メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

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リバーズ・エッジ

2018年02月16日 | 映画
リバーズ・エッジ
を観ました。


若草ハルナ(二階堂ふみ)は、彼氏の観音崎(上杉柊平)が苛める山田(吉沢亮)を
助けたことをきっかけに、夜の河原へ誘われ放置された<死体>を目にする。
「これを見ると勇気が出るんだ」と言う山田に絶句するハルナ。
さらに、宝物として死体の存在を共有しているという後輩でモデルのこずえ(SUMIRE)が現れ、3人は決して恋愛には発展しない特異な友情で結ばれていく。
ゲイであることを隠し街では売春をする山田、そんな山田に過激な愛情を募らせるカンナ(森川葵)、暴力の衝動を押さえられない観音崎、大量の食糧を口にしては吐くこずえ、観音崎と体の関係を重ねるハルナの友人ルミ(土居志央梨)。
閉ざされた学校の淀んだ日常の中で、それぞれが爆発寸前の何かを膨らませていた。
そうした彼らの愛憎や孤独に巻き込まれ、強くあろうとするハルナもまた、何物にも執着が持てない空虚さを抱えていた。
そんなある日、ハルナは新しい死体を見つけたという報せを、山田から受ける…。


行定勲監督作品です。
実績、実力を兼ね備えたハイセンス系監督だとは思いますが最近は難解な映画が多い印象です。

岡崎京子漫画の映像化だそうです。
漫画原作ということでもっと爽やかな青春映画を予想していましたが、メチャクチャ裏切られました。
かなりダークでショッキングな青春映画でした。

監督の作風は違えどショッキングさの感じがヘルタースケルターと似てるな、と思いながら観ていたのですが。
両方共岡崎京子原作だったので、納得でした。
また学校内でのあまりに残酷なヒエラルキーの描写は”桐島、部活やめるってよ”を彷彿とさせるものがありました。

時代設定が昭和な感じで。
おそらく主人公は昭和50年辺りの生まれな設定で、自分と同世代くらいの設定でした。
ファッションも小道具も会話も大変懐かしく、共感出来る要素が強かったです。
ああ、俺らの青春時代ってこんなだったなぁと何度も思いました。

冒頭はいきなり、かなり過激ないじめを受ける男の子とそれを助ける女の子。
行定勲監督らしく、全体像はつかめないですが、何かが起きている感じ、嫌な予感しかしない感じは惹き込まれます。

各キャラが抱える問題、それぞれの物語の発散の仕方、ショッキングな要素の散らかり方が凄くてコレはちゃんとまとまるのか?と心配になるほどでした。
過激なイジメ、ゲイ、屈折した愛情、死体で結ばれる友情、妊娠、覚醒剤、憎悪、引きこもり、、、。
全部非常に嫌な予感しかしなくて観ていて疲れました。
多分、現代では成立しない過激な設定ですが、舞台を30年前くらいにしていることで説得力は増してます。
確かに自分たちの青春時代は今ほど社会は優しくなくて、こういう過激な要素は社会に潜んでいたものです。
携帯の無い社会、夜に出かけて集まる感じ、妙なリアリティが満ちていて、それが没入感を助長してました。

ちょいちょいホームムービーみたいなインタビューシーンがあります。
アドリブ感強いナチュラル演出で人物のパーソナリティの説明だったり、物語にまつわる部分を語っています。
まだ描かれていない部分を語ったりするので見事な予告的な演出になっていました。

河原にある死体を見るだけで非常に複雑な内面のバランスをとる少年・少女。
この、ただ死体を見てるだけって設定が非常に見事でした。

この作品で強く評価したいポイントですが、画面アスペクト比が4:3なのです。
年間500本くらい映画を観ますが、このサイズは1本あるか?くらいだと思います。
近年では相当珍しい手法ですね。
ちょっとネタバレですが、本当にラストのワンカットだけフルスクリーンになります。
言葉でも音でもない、技術的なアーティスティック表現だと思いましたが、その演出で涙が出ました。
あまりに過激な日々を終えた少年少女をその広い画角で表現することで、やはり今までの全てが非常に息苦しかった事を再認識させる。
見事過ぎる演出でした。

そしてあまりにダークな物語のクライマックス流れる小沢健二の主題歌。
オシャレでちょっと切ないその歌声が、もはや皮肉の様な優しさすらたたえていてメチャクチャ後引く仕上がりでした。
トラブルの後の徹夜明けの空の感じは行定勲作品の真骨頂な感じでとても好きなのです。

主演の二階堂ふみはちょっと凄すぎました。
何か冷めているけど、妙なところに感情的で、観ている人を失望させるような主人公で。
今までも過激な役、体当たりの役はやってきましたが最たるものでした。
行定監督は過去も女優さんの役幅を広げる様な事をしてきましたが、清純派女優をセクシーやらせたりしてきましたが。
二階堂ふみと絡めば、まぁこうなりますよね。
メチャクチャナイスバディでした。
常にタバコ吸ってる感じ、今だとダサい感じのファッション、役の完成度は非常に高くて流石でした。
二階堂ふみのお陰で非常に価値も上がっていると思います。

吉沢悠は最近売れっ子ですが、そのイメージを払拭するくらい、新しい役者を観ているかのようでした。
過激なイジメを受けても冷めていて、死体を見ることで心を落ち着かせる。
ゲイで売春してるけどカモフラージュで後輩の女の子と付き合っていて。
その女の子をどんどん病んだ方向へ導いていて非常に複雑な少年でした。
ただこの時代のこの世代の人間にはコレくらい闇がある人は確かに居たなと、非常にリアリティを感じました。

SUMIREは初めて観ましたが、両親のいいとこがしっかりと受け継がれていてサラブレッド感半端ないです。
特に若い頃の浅野忠信を見るかの様に非常に雰囲気持ってました。
暴飲暴食しては全部吐く、芸能人学生だけどやはり非常に冷めていて死体を見ることでバランスをとる感じで。
セックスを覗き見しながら魚肉ソーセージかじるシーンは印象的でした。

上杉柊平は結構脇役で見かけますが非常に印象的なルックスで存在感ありますね。
今作は物語を転がす役割も大きく、暴力的でセックス大好きでとことんのクズ人間でした。
ものすごい素晴らしい演技していたと思います、間違いなく彼の出世作になったと思います。

森川葵はいつもながら不思議と売れていますね。
メチャクチャ面倒くさいメンヘラな女の子でした。
最近可愛くなってきたなぁと思ってましたが、役によってはやはり訂正したい感じはあります。
ただ世界観がわかり易い女優で脇役として重宝されるのはわかる気がします。

土居志央梨は凄かったですね。
ものすごい体当たり演技で今作をR15にするのに非常に貢献していたと思います。
メチャクチャサセコさんで、ああこの手の娘って居たなぁと懐かしくなるくらい見事ななりきりでした。
エロくて、もちろんもろ映しできないけど、もうコレマジでやってるよね?ってくらいの凄い演技でした。

青春映画をこのセンス、この切り口で描いたのは凄いと思います。
”僕らの愛は知っていた、平坦な戦場を”


そんなわけで9点。

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