轢き逃げ 最高の最悪な日
を観ました。
眩しい光に包まれた初夏の朝、海の見える狭い坂道で、事件は起きた。
異国情緒漂う地方都市で、大手ゼネコン・城島建設に勤める若きエリート・宗方秀一(中山麻聖)はいつになく焦っていた。
3日後に控えた結婚式の打ち合わせのため、城島建設副社長・白河の一人娘で、婚約者の早苗(小林涼子)がホテルで待っている。
式の司会を務める、学生時代からの親友で同僚の森田輝(石田法嗣)を乗せて、不慣れな抜け道を加速していく秀一の車。
路地裏にある喫茶スマイルの角を曲がった時、若い女性を撥ねてしまう!
……「誰も見てない」。
輝の囁きで、車を急発進させた秀一。その場から立ち去った二人は、早苗の元へ向かう。
打ち合わせを終えて帰宅した秀一と輝は、夕方のTVニュースで、轢き逃げした女性・時山望の死亡を知る。
翌朝、怯えながら出社した二人には、反目する専務一派のいつもの嫌みに構う余裕もない。
何者かからの脅迫を受けるも、秀一の結婚式は無事に終わる。
秀一が人生最高の日を迎えていた時、轢き逃げ事件で突然一人娘の望を失った、時山光央(水谷豊)・千鶴子(檀ふみ)夫妻は、最悪の日々を過ごしていた。
“秀一と輝が逮捕された”という知らせを受けたところで、娘が帰ってくるわけではない。
なんとか日常を取り戻そうと耐える両親は、望の遺品返却に訪れた二人組の刑事、柳公三郎(岸部一徳)と前田俊(毎熊克哉)から意外な質問を受ける。
「遺品の中に携帯電話が見当たらなかったんですが……」。
娘の部屋を探したが携帯は見つからず、引き出しにあった日記から、事件当日の望の行動が明らかに。
微かな違和感を抱いた時山は、娘の仕事仲間や友人に会いに出かけていく。
自分の内に潜む衝動から魔的な行動に出てしまい、己の罪深さに苛まれる秀一。
準抗告で釈放された輝に接触を試みた時山も、やりきれない思いが募るばかりだった。
やがて新緑の美しい頃、複雑に絡み合う事件に巻き込まれてしまった人々は、予想だにしなかった真相に辿り着き、そして、それぞれの“これから”を見つけ出そうとする。
水谷豊監督・脚本です。
一昨年デビュー作を見たばかりですが、結構キャスティングや演出が独特で好印象でした。
それとロケーションの良さが印象的でした。
今作もそんな期待値でしたが、急にスキルアップしたのか、かなり高品質な超本格映画でかなり面白かったです。
ちょいちょいいわゆる水谷豊のイメージな刑事ドラマっぽい雰囲気も入ってきましたが。
予告編の想像からは大分違う序盤でした。
ドローン的なスケール感大きい長回しの空撮からそのまま物語につながっていきます。
絶対に遅刻が許されない雰囲気の若者二人が慌てて車で急いでいて。
作品が作品なだけにいきなり嫌な予感でドキドキさせられる目が離せない見事な導入でした。
わずか数分でこんな緊迫感を作り出しているのは見事でした。
そして案の定の事故、轢き逃げ、その夜からの怯えた暮らし。
映画開始から1時間くらいはこの轢き逃げ犯の日常を描いているだけでかなり予想外の構成でした。
実は轢き逃げという大きすぎる秘密があるのに大手ゼネコンに努めていてその上流の派閥争いに巻き込まれていて。
そこもなかなかの熱量で見れました、轢き逃げ事件を一旦一つ後ろのレイヤーに移すくらいに。
そして古畑任三郎ばりにバレないかな?という犯人たちの怯えた暮らし、普通に幸せな暮らしをしながらも大きな罪を隠して心が全然平穏じゃない日々の描写。
逃げられるのか?何か知ってる誰かがいるのか?という誰もが子供の頃に抱いたようなやましさから逃げるような心境の描写です。
正直このテーマ、描写だけでも2時間は見れそうでした。
教習所で見る車で人生終わるダークなお話のリアル版って感じでした。
非常に社会派な雰囲気漂う作風でした。
ところが予想外のタイミングで今度は被害者家族側の描写に移って行きます。
ここから別の映画が始まるくらいの裏面っぷりですが、加害者側の導入と同様に実に上質な被害者側の導入でした。
そこからは刑事と被害者家族の描写で。
加害者側のストーリーが大分気になっていたのにそっちを話し半ばでガッツリ放り投げる感じでした。
その大胆展開はかなり見事でした。
肝心の部分はびっくりするくらいサラッと越えていきます。
逆にそこをフォーカスしたらメンタル的にキツかったかもなので作品のストーリー性を維持するのに良い手法でした。
実に重厚に被害者家族の悲しみを描いていました。
水谷豊と檀ふみという実力派がかなりのナチュラル系演技をしていたのでかなり見心地良かったです。
