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ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~

2017年12月20日 | 映画
ユダヤ人を救った動物園~アントニーナが愛した命~
を観ました。


1939年、ポーランド・ワルシャワ。ヤンとアントニーナ夫妻は、当時ヨーロッパ最大の規模を誇るワルシャワ動物園を営んでいた。
アントニーナの日課は、毎朝、園内を自転車で巡り動物たちに声をかけること。時には動物たちのお産を手伝うほど、献身的な愛を注いでいた。
しかしその年の秋、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発。
動物園の存続も危うくなる中、アントニーナはヒトラー直属の動物学者・ヘックから「あなたの動物を一緒に救おう」という言葉と共に、希少動物を預かりたいと申し出を受ける。
寄り添うような言葉に心を許したアントニーナだったが、ヤンはその不可解な提案に不信感を募らせていた。
ヤンの予感はまさに的中し、数日後、立場を一転したヘックは「上官の命令だ」という理由をつけて、園内の動物たちを撃ち殺すなど残虐な行為に出る。
一方でユダヤ人の多くは次々とゲットー(ユダヤ人強制居住区)へ連行されていく。
その状況を見かねた夫のヤンはアントニーナに「この動物園を隠れ家にする」という驚くべき提案をする。
ヤンの作戦は、動物園をドイツ兵の食料となる豚を飼育する「養豚場」として機能させ、その餌となる生ごみをゲットーからトラックで運ぶ際に、ユダヤ人たちを紛れ込ますというものだった。
人も動物も、生きとし生けるものへ深い愛情を注ぐアントニーナはすぐさまその言葉を受け入れた。
連れ出された彼らは、動物園の地下の檻に匿われ、温かい食事に癒され、身を隠すことが出来た。
しかし、ドイツ兵は園内に常に駐在しているため、いつ命が狙われてもおかしくない。
アントニーナの弾くピアノの音色が「隠れて」「静かに」といった合図となり、一瞬たりとも油断は許されなかった。
さらにヤンが地下活動で家を不在にすることが続き、アントニーナの不安は日々大きく募る。
それでも、ひとり”隠れ家“を守り抜き、ひるむことなく果敢に立ち向かっていくのだが—。


ニキ・カーロ監督作品です。
はじめましてな監督でした。

予告編の雰囲気やポスターの雰囲気などからもう少し優しいテイストのユダヤ人映画と想像してました。
しかし、がっつり重たいナチス、ユダヤ人映画でした。

冒頭数分だけ穏やかな描写ですが、結構早々に戦争シーンになっていき、
ポーランド人が第三者目線でナチスに迫害されるユダヤ人たちを不憫に思う設定です。

序盤、ドイツ軍とソ連軍がポーランドで激突し、動物園にも空襲が来ます。
そして動物たちが逃げ出します。
このシーンが個人的に相当インパクト強かったです。
動物園の動物が逃げ出して崩壊したワルシャワの町中を様々な動物が徘徊し、人は空襲から逃げ惑い。
よくよく考えれば戦時下の動物園ってこういうことなのでしょうが、
そういう描写を観たのは初めてな気がしました。

そしてドイツ軍がやってきて希少動物を奪っていき残りの動物を銃殺します。
勿論実際に動物を殺しているわけ無いと思いますが、かなり辛辣な描写でした。
動物大好きな自分には非常に辛い場面が多かったです。
今の御時世では思い切った描写だったと思います。

そこからは何度か観てきたようなユダヤ人迫害モノです。
タイトルはアントニーナがフォーカスされていますが、実際は夫婦で命がけでユダヤ人を救っています。
思ったより全然重厚なテイストで、序盤からかなり泣けてしまいました。

今更ですが、当時ユダヤ人を助けるなんて相当危険で相当勇気の要る行為だと思います。
夫婦はなかなか巧妙な作戦を立ててゲットーから少しずつユダヤ人を連れ出して逃します。
行き先が無い人々は動物園の地下室で匿います。
日中は動物園の敷地でドイツ軍が作業しているので地下室で静かに息を潜め、
夜にようやく夫婦の家で人間的な暮らしをします。

こんな辛い時代にも正義の心はちゃんとあって、自分の命を危険に晒してまで人助けをする人々には感動しました。
レイプされた少女を助けたりその少女が少しずつ心を開いて行くシーンは涙なしでは観れませんでした。
アントニーナはその少女の心を癒そうと生き残ったうさぎの子供を与えるのですよ、
恐怖の世界の中での優しさの表現としてかなり素晴らしいと思いました。

沢山の人々を助けるので命がけで助けた人々が結局殺されてしまうこともあり、この辺でリアリティを作り出していました。

夫婦の息子が勇敢なのですがちょっと迂闊で重大なミスを犯して物語をスリリングにしてしまいます。
いわゆるバカが物語を転がすパターンです。

アントニーナの「私はただ正義を行いたい」という心理も感動的でした。

主役のジェシカ・チャステインがまー素晴らしかったです!
最近、女神の見えざる手という作品でも非常にいい演技をしていたのですが、
今作はその真逆みたいな女性像でした。
喋り方が妙に弱々しくて妙に色っぽいのです。
本来はそんなに勇敢なタイプではないのに動物愛に満ちていて、それが人間にも及んでいるような。
弱々しく怯えながらも正義に忠実な人間性、こんな時代でも人は正義を行える証明をしているような。
なんでこんなに優しい人がいるのだろうか?とずっと感動していました。
様々な動物と戯れるシーンも自然で素晴らしかったです。
あんな大きな動物との演技は怖さもあるでしょうが見事でした。
濡れ場でも無いのに胸チラしてるのもリアリティがあって素晴らしかったです。

夫のヤンを演じたヨハン・ヘルデンブルクも良かったです。
ヤンはアントニーナ同様正義感が強く、最初に友人のユダヤ人を匿えないか?とアントニーナに言われ危険だからやめろと言うのに、
翌日に考えを改め、友人以外も可能な限り救おう!と言い出す決断力は素晴らしく、感動的でした。
逆にアントニーナが危険だからやめようって言い出すくらいの。
正義感に満ちていて様々な人脈を使い様々な手段でユダヤ人を救っていました。
市民軍としてドイツ軍と戦ったりもしていました。
ちょっと不器用な雰囲気が感動演出にはいい設定でした。

ヒトラー直属の動物学者をダニエル・ブリュールが演じていました。
最初はいい人なのかな?とも思いましたが、やっぱりナチスの怖い人でした。
ちょこちょこ観たことある役者ですが、印象的なルックスでナチス感が良く出ていました。

最終的にどうなるのか?という恐怖心でいっぱいでしたし、何度も泣いてしまう超感動作でした。
モデルとなった夫婦は最近になって評価されちゃんと賞をもらったようです。

シンドラーのリストに始まりこの手の映画は沢山観てきましたが個人的にはかなり上位に起きたい名画でした。
場内もなかなかの涙模様でした。


そんなわけで9点。

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