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感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

82年生まれ、キム・ジヨン

2020年10月12日 | 映画
82年生まれ、キム・ジヨン
を観ました。


結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨン。
常に誰かの母であり妻である彼女は、時に閉じ込められているような感覚に陥ることがあった。
そんな彼女を夫のデヒョンは心配するが、本人は「ちょっと疲れているだけ」と深刻には受け止めない。
しかしデヒョンの悩みは深刻だった。妻は、最近まるで他人が乗り移ったような言動をとるのだ。
ある日は夫の実家で自身の母親になり文句を言う。
「正月くらいジヨンを私の元に帰してくださいよ」。
ある日はすでに亡くなっている夫と共通の友人になり、夫にアドバイスをする。
「体が楽になっても気持ちが焦る時期よ。お疲れ様って言ってあげて」。
ある日は祖母になり母親に語りかける。
「ジヨンは大丈夫。お前が強い娘に育てただろう」
――その時の記憶はすっぽりと抜け落ちている妻に、デヒョンは傷つけるのが怖くて真実を告げられず、ひとり精神科医に相談に行くが・・・。


キム・ドヨン監督です。
予定してた映画が見れなくなり急遽見た映画だったので全く前情報無く見ました。
ポスターのみの情報しか無かったのでミステリーなのか?ヒューマンドラマなのか?
はたまたちょっと怖いのか?
序盤は全くもって探り探り見てました。

プロローグ的な箇所は謎めいていて何か深刻な導入で。
そこから時系列が行ったり来たりで徐々に真実やら主人公たちがおかれている状況がわかっていく構造です。

しばらくは何か起きそうで起きないけど何か深刻な雰囲気は漂っています。
そして一瞬ちょっとショッキングなシーンがあり、ああ、それを描いていく映画なのか、、、って思いましたが。
そういうわけでもなく、また日常的な描写になります。

つまり自覚症状ない産後鬱的な精神病をたまに発する女性が自分だけがそれを知らず、苦悩し暮らす様を描いています。
映画全般通して描写が非常に繊細で丁寧でかなり上質です。
ドラマティックなテーマを扱っているようで岩井俊二作品っぽいくらいお洒落さも感じさせるようなテイストで。
無駄な説明描写も無く、やり取りや間で伝える感じは好みでした。
人によると思いますが、説明は少ないですがギリギリ難解にはならず、最終的にはとてもスッキリ全部わかるくらいのレベルでした。

自分には経験ないですが共働き夫婦の出産や子育て、親族との付き合い方の難しさ。
やりたい仕事ができなくなったことや仕事復帰の難しさ。
育休制度はあれどそれを行使することによる周りとの関係変化の難しさ。
様々な社会問題を大げさな描写も無く繊細に伝えていてとても考えさせられ勉強になりました。
そして韓国映画ですが日本でも全く同じだと思います。

結婚&出産の素晴らしさとそこにある困難を見事に伝えています。
酌み交わされる会話も実に生々しくて説得力ありました。
登場人物が多めなのですが、一見、映画やドラマにあるあるな、
わかりやすさを提供するためのバカキャラかと思いきやバカが出てこないタイプの映画でした。
みんながちゃんとバランス感覚持った言動なのでより説得力があり考えさせられました。

なので実際に子育てって本当に大変なのだろうし、行き場のないストレスがあるのでしょう。
病まずに子育てをクリアした全ての母親をリスペクトしたくなるような視点になりました。
もちろんこの映画の主人公みたいに病んでしまう人がいてもそれは普通のことで決して負い目を感じることでも無いのだと思いました。

子連れに否定的な意見を言うだけの悪役的キャラにも共感出来る要素はあったし、
様々なイデオロギー闘争がありそうな難しいテーマを上質に描いていて素晴らしかったですね。
子育て経験ある女性が見たらより感じるものや感動するものがあると思いました。
そうでない人が見ても想像するに言い映画でした。
映画に出てくる誰かには共感出来ると思います。

主演のチョン・ユミは幸薄そうな女性でとてもキレイでした。
病気の演技、精神病患者特有の緊張感みたいのは演技に見えないくらい素晴らしいクオリティでした。
大半は病的な感じでしたが、わずかにある元気ハツラツなシーンもとても素敵でした。
韓国には実力派の美人女優さんが沢山いて驚きます。

病んだ妻を支える良き夫をコン・ユが演じていました。
とても人が良さそうで家事、育児を手伝う良き夫の雰囲気がとても似合っていました。
こんなに良い夫がいても病んでしまうくらい繊細なことなのだと思いました。

他のキャストも非常に上質でとても魅力的でした。
リアルで生々しくとても上質な映画でした。


そんなわけで8点。
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