歩いて海まで行きたい・・・
1週間、何とも言えないその衝動が消えなかったため本当に歩いて海へ行く事にした。
もうすぐ部屋を出てゆく同棲相手との最後の思い出作りだ。
飲み物の準備をして、歩きやすい靴で外へ出た。
雨が降るかもしれないと言っていたがあえて傘は持たずに出かけた。
まずは街の讃岐うどん屋へ行きエネルギー補給。
そしてパン屋で腹が減った時用のロールパンを買って、先週と同じように土手へ向かった。
そして川下へと歩き始めた。
程よく過ごしやすいいい天気の日だった。
川沿いをひたすら南へ。
岩井俊二映画「ピクニック」のようにひたすら川沿いに続く小さな遊歩道の上を歩いた。
それは果てしなく続く様に見えた。
目指すのだからいつか海まで行けるのは確実なのだが、本当に歩いていけるのかは不安だった。
都会にしてはそれなりに広大な風景を見て歩く。
河川敷にはいくつもグランドがあり、野球やらサッカーをやっている人達がいる。
それを見て歩く。
時々立ち止まって少年野球に見入ったりする時間もあった。
広い場所にずっと居ると、人は所詮自然の欠片であり、どんな苦悩も不安も被害妄想も、何の意味も持っていないような気がしてきたりもする。
それは僕にとって素晴らしい時間だ。
人間界においては楽天主義の人ほど幸福であり確実に優れていると最近感じるようになった。
それが出来ずにこんな風にぜぇぜぇ言いながら心を浄化させないと生きれない僕はかなり下の方だ。
しばらく歩くと寂れたつり船屋なんかが点々とあり土曜日だってのに誰一人おらず、水門やら季節労働者用と思われるかなりボロボロのアパートがあったりして。
まるでつげ義春漫画の世界に迷い込んでしまったかのようだった。
そして空気がだんだんと海っぽくなってゆくのを感じた。
川岸が砂浜みたいになっていたりして。
下流の向こうの方が真っ白な風景になっていた。
海だ。
目視出来るところまで海に近づいたが、疲労感があったため少し座って休んだ。
コンクリートの上をずっと歩いていると、足の裏はかっかと熱くなった。
こんなにも身近に日常の出口はあるのだと感じていた。
彼女がハンカチを無くしている事に気付いた。
いつだったか僕が買ってあげた安物だからどうでも良かった。
水辺を見ると小さな蟹や何か凄い早い小魚なんかがいっぱい居た。
テトラポットの上を歩くと、その下にはゴミとちょいと大きめの蟹が沢山居て少し怖さを感じた。
やがて道の終わりまで歩いたのだが、埋立地で工業地帯だったため望んだ海はそこには無かった。
でもどうせならと工業地帯を抜けさらに街の果てまで行ったが臭いのきつい汚れた海だった。
しかし僕の心には心地の良い達成感とここまで来れたことの満足感でいっぱいだった。
そこで写真を一枚撮り、ゴールだった。
工業地帯の為人が歩く事を考慮されてない道が多くて、結構怖かったし、休もうにも何だか臭いがきつくて休めなかった。
木の生えている場所は小さな虫が沢山居て鬱陶しかった。
しかし僕らは普段見慣れない風景に囲まれ、悪くは無かった。
車専用みたいな道を怖がりながら歩く事が少年時代の冒険を思い出させてくれる。
いつの間にか汗でびっしょりになっていたシャツ。
再びすぐ家に向かって歩き始めたが、あの距離をもう一度歩くのはかなり気が重かった。
オレンジ色になり始めた工業地帯の中を場違いな空気を放ちながら僕らは歩いた。
自動車教習所を横目に、工場を横目にただただ歩く。
少し川から離れたために、なかなか川まで戻れなかった。
やがて川へ戻った。そしてさっき海まで向かった道を逆に歩いて家を目指した。
そうとう消耗していた。
立ち止まるタイミングを探していた。
そして土手に座り込んだ。
もう疲れきってしまって靴を脱いで靴下も脱いで上着を布団代わりにして草の上に彼女と一緒に寝転んだ。
ipodを聞きながら、少し眠っていたかもしれない。
広い空からぽつぽつとこぼれてきた小雨が瞼を撃って目が覚めた。
パンを食べて再び歩き始めた。
彼女が無くしたハンカチを気にかけていたので、何となく探しながら歩いた。
途中座礁して草むらに埋もれている壊れた船があった。
僕らは冒険ついでにその中へ入ってみた。
ホームレスの人でも住んでいるのか、いたのか、寝室には布団も敷かれていて生活の余韻があった。
さらに土手を歩いていると、先程少年野球を見ていた場所にハンカチは落ちていた。
なんという発見。
よくぞ戻ってきたと僕は思った。
そのまま日が暮れて暗くなってゆく世界の中を歩いた。
皮膚感覚で流れる時間があった。
そしていつしか馴染みのある風景にたどり着いた。
世界一小さな冒険イベントの締めに近所にある、まだ行った事のない焼肉屋に行って珍しく肉を食べた。
無情にも時は流れてしまった。
すべてはさよならのカウントダウンの中だった。
結局最後には自分の家に辿り着く。
良くも悪くもそこに戻ってくる。
自分の存在感が疲れた体から溢れ出てきた。
