メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

望み

2020年10月13日 | 映画
望み
を観ました。


一級建築士の石川一登とフリー校正者の妻・貴代美は、一登がデザインを手掛けた邸宅で、高一の息子・規士と中三の娘・雅と共に幸せに暮らしていた。
規士は怪我でサッカー部を辞めて以来遊び仲間が増え、無断外泊が多くなっていた。
高校受験を控えた雅は、一流校合格を目指し、毎日塾通いに励んでいた。
冬休みのある晩、規士は家を出たきり帰らず、連絡すら途絶えてしまう。
翌日、一登と貴代美が警察に通報すべきか心配していると、同級生が殺害されたというニュースが流れる。
警察の調べによると、規士が事件へ関与している可能性が高いという。
さらには、もう一人殺されているという噂が広がる。
父、母、妹――それぞれの<望み>が交錯する。


堤幸彦監督です。
言わずもがなの売れっ子監督ですね。
もう日本の映像界の巨匠と言って良いでしょう。

予告編を見て、まあ邦画にあるあるな感じのタイプの映画だなと軽く見ていました。
優先度も低めだったのですが、大好きな清原果耶目当てで時間の都合が良かったくらいの気持ちで見てみたのですが。
めちゃくちゃいい映画でした。
正直もっとポップな大衆向けミステリーと思ってたのですが。
思ってたのより全然重くて全然本格派でした。

宣伝がいまいち弱い気がするしネタバレ禁止の注意も弱い気がしますが。
がっつり大作だしかなり大きな謎を扱っているのでネタバレ厳禁ですね。
予告編くらいの情報で見に行った方が良いと思います。

幸せで完璧な家庭って感じの冒頭描写ですが長男だけが思春期で微妙な反抗期って感じで。
長男は何か問題を抱えているようで反抗的で少しずつ家族との距離ができて行く感じ。
ただの夜遊びと思いきや近所で起きた事件と警察の訪問で一気にトラブルに展開していく様。
比較的静かな作風で重厚ですが見事なジェットコースター的な映画でクライム・サスペンスでした。

とにかく謎すぎてずっと引き込まれる極上のミステリーで。
どういうこと?どうなったの?とめちゃくちゃ没入してしまいました。
更に素晴らしいのは登場人物たちのほぼ全員に共感出来るような素晴らしいクオリティの演出でした。
相反する立場の両方に共感出来るくらいの作りは見事でした。
それは人物描写や考え方のリアリティっぷりが高品質だったからだと思います。

殺人事件が起きてるので確実な悪人は居るのですが、描いているのはそこではないので。
息子は犯人なのか?被害者なのか?どうやって関わっているのか?今どこに居るのか?
という周囲の人々たちの物語なので。
勧善懲悪で描いているわけでは無く、それぞれの正義の行動を描いている感じです。
ベタでわかりやすい雑な描写にせず、一つ一つしっかり共感できる描写にしてるのが見事でした。
どのシーンにも感情が乗って見てしまいました。
夫婦ですら若干望んでいることが違っていて、それももちろんどっちも正義なので。

あえて言うなら人の顔が浮かばないマスコミがこの手の映画あるあるの悪としてポジションに近いですが。
それが明確にポジショニングされているわけでもありませんでした。
ネット上の投稿も同様な扱いですがやはり悪って感じではなかったです。
この手の映画にあるメディアやSNSの過剰な意見が観てる人のストレスになることは余り無かったです。
常にマスコミが囲んでるのに家にやたらいたずらされるのは何故?とちょっと気になりましたが。

話が進むにつれて自分も祈るようでした。
終盤にはもちろん真相が明らかになり。
なかなか重くて。
邦画でこのタイプのここまで悲しい感動映画は久々に見た気がしました。
場内は混んでいましたが結構な涙模様でした。
自分も泣いてしまいました。

家族のあり方や家族とはこういうものという、改めて考えさせられるものはありました。
そしてこういう出来事は日本中の殆どの家族に起こりうることだと思いました。

自分は男なので長男の気持ちがとてもわかりました。
反抗的な態度はとっていても家族を心底憎んで居るわけじゃなく。
それどころか不器用で表現できないけど家族愛はちゃんとある感じは痛いくらいに伝わりました。

全く隙がないあまりに見事な起承転結にずっと引き込まれていました。

主演の堤真一はいかにもな父親らしい父親像で。
現代の王道的な父親像を見事に表現していたと思います。
順調な状況から大変な状況まで、感情の揺れ方も徐々に大きくなっていく感じで。
その熱演はなかなか魂揺さぶられました。
今年の俺アカデミー賞ノミネートですね。

妻役の石田ゆり子も本当に素晴らしかったです。
現実では母親ではないのに誰よりも母親っぽさを出しますね。
今回は幸薄い感じのキャラでしたが相変わらずめちゃくちゃ美人です。
こんなお母さんめちゃくちゃ欲しいですね。
コレも今年の俺アカデミー賞ノミネートです。

娘役は大好きな清原果耶でした。
序盤は陽気で家族の潤滑油みたいないい感じのキャラでとてもキュートで。
それから後半は翻弄されて苦悩する演技で。
元々本格派の演技派なのでそれは見事な演技で彼女が無くともらい泣きしそうでした。

物語の中心になる長男を岡田健史が演じていました。
今年のブレイク俳優のトップクラスですね。
最近めちゃくちゃ出てますがそれも納得の良い雰囲気あります。
影のある感じの役が多いですが今作はそんな彼の特性が最大限に活かされた役って感じでした。

週刊誌の記者役を松田翔太がやってました。
いかにも悪役みたいな雰囲気で登場してきましたがそんな単純な映画じゃありませんでした。
彼の使い方としてはちょっと贅沢に思えるくらいの出番でしたがそれが作品を引き締めていました。
カッコいいし演技上手いし凄い俳優だと思います。

事件を担当する刑事を加藤雅也が演じていました。
コレまた悪役的なポジションなのかな?って雰囲気で見させられますが。
やはりそんな単純な話ではなく、ちゃんと刑事でちゃんとベースは正義でした。
なんかすっかりナイスミドルになってきましたが良いいぶし銀になってますね。

出番は少なめでしたが市毛良枝さんの祖母っぷりも良かったです。

取引先の建設会社社長を竜雷太が演じていました。
SPECで慣れているのかとても素晴らしい演技でした。
おじいさんになりましたがクオリティは流石です。
個人的なネタバレですがこの人のシーンで泣きましたね。

とても辛かったですがここまで引き込まれる映画は久々に見ました。


そんなわけで9点。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。