地球のいちばんはげた場所

ぼくと君がすわっていたのは
地球のいちばんはげた場所
体育館のような台所に
君があの朝生けたバラ

風が走り抜けたのは
地球のいちばんはげた場所
遊んでいたのは風の子供たち
矢印の帽子を冠っていた

石油ストーブで旅をしたのは
地球のいちばんはげた場所
ぼくらは古新聞を指揮棒にして
冬の星座に歌わせた

うぐいすの声を聞いたのは
地球のいちばんはげた場所
君のバスケットボールのゴールの中に
ぼくは春の花をさしこんだ

見知らぬ男のことを知ったのは
地球のいちばんはげた場所
君は顔から影になり
ぼくを夕闇の中に置き去りにした

ぼくが今でも思うのは
地球のいちばんはげた場所
体育館のような台所に
君があの朝生けたバラ


from友部正人

	はじめぼくはひとりだった
	インディペンデントレーベル
	インディペンデントレーベル