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30年後の同窓会 LAST FLAG FLYING

2018年06月12日 | 映画
30年後の同窓会 LAST FLAG FLYING
を観ました。


かつてベトナム戦争に従軍し、痛みを分かち合った気の置けない仲間たち。
30年前に起きた事件をきっかけに大きく人生が変わった三人。
すっかり酸いも甘いも噛み分けた大人となり、それぞれの道を歩む旧友にして悪友の三人組は、仲間に起きた悲劇をきっかけに、海の向こうでイラク戦争が行われている時代に30年ぶりの再会を果たし、親友の息子の遺体を連れ帰る旅に出る――。
ふたつの戦争で刻まれた喪失感。
しかし心の殻を一枚ずつ剥いでくれる仲間との旅が、30年前の“ある事件”によって傷つけられた心を再生させ、再び人生が輝き出す姿が描かれる。


リチャード・リンクレイター監督です。
正直最も好きな監督の一人でしょう。
今、一番好きな監督かも知れません。

誰が監督かも知らずに見に行ったのですがあまりに名画だったのでそんな予感はありました。
素敵なシーンの連続に泣かずにはいられず、素晴らしいエンディングでした。
たまにあるのですが、映画の最中はギリギリ泣いてないのにエンドロールの暗闇の最中に猛烈に泣いてしまう映画があります。
これがまさにそれです。
本当にあまりにハイセンスで今思い出しても泣きそうです。

僕の言葉で表現するにはあまりにハイセンス映画でした。
妙に作家性を追求したアーティスティック作品でも無く、ちゃんと娯楽性や起承転結はあるのですが。
その全ての場面をハイセンスで描いている映画でした。

リチャード・リンクレイター作品にしては今までに無くコメディ要素が強いです。
それがまた本当にいい塩梅で、混んでいた劇場はなかなかの笑いに満ちていました。

物語の全体像が見えない序盤ですが、謎を引っ張りすぎることもなく、いいタイミングで要素が明かされていきます。
主人公の一人が、唐突にめちゃくちゃ悲しい暴露をしていく序盤です。
設定としてはめちゃくちゃ悲しいのですが、深刻になりすぎずブラックジョークを交えての絡みが素晴らしいです。
散々悪態をついていじっていたのに悲しいその後があるというパターン。

アメリカらしいガサツな所作、大雑把な振る舞いが実に良い雰囲気を出していました。
アメリカらしい風情ってこういうところによく現れますね。

息子の遺体と対面するシーン、本来ならば猛烈に悲しくBGMバックに描きそうなシーン。
なんと遠目から仲間たちの雑談ベースで見せるのです。
「見ない方がいいのに」「どうやって死んだんだ?」など。
確かに当事者の心理描写なんてわざわざ描かなくてもたいていベタですからね。
それを見ている第三者の視点ってあまりにハイセンスで。
そして悲しすぎるからやっぱり泣けるのです。
このシーンの描写がハイセンス過ぎて度肝を抜かれました。
こういうセンスを持ったクリエイターが居ると思うと嫉妬しか無いですね。

別に親しくもなかった戦友を誘った深さはこの作品の大きなメッセージを感じました。
あまりに絶望的な状況の時に頼る人って確かに普段の距離感じゃないパターンってありますよね。
主人公達が50歳くらいってのがまたその辺の説得力を増していました。
会話劇のやり取りが非常に秀逸で、程よい衝突と程よい慰めと。
感傷的になりすぎず、駄目にもなりすぎず、実に良い幅の中を行き来するような。
これが大人のメンタルでの苦悩って気がしました。

いきあたりばったりな車旅、漠然と目的地に向かっていく感じとかジーンとしました。
夜の街で遊んでたら乗り換えの終電逃して駅のベンチで始発を待って雑魚寝してるシーンの雰囲気とかたまらなかったですね。
若者では描けないおじさんの青春、ロードムービー感が最高でした。

皆過去の傷があり、それを精算しようとする旅にもなるのですが。
特にメンバーの一人の飲んだくれは容赦ないのですが、わざわざそれを暴きに行ったとあるシーンだけはこらえて嘘をつくのです。
深かったですねー。
残り少なくなった人生、諸々回収しようとするのだけど、時に回収しないことが正解なのかも知れない、というこの世代での学習。
そして優しさがゆえの嘘。
真実というのは立場によっては良かったり悪かったり。
嘘もまたしかり。
人間はいくつになっても学ぶものなのだと思いました。

主演はスティーブ・カレルでした。
妻と息子に死なれるというものすごい悲しい人物像でした。
とかく息子との関係に後悔を抱いている感じで。
寡黙だけど不思議とノリのいい感じで妙に人間味がありました。
こういう人って意外とグループを盛り上げますよね。

もうひとりの主役、ブライアン・クランストンが飲んだくれで野蛮なバーの経営者を演じていました。
セリフ量やら登場シーンで言えばこの人が実質な主役って気もします。
トランボでの演技が非常に印象的ですが、ガサツなアメリカ人を演じさせたらかなりの一級品です。
強引に人を巻き込んで物語を転がします。
憎まれ口ばかりでトラブルメーカーでめちゃくちゃ面倒くさい人間ですが、その分深い優しさがあって。
泣かされました。

ローレンス・フィッシュバーンは敬虔な牧師役でした。
足が悪くて二人に振り回される役で、何度も離脱しそうになりながら絶妙のタイミングで腹をくくる感じが素晴らしかったです。
確かにそれ以上同じやり取りはくどいかな?と思わされることがなく。
決してスペシャルな人物ではないですが、牧師ならではの優しさもあってやはり人間味溢れる良い人物像でした。

アメリカ人にはこうした、普段の友達とは別の、まさに戦友という存在があるのでしょう。
この感覚は日本人にはわかりにくいですがなんか想像は出来ました。

ハートフルなロードムービー、
余韻たっぷりなラストシーンが非常に素晴らしかったです。


そんなわけで9点。

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