メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

WE ARE LITTLE ZOMBIES

2019年06月14日 | 映画
WE ARE LITTLE ZOMBIES
を観ました。


これは、こころを取り戻そうとする冒険の記録。
両親が死んだ。悲しいはずなのに泣けなかった、4人の13歳。
彼らはとびきりのバンドを組むと決めた。こころを取り戻すために—
出会いは偶然だった。よく晴れたある日、火葬場で出会った4人。ヒカリ、イシ、タケムラ、イクコ。
みんな、両親を亡くしたばかりだった。
ヒカリの両親はバス事故で事故死、イシの親はガス爆発で焼死、タケムラの親は借金苦で自殺、イクコの親は変質者に殺された。
なのにこれっぽっちも泣けなかった。まるで感情がないゾンビみたいに。
「つーか私たちゾンビだし、何やったっていいんだよね」
夢も未来も歩く気力もなくなった小さなゾンビたちはゴミ捨て場の片隅に集まって、バンドを結成する。
その名も、“LITTLE ZOMBIES”。
やがて社会現象になったバンドは、予想もしない運命に翻弄されていく。
嵐のような日々を超えて、旅のエンディングで4人が見つけたものとは―
超音楽冒険RPGムービー、完成。(なにそれ)


長久充監督です。
海外で評価されているようで、予告編も個性的でちょっと気になっていました。

ただ本編はそんな次元じゃないくらい個性的でした。
めちゃくちゃ先鋭的で個性的で既存の映画の価値観をひっくり返すくらいの凄いエネルギーの映画でした。
ハイセンスで自分の映画観も揺らぎそうなほどです。
たまにこういう作品に出会いますが、そういう中でも実写のものでは上位のものだと思います。
アニメ系だと稀にそういう超次世代な作品に出会うことがありますが。

冒頭から細かいカット割りで凄いハイテンポの会話劇。
かなりクールなやり取りの中やたら名言が多くて最初の10分くらいで相当心を掴まれました。
確かに近年、この手のハイスピードオープニングで強烈なつかみをしてくる映画は多いですが、その中でもかなりハイレベルです。
凄い始まり方だなと思いましたがなんと2時間そんな感じの映画でした。

両親を亡くしたのに泣けない4人の子どもたちの出会い。
かなりクールで名言だらけの会話。
時々評価に使わせてもらうフレーズですが松本大洋漫画の会話みたいなクール感です。

コレまた近年の流行りな気がしますが、4人の個性にバラエティ性を与えず、似たような4人の組み合わせです。
みんなクールで無感情で冷めた子どもたち。
とても現代っ子な感じで筋の通った感じ、説得力はありました。
熱意や情熱や根性が通じない世代です。
絶望とかよりもっと向こう側に居るようなキャラクターでした。

物語はゲームに例えられるようなメタファーな感じもあり、会話の中でもそんな傾向がありました。
チャプター的なシナリオの区切りはstageとなっていてオープニングもそのstageのつなぎ目も音楽も8ビットな世界観です。
ちょっとコミカルでシュールですが劇中の実写の効果音も8ビットになっていたりするのは素晴らしいセンスでした。
そしてほぼ全てのシーンが、映像の撮り方が斬新です。
こんな位置から、こんな角度から見たこと無いというシーンの連続で極度のオリジナリティです。
日常的なものだったりやりとりだったりも決して普通には見せません。

そして非日常的なものだったり極彩色な描写だったりとても印象的です。
徹底したオリジナリティでもはやアートな世界です。

一応青春音楽映画ですが、その肝心な音楽でさえ次世代感でめちゃくちゃ説得力あります。
この手の映画の劇中歌だと普通にいい曲が使われるケースしかほぼ知らないですが、今作は違います。
正直いい曲では無いと思います、不思議とクセになるような曲です。
そういう音楽性をためらいなく使えるセンスが素晴らしいです。

カット割りの激しさとセリフの多さで通常の映画の倍くらいのボリューム感があります。
その中でサブシナリオもたくさん噛ませながらも大きなストーリーの大きな起承転結もキレイで見事でした。
なんか2時間とは思えない長い時間を見させられるような時間間隔がありクライマックスにはもはや感慨深さで泣きそうでした。

結構過激なセリフや展開もありますがそれを子供にやらせたり言わせたりすることで緩和する見事な設定です。
また8ビットな映像や音楽でチープな世界観にしてしまうことで緩和させたりしてきます。

長久監督は長編初作品ですが前作の高評価のおかげか、びっくりするような豪華キャストです。
しかもそれぞれほぼワンポイントみたいな信じられない起用法です。

個人的に永瀬正敏のシーンの撮り方、あんなシーン見たこと無くて関心しました。

主人公・ボーカルの二宮慶多はそして父になるの子ですね。
雰囲気あってとても素晴らしい演技でした。
クールで無感情なのにそのまま泣いたり、ちょっと感情出したりも効果的でした。

紅一点・キーボードの中島セナは正直めちゃくちゃ良かったです。
年齢より大人っぽい雰囲気で、ルックスも相当好みです。
中でも一番冷めたキャラだった気がしますが凄い存在感でした。
佇まいからその美しいルックスから将来間違いなくトップ女優になるとしか思えなかったです。
かなりファンになりました、今後は強めに追っかけようと思います。

ベースの奥村門土は初めて見ましたがこの子もとても良かったです。
ちょっと中学生的なヘアスタイルになっていましたがかなりハンサムポテンシャルある気がします。
将来雰囲気重視の演技派として渋いハイセンスの映画でたくさん見たいですね。

ドラムの水野哲志はちょいちょい見かけたことがありますがルックス的にインパクトあって良いですね。

池松壮亮がバンドのマネージャー的な役どころでした。
最近見たばかりの町田くんの世界の時の役と通ずるところがありますが。
こういう脇役でもハイセンスの映画にはためらい無く出るスタイルは素晴らしいです。
個人的にはNo.1くらいの演技派と思っていますが、今作でもその能力を遺憾なく発揮していました。

その他佐々木蔵之介、工藤夕貴、初音映莉子、村上淳、西田尚美、佐野史郎、菊地凛子、永瀬正敏とありえないくらいの豪華な脇役陣です。
前作の高評価が為せる業でしょうか。
しかもそういう豪華キャストをほぼピンポイントでしか使わないことで作品のハイセンス性を維持する見事さです。
名前負けして使ってしまえば普通の作品に寄ってしまいますからね。

ストーリーの感動もありますが映像や役者のセンスなど作り手のセンスの高さにも感動する凄い映画でした。
一応創作活動している端くれとして非常に刺激的で影響を受けるかもな作品でした。
20代に出会っていたら強烈に影響を受けたかも知れません。
既存の映画の価値観やら映画そのものの捉え方を変えられそうな、令和の映画だなって気がしました。
もうおじさんですが振り落とされないように頑張ろうと思いました。

あまりに刺激的だったので前作の短編
”そうして私たちはプールに金魚を、”
も見てみましたがコレまた素晴らしいハイセンス映画でした。
全く同じ作風でテーマも近く同じ手法、同じような映像も多々ありました。

そういう徹底したスタイルを持ったクリエイターって感じですね。
長久監督は映画監督というよりは映画クリエイターみたいな呼び名で呼びたいですね。


そんなわけで10点。

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