メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

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彼女がその名を知らない鳥たち

2017年11月01日 | 映画
彼女がその名を知らない鳥たち
を観ました。


5歳年上の男・陣治と暮らしながらも、8年前に別れた男・黒崎のことが忘れられずにいる女・十和子。
不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きながらも、彼の少ない稼ぎに頼って働きもせずに怠惰な毎日を過ごしていた。
ある日、十和子が出会ったのは、どこか黒崎の面影がある妻子持ちの男・水島。
彼との情事に溺れる十和子は、刑事から黒崎が行方不明だと告げられる。
どれほど罵倒されても「十和子のためだったら何でもできる」と言い続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った彼女は、黒崎の失踪に陣治が関わっていると疑い、水島にも危険が及ぶのではないかと怯えはじめる――。


白石和彌監督作品です。
最近見たばかりのユリゴコロと同じく沼田まほかるの原作です。

何か自分が好きそうな映画の予感があったので遠くまで見に行きましたが、
行ったかいがありました。

序盤はちょっと思った感じと違うかな?とも思いましたが、
後半に行くにしたがってどんどん面白くなっていきました。
そうすると、一見低評価な気分で見ていた序盤すら面白い感想で塗り替えられて行くようでした。

いかにも大阪ローカルな感じのがさつな世界観。
清潔さのない暮らし、と貧乏くさい食事。
最初はちょっとやり過ぎに思えて入りにくいのですが、徐々になれてくるとそれが非常に強い世界観を醸し出します。

冒頭、モンスター客の様にあちこちクレームを入れている主人公のシーンから入るので、
非常に嫌な気分になり主人公に好感持てない導入ですが、不思議と放っておけない気分になってきます。
2時間の作品で上手いこと観客の感情を操作していると思います。

エロティックなシーンも多く、意外と暴力描写もありました。
最初からダークな雰囲気ですが、それは最後までダークでした。
最後の最後のクライマックスだけちょっと晴れ晴れです。

ストーリーはがさつな暮らしの描写から徐々に不穏な空気感へ。
疾走した元恋人に関するミステリーの様になっていきます。
それはありがちと言えばありがちですが、なかなかのどんでん返しでした。

ちょっとネタバレになりますが、9割が蒼井優目線で描かれるのですが、
それがこの映画と言ってもいいのですが。
ラストのエピローグ的な箇所だけ阿部サダヲの目線で描かれます。
そこがかなりの感動ポイントでした。
見てる人も麻痺してきますが、そりゃ阿部サダヲ演じた男にも感情はあり普通の人なのです。
極限とも言えるような優しさが、彼に異常とも言える行動をさせているのです。
蒼井優目線だとその異常姓しか汲み取られないので。
その構造は非常に見事で巧妙でした。

あまりに理不尽な扱いをされても、健気に若い彼女を支え続ける男の愛。
それがこの映画の真のテーマかもしれません。

主演の蒼井優はどんどん演技派のフェーズに入っていますが、今作はそのピークかもしれません。
エロティックな描写もかなりありますが、今まででも一番過激だった気がします。
濡れ場などは本当にやっているかのような熱量がありました。
場内は結構年配のお客さんも居たので、自分がドキドキしてしまいました。
大まかなキャラとしてはよく見るプッツン系の蒼井優でした。

相手の阿部サダヲがすごかったですね。
特殊メイクもしてると思いますが常に薄汚れて不潔で。
極端な演技で最初は違和感を感じましたが慣れてくると流石の演技派を思い知らされました。
大阪の貧しい暮らしの雰囲気が見事に表現されていました。

松坂桃李がいい人かと思いきやなかなかのクズ人間で、
彼にこの役をやらせたのはなかなか快挙だと思います。
濡れ場がかなり生々しくて、適度な変態性がよりリアリティを生み出していました。

竹野内豊もかつて観たことないようなシンプルなクズ人間でした。
松坂桃李と同様にかなりのクズ人間でした。
竹野内豊にこの役をやらせたのも改めて凄いと思いました。

村川絵梨は久々に観た気がします。
結構おとなになって綺麗になってきた気がしました。

何か極限の愛の物語だったと思います。
前半見てた段階ではまさかこんなに感動するとは思いませんでした。
それくらいクライマックスの構造は見事でした。

普段、自分がふざけて言っているフレーズ。
好きすぎてあの人から生まれたい!
みたいなフレーズを非常に感動的に扱っていました。

沼田まほかるの小説を読んでみたくなりました。


そんなわけで8点。


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