発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

「ジャッジ!」しかし広告は常に消費者に審査されているのである

2014年01月07日 | 映画
 あけましておめでとうございます。
 ことしもよろしくお願いします。
◆映画「ジャッジ!」試写会 都久志会館

 大手広告代理店のダメ社員が、広告賞の審査員としてのインポッシブルなミッションを背負い、海外リゾート地に行くことになる。
 大広告主の息子の作ったできの悪いCMにグランプリを取らせなければ、会社は何百億もの仕事を失う。でも無理っぽい。それで、審査員となっていた男(豊川悦司)は、ダメ社員である部下(妻夫木聡)に審査員の仕事を押しつけ、コンペが行われる海外リゾートに送り出す。クビになるのはダメ社員、というわけ。
 会場のあるサンタモニカでは、世界の広告界の魑魅魍魎が跋扈?し、駆け引きを繰り広げている。
 さあどうする?

 民間放送においては、視聴者は、テレビCMを見ることで無料放送を提供されている。その代金はそのまま、商品に上乗せされている。結局消費者たる視聴者が負担しているといえばそういうことになる。
 当然、お金や労力のかけかたは、番組正味よりもCMの方が多くなる。
 興味深いと思うのは、15秒CMの方が30秒CMよりも面白いことが多いことである。
 広告類は、その企業の姿勢を如実にあらわし、伝えるものである。
 映画に出てくる、広告主企業社長の息子の作った面白くないCMの話については、それに近い話は結構あるんだろうなあ。広告を出すというか、媒体を買うというのはとても高い。それにもかかわらずつまらない広告、というのは、それに遠くない環境で作られているのだと思う。
 たとえばの話、ある地場企業の社長さんが趣味に興じているところを、全面広告で紹介しているのを見たことがある。ボランティアでもメセナでもなく、ただ、それなりにお金のかかる個人的な趣味である。なんだかなあと思った。うまく行っている会社の社長さんはいろいろなことに使える多額の報酬があって当然だと思うが、社長さんの個人的趣味に興味を持つ人など、この会社、というより社長さんに何かを売り込もうと思っている人以外にいるだろうか? この広告は企業イメージアップになるだろうか? 反感など感じたりはしないが、少なくとも私には、消費者や販売現場には無関係に思えた。この広告にかかったお金が商品に転嫁されているのなら、というところまで考えたら、あまり商品は買いたくないなあと思った。少なくとも、これを見て、その企業に親しみを持ち、商品やサービスにより多くのお金を払おうという人はあまり増えない。費用対効果を考えると効率的でないと思った。
 ところが、その次の年、また同じ企業の社長さんの似たような広告が出た。あれっきりだと思っていたんだけど。
 誰も批判しなかったのだ。従業員はもちろん、役員も、家族も、友人も。
 太鼓持ちは褒めてくれるだろう。同業者もまた、広告費の無駄遣いを褒めこそすれ批判する理由がない。
 株主的にはどうなんだろうな。
 
 劇中に出て来るトヨタ(とエースコックは実名で出るよ)のCMは、劇中CMとしてはお金がかなりかかっているような? ひょっとしてボツになったのをそのまま使ってるのではと思った。