そしてその中の何気ない「遺品の中に携帯が無い」という会話から物語は少しずつ少しずつ展開していきます。
でもってびっくりするくらいの急展開です。
カラスの親指みたいに全部ひっくり返すくらいのどんでん返しっぷりです。
ちょっと萎えそうになるほどの変わりっぷりでしたが、自分は振り落とされずにちゃんと楽しめました。
サスペンス、謎解きとしてもなかなかの見応えでした。
全体的に実にいい感じだったので時々ちょっと萎える2時間ドラマみたいな件は気になりました。
それでもそんな大胆な物語よりも交通事故の加害者、被害者共に人生が破滅していくところがメインで。
それによる人の心が一番フォーカスされていて良かったです。
場内では泣いている人もちらほらでした。
そして今作もロケーションはかなりいい感じで印象的でした。
主演の中山麻聖はハンサムですがクールで感情を奥深くに押し込んでいる演技が素晴らしかったです。
作中での変わりっぷりも見事で素晴らしい説得力でした。
クライマックスに大事なシーンがありますが実に重厚に上質にこなしていて感動しました。
主人公の相棒役を石田法嗣が演じていました。
コレまた一人で二面性から三面性くらいまで演じる役どころでしたがかなりインパクトありました。
今後活躍が期待されます。
小林涼子はかなり綺麗どころな役で超お嬢様な役でしたがハマっていて説得力ありました。
今まで何度も見かけたことがありますが、今までで一番美しかったですね。
そしてただのお嬢様ではない非常に感動的な演技でした。
刑事役の毎熊克哉もなかなか印象的でいい演技でした。
水谷豊は今まででも一番くらいナチュラルな演技でかなり見事でした。
ミステリーパートになるとやはり水谷豊っぽさがちょっと強くなりますが、遺族の演技のシーンは素晴らしかったですね。
檀ふみの冷静さから悲しみを爆発させる演技は泣けました。
重要な刑事役は岸部一徳が演じていました。
TAPの時と似たような雰囲気で水谷豊と絡んでいました。
この作品にはあまりに絶妙なコメディ要素も見事でした。
期待を大分上回る上質な映画でした。
もう少し話題になってもいいくらい面白いと思います。
監督・水谷豊の評価は大分上がりました。
そんなわけで9点。
を観ました。
眩しい光に包まれた初夏の朝、海の見える狭い坂道で、事件は起きた。
異国情緒漂う地方都市で、大手ゼネコン・城島建設に勤める若きエリート・宗方秀一(中山麻聖)はいつになく焦っていた。
3日後に控えた結婚式の打ち合わせのため、城島建設副社長・白河の一人娘で、婚約者の早苗(小林涼子)がホテルで待っている。
式の司会を務める、学生時代からの親友で同僚の森田輝(石田法嗣)を乗せて、不慣れな抜け道を加速していく秀一の車。
路地裏にある喫茶スマイルの角を曲がった時、若い女性を撥ねてしまう!
……「誰も見てない」。
輝の囁きで、車を急発進させた秀一。その場から立ち去った二人は、早苗の元へ向かう。
打ち合わせを終えて帰宅した秀一と輝は、夕方のTVニュースで、轢き逃げした女性・時山望の死亡を知る。
翌朝、怯えながら出社した二人には、反目する専務一派のいつもの嫌みに構う余裕もない。
何者かからの脅迫を受けるも、秀一の結婚式は無事に終わる。
秀一が人生最高の日を迎えていた時、轢き逃げ事件で突然一人娘の望を失った、時山光央(水谷豊)・千鶴子(檀ふみ)夫妻は、最悪の日々を過ごしていた。
“秀一と輝が逮捕された”という知らせを受けたところで、娘が帰ってくるわけではない。
なんとか日常を取り戻そうと耐える両親は、望の遺品返却に訪れた二人組の刑事、柳公三郎(岸部一徳)と前田俊(毎熊克哉)から意外な質問を受ける。
「遺品の中に携帯電話が見当たらなかったんですが……」。
娘の部屋を探したが携帯は見つからず、引き出しにあった日記から、事件当日の望の行動が明らかに。
微かな違和感を抱いた時山は、娘の仕事仲間や友人に会いに出かけていく。
自分の内に潜む衝動から魔的な行動に出てしまい、己の罪深さに苛まれる秀一。
準抗告で釈放された輝に接触を試みた時山も、やりきれない思いが募るばかりだった。
やがて新緑の美しい頃、複雑に絡み合う事件に巻き込まれてしまった人々は、予想だにしなかった真相に辿り着き、そして、それぞれの“これから”を見つけ出そうとする。
水谷豊監督・脚本です。
一昨年デビュー作を見たばかりですが、結構キャスティングや演出が独特で好印象でした。
それとロケーションの良さが印象的でした。
