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今日は仕事始め。昔はその年の労働の安全や技能の上達を願うならわしがあったという。農村では田畑に鍬を入れ縄作りの作業を始め、田の神を祀って米や餅などを供えた。山村では山の神を祀り木の伐り始めを行った。漁村では船霊を祀って舟の乗り始めを行い、商家では初売や初荷が仕事始めとした。今は従業員を一同に集めて行う幹部の年頭訓話がニュースとなるが、昔の仕事始めはそれらしい実感が湧く。
30代半ばくらいまで化学工場のプラントで3交替勤務をしていた。連続して安定安全運転することが当然のことで、仕事始めなどという区切りは無かった。年末年始の勤務によっては、タワーの頂上から瀬戸内海に昇る初日の出に何度か手を合わせた。今思い返せば、新しい年の迎え方としてはまれで贅沢な経験をしていたことになる。
今日も家にいて救急車のサイレンを何度か聞いた。出かけた時にはすれ違ったし、散歩の途中では走り行く車両を見送った。こうした救急車をはじめとする市民の安心安全を昼夜を問わず守る業務に従事する職場には仕事初めの式典は無いだろうが、どんな区切りがあるのだろう。昔、諸官庁では執務を始めることを御用始めといったがこれは改まった。
プラント運転ではちょっとの油断が事故や災害へ繋がる。そういう意味では毎日の始業前ミーティングは「仕事始め」に当たる。年齢を考えると毎朝「その日始め」で平穏に過ごせることを顧みて実践し、人に迷惑を掛けないように心掛けて行こう。