『サンセット・サンライズ』(2024.12.18.ワーナー試写室)
新型コロナウイルスのパンデミックにより日本中がロックダウンや活動自粛に追い込まれた2020年。東京の大企業に勤める釣り好きの西尾晋作(菅田将暉)はリモートワークをきっかけに、南三陸に見つけた4LDKで家賃6万円の物件に“お試し移住”することに。
仕事の合間には海に通って釣り三昧の日々を過ごす晋作だったが、地元住民たちはよそ者の彼のことが気になって仕方ない。晋作は一癖も二癖もある住民たちとの交流に戸惑いながらも、持ち前のポジティブな性格と行動力で次第に人々の中に溶け込んでいくが…。
岸善幸監督が脚本家・宮藤官九郎とタッグを組み、楡周平の同名小説を映画化したヒューマンコメディ。町のマドンナ的存在で晋作の移住先の大家でもある関野百香を井上真央が演じるほか、中村雅俊、三宅健、池脇千鶴、小日向文世らが共演。
宮城県出身のクドカンは、昨年「不適切にもほどがある!」「季節のない街」「新宿野戦病院」といったテレビドラマで、自身の震災やコロナへの思いを癖のある人物たちに仮託して脚本を書いたが、この映画の脚本も同一線上にあると言ってもいいだろう。そのテーマは喪失と再生だ。
この映画では、今振り返れば、失笑することもあるコロナ禍での規制、リモートによる在宅勤務に加えて、震災が残した傷、地方の過疎化による空き家などの社会問題をユーモアとペーソスを交えて描いている。菅田の個性が光り、宮城県女川町出身の中村がいい味を出している。
もう一つの見どころは、南三陸のグルメの数々。「孤独のグルメ」の松重豊同様、菅田のあまりにもいい食べっぷりに目を奪われる。これも立派な南三陸のアピールだ。
惜しむらくは、全体がいささか長くなったこととギャグにくどさがあった点。三谷幸喜同様、クドカンも本来は舞台やテレビドラマの人なので、映画になるとちょっとテンポや間が悪くなるところがある。
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