今作もそんな期待値でしたが、急にスキルアップしたのか、かなり高品質な超本格映画でかなり面白かったです。
ちょいちょいいわゆる水谷豊のイメージな刑事ドラマっぽい雰囲気も入ってきましたが。
予告編の想像からは大分違う序盤でした。
ドローン的なスケール感大きい長回しの空撮からそのまま物語につながっていきます。
絶対に遅刻が許されない雰囲気の若者二人が慌てて車で急いでいて。
作品が作品なだけにいきなり嫌な予感でドキドキさせられる目が離せない見事な導入でした。
わずか数分でこんな緊迫感を作り出しているのは見事でした。
そして案の定の事故、轢き逃げ、その夜からの怯えた暮らし。
映画開始から1時間くらいはこの轢き逃げ犯の日常を描いているだけでかなり予想外の構成でした。
実は轢き逃げという大きすぎる秘密があるのに大手ゼネコンに努めていてその上流の派閥争いに巻き込まれていて。
そこもなかなかの熱量で見れました、轢き逃げ事件を一旦一つ後ろのレイヤーに移すくらいに。
そして古畑任三郎ばりにバレないかな?という犯人たちの怯えた暮らし、普通に幸せな暮らしをしながらも大きな罪を隠して心が全然平穏じゃない日々の描写。
逃げられるのか?何か知ってる誰かがいるのか?という誰もが子供の頃に抱いたようなやましさから逃げるような心境の描写です。
正直このテーマ、描写だけでも2時間は見れそうでした。
教習所で見る車で人生終わるダークなお話のリアル版って感じでした。
非常に社会派な雰囲気漂う作風でした。
ところが予想外のタイミングで今度は被害者家族側の描写に移って行きます。
ここから別の映画が始まるくらいの裏面っぷりですが、加害者側の導入と同様に実に上質な被害者側の導入でした。
そこからは刑事と被害者家族の描写で。
加害者側のストーリーが大分気になっていたのにそっちを話し半ばでガッツリ放り投げる感じでした。
その大胆展開はかなり見事でした。
肝心の部分はびっくりするくらいサラッと越えていきます。
逆にそこをフォーカスしたらメンタル的にキツかったかもなので作品のストーリー性を維持するのに良い手法でした。
実に重厚に被害者家族の悲しみを描いていました。
水谷豊と檀ふみという実力派がかなりのナチュラル系演技をしていたのでかなり見心地良かったです。
そしてその中の何気ない「遺品の中に携帯が無い」という会話から物語は少しずつ少しずつ展開していきます。
でもってびっくりするくらいの急展開です。
カラスの親指みたいに全部ひっくり返すくらいのどんでん返しっぷりです。
ちょっと萎えそうになるほどの変わりっぷりでしたが、自分は振り落とされずにちゃんと楽しめました。
サスペンス、謎解きとしてもなかなかの見応えでした。
全体的に実にいい感じだったので時々ちょっと萎える2時間ドラマみたいな件は気になりました。
それでもそんな大胆な物語よりも交通事故の加害者、被害者共に人生が破滅していくところがメインで。
それによる人の心が一番フォーカスされていて良かったです。
場内では泣いている人もちらほらでした。
そして今作もロケーションはかなりいい感じで印象的でした。
主演の中山麻聖はハンサムですがクールで感情を奥深くに押し込んでいる演技が素晴らしかったです。
作中での変わりっぷりも見事で素晴らしい説得力でした。
クライマックスに大事なシーンがありますが実に重厚に上質にこなしていて感動しました。
主人公の相棒役を石田法嗣が演じていました。
コレまた一人で二面性から三面性くらいまで演じる役どころでしたがかなりインパクトありました。
今後活躍が期待されます。
小林涼子はかなり綺麗どころな役で超お嬢様な役でしたがハマっていて説得力ありました。
今まで何度も見かけたことがありますが、今までで一番美しかったですね。
そしてただのお嬢様ではない非常に感動的な演技でした。
刑事役の毎熊克哉もなかなか印象的でいい演技でした。
水谷豊は今まででも一番くらいナチュラルな演技でかなり見事でした。
ミステリーパートになるとやはり水谷豊っぽさがちょっと強くなりますが、遺族の演技のシーンは素晴らしかったですね。
檀ふみの冷静さから悲しみを爆発させる演技は泣けました。
重要な刑事役は岸部一徳が演じていました。
TAPの時と似たような雰囲気で水谷豊と絡んでいました。
この作品にはあまりに絶妙なコメディ要素も見事でした。
期待を大分上回る上質な映画でした。
もう少し話題になってもいいくらい面白いと思います。
監督・水谷豊の評価は大分上がりました。
そんなわけで9点。