メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

ステップ

2020年07月18日 | 映画
ステップ
を観ました。


健一はカレンダーに“再出発”と書き込んだ。始まったのは、2歳半になる娘・美紀の子育てと仕事の両立の生活だ。
結婚3年目、30歳という若さで妻を亡くした健一はトップセールスマンのプライドも捨て、時短勤務が許される部署へ異動。
何もかも予定外の、うまくいかないことだらけの毎日に揉まれていた。そんな姿を見て、義理の父母が娘を引き取ろうかと提案してくれたが、男手一つで育てることを決める。妻と夢見た幸せな家庭を、きっと天国から見ていてくれる彼女と一緒に作っていきたいと心に誓い、前に進み始めるのだ。
保育園から小学校卒業までの10年間―――。
子供の成長に、妻と死別してからの時間を噛みしめる健一。
そんな時、誰よりも健一と美紀を見守り続けてくれていた義父が倒れたと連絡を受ける。誰もが「こんなはずじゃなかったのに」と思って生きてきた。
いろんな経験をして、いろんな人に出会って、少しずつ一歩一歩前へと踏み出してきた。
健一は成長を振り返りながら、美紀とともに義父の元に向かう。
そこには、妻が残してくれた「大切な絆」があった―――。


飯塚健監督です。

ちょっと油断してましたがめちゃくちゃハイセンスの大号泣映画でした。
素直に相当いい映画だと思います。

まあシングルファーザーの奮闘記を拝見しましょう、くらいの気持ちで見ていたので。
冒頭から、お、流石に雰囲気は良いなってなりながら見ていて。
そしたら思ったより序盤で泣きそうになって。
あれ?こんな凡庸な映画で泣くのか?なんて思ってしまいましたが。

娘役が三段階なのですが、二人目になったらもう結構泣いてしまって。
センスと演出が良すぎて途中からはテンパイ状態で。
些細なセリフのやり取りや所作でも感動して号泣してしまい。
終盤の感動ラッシュはずっと号泣でした。

作品はチャプター式に時系列で親子の10年のポイントポイントを切り取ったような構成です。
淡く滲んだ感じの映像とか本当にささやかな日常を切り取ったようなシーンの素晴らしさ。
そして役者陣の演技が神がかり的に素晴らしかったです。
新人子役からベテラン俳優たちまで、みんなキャリアハイじゃないかしら?ってくらいの名演でした。
そして編集も素晴らしくどのカットも長すぎず短すぎず。
しっかり感情が乗っかるくらいの店舗の良い尺で各エピソードを描いてくれていました。

飯塚健監督の好きなところは登場人物たちのクールな会話のやり取りなのですが。
その会話を見ているだけで、描かれていない部分の普段の会話まで見えてくるような。
その演出はかなり秀逸です。
ませた口調の娘が父に恋人作っても良いなんてことをさらっと言うと父が
「そんなに大人になるなよ」
って言うシーン、全然泣くようなシーンじゃないのでしょうがそこでもう号泣でした。
自分のセリフで父の恋人が感動して泣くことをわかりきってる娘が喋りながら、本当にながらな感じでティッシュ渡すシーンも最高すぎました。
描いている尺以上に世界観を表現している作品は本当に素晴らしいと思います。

今作の特徴としてはシングルファーザーという若干マイノリティな人を描いていますが、
いわゆるドラマ映画的なベタな困難が起きないということですね。
義理のお父さんが若干ドラマ的ではありますが。
娘が反抗したり誰かが事故にあったり仕事が極端にうまくいかなくなったり、とか無いです。
日常生活にある通常の困難に真摯に向かい合う主人公とその周りの人々を描いているだけですね。
そして出てくる人がみんな優しくてみんないい人で。
この優しい人々たちだけで困難に向かい合うのが素敵すぎて。

ステップというタイトルの意味が途中でわかりますが、そういう英語を知らずに非常に勉強になりました。
そしてその意味がわかるとまたこの映画の構造がまた違って見えてより感動しました。
セリフが無いシーンでも言葉以上に何かを沢山喋っている感じもあり。
クライマックスで娘がとあるものを指でなぞってましたが、そのシーンだけで号泣でした。
2時間のしっかりとしたフリがそこで回収された気がしました。

主演の山田孝之は父親役の記憶はあまり無いですが全然違和感なく見事に父親でした。
普段の生活での父親活動が透けて見えるくらいとてもナチュラルに見事な演技でした。
10年を描いていますが、違和感なくちゃんと10歳くらい歳を取っている感じでした。
トップ俳優であり代表作は数しれずある山田孝之ですが、今作はキャリアハイくらいに素晴らしかったと思います。

娘役の二人目、白鳥玉季がびっくりするくらい素晴らしかったです。
個人的に子役に素晴らしい演出することが監督の評価にかなり関わりますが、その点で今作はパーフェクトです。
この子のクールさ、日常感の醸し出し方、クールなセリフを違和感なく扱うセンス。
凄い子役が出てきたなと、やめなければ将来ビッグ女優になりそうな予感でした。

娘役の三人目、田中里念もめちゃくちゃ素晴らしかったです。
白鳥玉季ちゃんが素晴らしかったので、ああ、ここで変わっちゃうのか、、、と一瞬残念な気持ちになったのですが。
びっくりするほどクオリティそのままの演技でした。
子役とはいえ二人一役でここまで役を見事に引き継いだ映画はあまり記憶に無いですね。

義理の父親役の國村隼が今作では非常に重要な役でした。
病死してしまった娘の夫を、血の繋がりは無くても息子だ!と強い愛で支えます。
この夫婦の義理の息子の支え方が実にリアルで没入しやすかったです。

その妻役の余貴美子も同様にとても優しい義理の母でした。
頑固な夫を支える内助の功の感じがよく出ていましたね。

再婚相手になる広末涼子も素晴らしかったですね。
仕事場だとバリバリのキャリアウーマンなのに恋愛シーンではちょっと幸薄い雰囲気もある優しい女性で。
あんなに社会的なアイドルだったのに時代や自身の年齢に柔軟に対応してずっとトップに居るのは素晴らしいですね。
もうただの演技派女優ですね。

いつも大絶賛してきた伊藤沙莉も相変わらず見事でした。
正直この子のシーンでこの作品の質や方向性がつかめました。

川栄李奈も素晴らしかったです。
元AKBの中では唯一本当に女優になった人のイメージかもですね。
元AKBというのもはばかられるくらいになってきましたね。

角田晃広も非常にらしいいい演技してました。
この人はガッツリ俳優やって欲しい気持ちもあります。

その妻役の片岡礼子も佇まいだけでもいい感じでした。

カメオ的に中川大志が出てきてびっくりします。
山田孝之のバーターとしてでしょうけど贅沢でした。

大好きな萩原みのりもちょっとの出番ですが良い味出してました。
このちょい役にすら素敵な雰囲気をつけた監督の力はお見事過ぎました。

本当にかなりのいい映画だと思いますので是非多くの人に見て頂きたいですね。
泣くつもりゼロで見に行って劇場で大号泣した湯を沸かすほどの熱い愛以来の感情だったかもです。


そんなわけで9点。

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