去の思い出にふれることによって、自分の居場所、つまりホームに帰っていくところに、野球と重なる部分があった。どうやら野球には、男を少年に戻してくれる効果があるようだ。
さらに、主人公の年上の女をジョディ・フォスターが演じているのが好ましい。彼女もついに年上の女を演じる年頃になったのかという感慨もあるが、この映画のジョディは、いつもの冷めたイメージ(それもまた魅力的ではあったが…)ではなく、色っぽさに加えて弱さや哀愁を感じさせるところが、男心をくすぐるいい女として映った。
というわけで、野球とジョディの存在にうまくだまされて? 随分と点数が甘くなった気がする。