萩尾望都の短編「柳の木」(『山へ行く』小学館 収録)のレビューに必ずといっていいくらい書いてある。
「ネタバレを読んでこの作品を読むと大損する。後悔する。この時点で先入観とともに読むことになってしまうが、何も知らないで読むのが望ましい。萩尾望都の短編としては『半神』と『柳の木』は突出した傑作である」と。
私がこの作品を初めて読んだのは、なんと生原稿でだった。美術館の原画展の展示の多くは扉ページのために描かれた美麗なカラー原稿、展覧会のポスターやチケットやチラシにつかわれた「ランプトンは語る(ポーの一族)」の扉絵のエドガーなど。わぁ綺麗、すごーいとみていくうちに、そのなかに、20ページの単色の漫画原稿が掲示されていて、それが「柳の木」。
???……!!!そうきたか。やられた(がーん)。
原画展に来るくらいの人の多くは、その話をすでに読んでいただろう。「ネタバレを読んでこの作品を読むと大損する。何も知らないで読むべし」、な漫画を、いきなり生原稿で鑑賞、解像度最大の情報としてインプットしたのである。あとあと考えると、とんでもないラッキーだったのだ。
その日は忘れもしない2011年3月12日で、楽しい予定がたくさんあったが、予定通りに過ごすにはかなり力が要った。それでもなんとか支度して街に出た。家にいて何ができるわけでもない。
メインの予定だった博多駅の九州新幹線開業イベントはすべて中止。天神のシンフォニーホールで九州電力(!)の定期演奏会、それから、最終日が近かった萩尾望都原画展のために川端の福岡アジア美術館に行ったのだった。私を支配していた、おろおろした気分が、美術館で少し抜けた。
そのあと天神に戻った。いつも通りに賑わうなか、高校生が各校から合同で募金活動に出ていた。10人以上並んでいて、みんな違う制服だった。昨日の今日でしょ。速さがすごくいい。これぞ友情努力勝利だわ。希望ってやつだわ。
街に出て良かった、と心から思った。
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