メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

彼らが本気で編むときは、

2017年03月01日 | 映画
彼らが本気で編むときは、
を観ました。


小学5年生のトモ(柿原りんか)は、荒れ放題の部屋で母ヒロミ(ミムラ)と二人暮らし。
ある日、ヒロミが男を追って姿を消す。ひとりきりになったトモは、叔父であるマキオ(桐谷健太)の家に向かう。
母の家出は初めてではない。ただ以前と違うのは、マキオはリンコ(生田斗真)という美しい恋人と一緒に暮らしていた。それはトモが初めて出会う、トランスジェンダーの女性だった。
キレイに整頓された部屋でトモを優しく迎え入れるリンコ。食卓を彩るリンコの美味しい手料理に、安らぎを感じる団らんのひととき。
母は決して与えてくれなかった家庭の温もりや、母よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いながらも信頼を寄せていくトモ。その姿にリンコも愛おしさを覚え始める。
リンコとマキオの出会いは、リンコが介護士として働く老人ホーム。マキオの母であり、トモの祖母でもある認知症のサユリ(りりィ)が入居している。献身的に自分の母を介護するリンコに、マキオが一目惚れしたのである。
悔しいことがあるたび、編み物をして心を落ち着かせてきたリンコ。
そして今は、とある目標に向かい、“煩悩”を編み続けている。やがて“煩悩”作りには、マキオとトモも参加するようになる。
本当の家族ではないけれど、3人で過ごす特別な日々は、人生のかけがえのないもの、本当の幸せとは何かを教えてくれる至福の時間になっていく。
このまま永遠に続くように思えた3人の関係だが、突然、ヒロミが帰ってくる―


荻上直子監督作品です。
かなり好みな方の監督です。

今作も多くを語らず画面で淡々と伝える作風で非常に素晴らしい映画でした。
場面転換も独特で、もう少し会話が続きそうな雰囲気を持たせながら次の場面になります。
なので映画が常に余韻に満ちている感じで非常に没入しやすかったです。

冒頭から言葉での説明は無く描写で主人公の置かれた状況を伝えていきます。
登場人物達も説明は無いですが、どういう関係性か?は徐々にわかります。
その描写は非常に丁寧で素晴らしかったです。
子役にも長尺で演技をさせて、実に見事な空気感を作っていました。

予想外に主人公はトモという11歳の女の子です。
男を追って母親が居なくなってしまったので、叔父の家に居候する物語です。
その叔父にはトランスジェンダーの彼女ができていました。
主人公の女の子を通じて家族ではない人々が家族になっていく物語です。
海街diary的な設定といえばそれ系ですが、トランスジェンダーの人に対する社会的な差別や、困難が描かれているのが大きなテーマです。

自分も正直、偏見のようなものを持っていましたが、この映画を観て考えは結構変わりました。
一つの病気なので理解していかないと行けないですね。
劇中では本人も家族も偏見で観られていましたが、なかなか辛いものでした。
決して大げさに描かれておらず、結構生々しく描かれていました。
それを子供を通して伝える手段は素晴らしいです。
子供に理解できるのに大人に理解できない事は無いという様なメッセージを感じますね。

主役の女の子は柿原りんかちゃんが演じていましたが、この子の演技力凄いです。
ちょっと大人びていて、クールで強気で。
なので時々子供らしい悲しみを出すととても切なくなりました。
見た目もかなり可愛く、綺麗さすらにじませるので将来が楽しみです。

生田斗真がトランスジェンダーの女性・リンコを演じていましたが、かなり素晴らしい仕上がりでしたね。
最初は女装みたいな違和感でしたが慣れてくると本当に女性に見えてきました。
でもやっぱり時々イケメンに見えてしまいますね。
所作も喋り方も相当なりきっていて、今年の俺アカデミー賞の主演女優賞なのか主演男優賞なのかわかりませんがノミネートですね。

桐谷健太が控えめだけど頼れる素敵な男性でした。
あまり感情を出さず、静かに芯の強さを伝えていて相変わらず上手でした。

田中美佐子がリンコを守るためにためらいのない感じが素晴らしかったですね。

ミムラが珍しくダメダメな母親を演じていましたが、意外と様になっていました。
全体的にしっとりとした演技が多いですが、この人だけなかなかオーバーでした。

素晴らしいハイセンスな演出でわかりやすさもあり、子供も出ているのになかなかナイーブなテーマで。
性転換手術のやり方も初めて知れて勉強になりました。
優しさや悲しさ、家族の素晴らしさを味わえる名画でした。


そんなわけで9点。

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