
名勝・錦帯橋から続く吉香公園一帯には吉川家にまつわる歴史を知るものが数多くある。その一つに吉川家歴代の神霊を祀る国指定重要文化財の吉香神社がある。本殿と拝殿、幣殿は独特な形式で、複雑な架構と屋根型式の巧みさは、岩国藩大工の高い技術が伺える。観光客の参拝も多い。
参拝を終え境内を出ると右側奥に鳥居が見えるのは褒忠社(ほうちゅうしゃ)。ここは、「吉香神社の末社で、吉川家が初代岩国藩主が紅葉谷にある竜門司境内に節臣廟を建て吉川家の死節の臣を祀り回向所としていたが廃藩後これを神社に改めた」、説明札に記されている。ここへの参拝者を見たことはないが、先日、何枚も写真を撮っている人を見かけた。どういう人だろうと思いながら神社の横手に回った。
そばにあった樹高は20㍍を超えるといわれた「ムクロジ」の大木が根元から3㍍あたりで伐採されている。黄色い花が咲いていた記憶はあるがいつ切られたかは知らなかった。確かに社の方へ傾いていたので倒木による危険予防かもしれない。「ムクロジ(無患儒) 社寺の庭などによく見かける落葉高木。昔、種子を追い羽根の玉に、果皮は石けんに使いました」、説明札が残されているのはせめてもの心遣いか。
これだけの大きさになるにはどれほどの年月を過ぎたのだろうか。3年前の春、吉香神社横にあった県指定の天然記念物「エンジュの木」も、大樹の根本付近に大きな空洞の所在が分かり、数年以内に枯れ死すると診断され、惜しまれながら地上から3㍍ほどを残して伐採された。こうした歴史の生き証人のような大樹を生き残せるすべはないのだろうか。
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