1週間、何とも言えないその衝動が消えなかったため本当に歩いて海へ行く事にした。
もうすぐ部屋を出てゆく同棲相手との最後の思い出作りだ。
飲み物の準備をして、歩きやすい靴で外へ出た。
雨が降るかもしれないと言っていたがあえて傘は持たずに出かけた。
まずは街の讃岐うどん屋へ行きエネルギー補給。
そしてパン屋で腹が減った時用のロールパンを買って、先週と同じように土手へ向かった。
そして川下へと歩き始めた。
程よく過ごしやすいいい天気の日だった。
川沿いをひたすら南へ。
岩井俊二映画「ピクニック」のようにひたすら川沿いに続く小さな遊歩道の上を歩いた。
それは果てしなく続く様に見えた。
目指すのだからいつか海まで行けるのは確実なのだが、本当に歩いていけるのかは不安だった。
都会にしてはそれなりに広大な風景を見て歩く。
河川敷にはいくつもグランドがあり、野球やらサッカーをやっている人達がいる。
それを見て歩く。
時々立ち止まって少年野球に見入ったりする時間もあった。
広い場所にずっと居ると、人は所詮自然の欠片であり、どんな苦悩も不安も被害妄想も、何の意味も持っていないような気がしてきたりもする。
それは僕にとって素晴らしい時間だ。
人間界においては楽天主義の人ほど幸福であり確実に優れていると最近感じるようになった。
それが出来ずにこんな風にぜぇぜぇ言いながら心を浄化させないと生きれない僕はかなり下の方だ。
しばらく歩くと寂れたつり船屋なんかが点々とあり土曜日だってのに誰一人おらず、水門やら季節労働者用と思われるかなりボロボロのアパートがあったりして。
まるでつげ義春漫画の世界に迷い込んでしまったかのようだった。
そして空気がだんだんと海っぽくなってゆくのを感じた。
川岸が砂浜みたいになっていたりして。
下流の向こうの方が真っ白な風景になっていた。
海だ。
目視出来るところまで海に近づいたが、疲労感があったため少し座って休んだ。
コンクリートの上をずっと歩いていると、足の裏はかっかと熱くなった。
こんなにも身近に日常の出口はあるのだと感じていた。
彼女がハンカチを無くしている事に気付いた。
いつだったか僕が買ってあげた安物だからどうでも良かった。
水辺を見ると小さな蟹や何か凄い早い小魚なんかがいっぱい居た。
テトラポットの上を歩くと、その下にはゴミとちょいと大きめの蟹が沢山居て少し怖さを感じた。
やがて道の終わりまで歩いたのだが、埋立地で工業地帯だったため望んだ海はそこには無かった。
でもどうせならと工業地帯を抜けさらに街の果てまで行ったが臭いのきつい汚れた海だった。
しかし僕の心には心地の良い達成感とここまで来れたことの満足感でいっぱいだった。
そこで写真を一枚撮り、ゴールだった。
工業地帯の為人が歩く事を考慮されてない道が多くて、結構怖かったし、休もうにも何だか臭いがきつくて休めなかった。
木の生えている場所は小さな虫が沢山居て鬱陶しかった。
しかし僕らは普段見慣れない風景に囲まれ、悪くは無かった。
車専用みたいな道を怖がりながら歩く事が少年時代の冒険を思い出させてくれる。
いつの間にか汗でびっしょりになっていたシャツ。
再びすぐ家に向かって歩き始めたが、あの距離をもう一度歩くのはかなり気が重かった。
オレンジ色になり始めた工業地帯の中を場違いな空気を放ちながら僕らは歩いた。
自動車教習所を横目に、工場を横目にただただ歩く。
少し川から離れたために、なかなか川まで戻れなかった。
やがて川へ戻った。そしてさっき海まで向かった道を逆に歩いて家を目指した。
そうとう消耗していた。
立ち止まるタイミングを探していた。
そして土手に座り込んだ。
もう疲れきってしまって靴を脱いで靴下も脱いで上着を布団代わりにして草の上に彼女と一緒に寝転んだ。
ipodを聞きながら、少し眠っていたかもしれない。
広い空からぽつぽつとこぼれてきた小雨が瞼を撃って目が覚めた。
パンを食べて再び歩き始めた。
彼女が無くしたハンカチを気にかけていたので、何となく探しながら歩いた。
途中座礁して草むらに埋もれている壊れた船があった。
僕らは冒険ついでにその中へ入ってみた。
ホームレスの人でも住んでいるのか、いたのか、寝室には布団も敷かれていて生活の余韻があった。
さらに土手を歩いていると、先程少年野球を見ていた場所にハンカチは落ちていた。
なんという発見。
よくぞ戻ってきたと僕は思った。
そのまま日が暮れて暗くなってゆく世界の中を歩いた。
皮膚感覚で流れる時間があった。
そしていつしか馴染みのある風景にたどり着いた。
世界一小さな冒険イベントの締めに近所にある、まだ行った事のない焼肉屋に行って珍しく肉を食べた。
無情にも時は流れてしまった。
すべてはさよならのカウントダウンの中だった。
結局最後には自分の家に辿り着く。
良くも悪くもそこに戻ってくる。
自分の存在感が疲れた体から溢れ出てきた。