LION／ライオン ～25年目のただいま～

LION／ライオン ～25年目のただいま～
を観ました。


オーストラリアで幸せに暮らす青年サルー。しかし、彼には隠された驚愕の過去があった。
インドで生まれた彼は5歳の時に迷子になり、以来、家族と生き別れたままオーストラリアへ養子にだされたのだ。
成人し、自分が幸せな生活を送れば送るほど募る、インドの家族への想い。
人生を取り戻し未来への一歩を踏み出すため、そして母と兄に、あの日言えなかった〝ただいま″を伝えるため、彼は遂に決意する。「家を探し出す―」と。


ガース・デイヴィス監督作品です。
好みのデヴ・パテル主演だし、予告を観てちょっと期待していました。

Google Earthを使って25年間迷子になっていた青年が自分の家族を見つけた感動的な実話の実写化ですが、
そんな宣伝文句がチープに感じるくらい作品自体の品質は高かったです。
別に実話だとか言わなくても全然楽しめるくらいです。

冒頭からなかなか生々しいインドの田舎の村の描写で心掴まれました。
主演は半分近くはサニー・パワールという5歳の子役の時代を描いていて、
この子のクオリティが凄かったです。
まさに天才子役って感じです。
貧しい村でいつも大好きなお兄ちゃんにくっついていってて、
無理やりついていった先で兄とはぐれてしまいます。
そこからストリートチルドレンみたいになりますが、
そのクオリティが相当高かったです。
で、顔も非常に可愛かったです。

あまりに雑多なインドの環境はこういう子供が出てしまうのも納得です。
エンドロールで毎年8万人の子供が行方不明になるみたいなことが書かれていました。

おそらく大人になった主人公の記憶を頼りに一人称で描かれているので、
子供を追う人々や、親切にしてくれた怪しげな人々が結局何者だったかもわかりません。
全体的に子供目線で観ているような映像の作り方は見事だと思いました。
それぞれの物事が何か？みたいな解決の提供は基本的に無いので。

そこからオーストラリアの親切な夫婦の養子となり、人生をオーストラリアで過ごしますが、
5歳までの記憶にとらわれる感じ、大好きだった兄をいつも思い出してしまう感じは切なかったです。
大人になった主人公がGoogle Earthで自分の故郷を探す過程はなかなかリアルでした。
まだ上手く喋れなかった頃のことなので自分の記憶の地名も一切ネット検索で引っかからない。
広いインドで、自分がうっかり乗ってしまった電車のルートを推理して何年も何年もインド中の駅の航空写真を観ていきます。

そこで発見する感動、発見してからのストーリーの加速感。
記憶の故郷のシーンが多めに差し込まれる手法でしたが、
クライマックスにそれが遂に現実となる感動ですね。
実に見事な演出だと思いました。

青年時代の主役のデヴ・パテルはインドを舞台にしたハリウッド作品でよく見かけますが、
かなり好みの方の役者です。
あまりイケメンなイメージは無かったですが、今作は結構ハンサム青年でした。
演技は上質でこの作品のテイストにマッチしてました。

その恋人役がルーニー・マーラで、この子はかなり好きな女優です。
出ているとは知らなかったので出てきたらテンション上がってしまいました。
幅広い役をこなしますが、こういう普通の学生を演じても存在感あって良いですね。

里親の母親をニコール・キッドマンが演じていました。
いつもの華やかさを消しておばさんルックで実にリアルな里親を演じていました。
流石に演技が上手ですね。

父親役のデヴィッド・ウェンハムもリアルで良かったです。

映画は宣伝のために”実話”ってことをすぐに言ってしまいますが、
こういう上質な作品ならば出来ればそれは言わないで欲しいですね。
終盤の展開の感じだと、故郷は見つかるのか？家族は見つかるのか？
とドキドキするのですが、
まあタイトルに25年目のただいまってなってるので、
あと2、3年したら見つかって帰るんだろうな・・・
って思ってしまいます。
こういう気分になることは結構あります。

インドを舞台にした映画ですが、踊りは無いです。

上質で感動的な映画でした。


そんなわけで8点。