◆寒中見舞いの時期もとうに過ぎ
ともかく元気でいます。年末年始とちょっとしたアクシデントに見舞われたのと、それから先仕事が詰まってたせいで、書けませんでした。まだ仕事は詰まってますが、ぼちぼち書いていきます。個人的にお便りもします。
◆地雷原ソングがなんだって採用されたのかという不思議
「あたしおかあさんだから」という歌が物議をかもし、そのあと作詞者と歌手があまりの不評ぶりに商売の継続が困難になりそうな気配なのでゴメンナサイしたためこの歌はおそらくお蔵入りするのだろう。世の中気に入った歌ばかり流れてるものではないが、どれどれどんな歌詞かしら、と、調べてみたら見事なまでに地雷原ソングだった。すでにあちこちで叩かれているけどMTJもチラっと自分の考えたことを書いてみる。
◆モラハラにして経済DV夫の歌
この歌は「あたし」を、「あなた(あんた、おまえ、きみ、あるいは妻の固有名詞)」に言い換え、「◯◯するの」を「◯◯しろよ」に変えると、まんまモラルハラスメント+経済ドメスティックヴァイオレンス夫の歌になる。炎上したのはだからだ。
「あたしおかあさんだから」の歌は父親が出て来ない。だが主人公はシングルマザーというわけでもなさそうである。(昔のような正社員じゃなく)パートに出ろ。(たまにであっても)自分の服買うな。夜中に出歩くな。ライブ行くな。ハイヒール履くな。休日に妻が美容院に行くために夫が子どもを数時間みることさえしてくれなさそうな家庭である。どんなモラハラ男と結婚したんですか、なんの経済DVですか?と突っ込みを入れたくなるような母親像である。全体的に自己肯定感が低い(独身時代は立派に働けると「強がってた」など)が、それもモラハラ男の台詞っぽい。そういう歌が広く歌われるということは、モラハラと経済DVが容認されるということである。有名な絵本作家が作詞して人気のある歌のおにいさんが歌う歌としてはまずいのではありますまいか。
◆ネタ元を勝手に推測する
おかあさんたちのエビソードを募集してつくったようなことを作詞者は言ってたけど、歌詞をぱっと見て思ったのは、去年リリースされ、シングルマザーが主人公であると思われる「母である為に」(阿部真央)という歌の歌詞と似たところがある(たとえば、大好きなおかずを子どもにあげる≒ごはんのおいしいところは先に食べさせる)。それに、おととしテレビドラマ化されたレディースコミック「ふれなばおちん」(小田ゆうあ)の昔ハイヒールのバブルOLだったけど、今はなりふり構わないお母さん(第一回の時点で)という主人公。このふたつを適当に混ぜてつくったような。トレンドを追うのも人気商売として大事なことだしね。でも、そうだとすれば両方ともちゃんと読んでないと思う。
◆母親の自己犠牲を美化しすぎの歌、というのとは違う
母親の自己犠牲を美化しすぎの歌、という評判だったが、いやいやいや、そんな美化された母親の歌では全然ない、と思う。だって「あたしおかあさんだから」の主人公の「あたし」は、母親になったことについて実は後悔しているようだからである。歌のなかで「もしも戻れたなら夜遊ぶ、ライブ行く、自分の服買う」と言っている。ほんとうはそうしたいのだが、おかあさんだからできないというのである。潔くないこと甚だしい。というか、おかあさんになったことよりも、モラハラ男をひきあててしまったことを後悔しているようにも聞こえるんだな。夫がいなくなれば「母である為に」という歌に出てくる、いろいろ大変だが母親になったことをこれっぽっちも後悔していなさそうなシングルマザーになれるであろうのに。
◆ムッとしそうな人が多すぎる。これでは支持されまい
とりあえず、正社員のワーキングマザーは、ムッとするだろうね。この歌をタテにパート身分にされることを推奨されるようなことがあってはならない。そのほかこの歌を聞いてムッとしそうな人は枚挙に暇がない。1枚でも自分の服を買ったとか、子どもを預けてライブに行ったとか。おかあさんだからやっちゃいけないと言ってるのかこの歌は?パートであたしが稼いだお金ででも?と感じるだろう。
たとえ、「あたしおかあさんだから」の歌のような状況に近い人だって、納得してその状況を受容している(「ふれなばおちん」の主人公とか。この人は、夫が思いつきで部下に「妻を誘惑してくれないか」と言ったりしないかぎりはそのままで幸せだったのだたぶん)人もいるだろう。自分の服なんてあとまわしでいい、夜遊びなど興味ない、ライブに行きたいとも思わない人もいると思う。第一母親になることは、不可逆なことで、戻れないなら楽しもうと思ってやってる人も多いだろう。
そんな人々に、不満を持ちながらおかあさんやってる人の歌など聞かせてどうするんだ? じつはあなた不満なんでしょ?独身時代に戻りたいんでしょ?と囁かれてるような気分にならないか? とりあえず、歌のおにいさんに歌わせる歌じゃないよね。
おかあさんの応援歌としてつくった、とすると、マーケットを舐めとったな。というわけで、気分が悪くならない人の方が少数であろう、という珍しい歌が昔々あったとさ、ということになりそうな話でした。
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