20年近く前。初夏。
その日は学校が予定より早く終ったので意味もなくウキウキしながら家路を急いだ。
僕が家に着くと家の鍵が閉まっていたもので、僕は途方に暮れた。いつもは母か祖父が居る事が多かったので、僕はあたり前のように家に入れると思っていた。しかし家族は皆、仕事に出てしまっていたらしい。仕事に行ってしまったということは、母が帰る夕方まで僕は家に入れない。
僕は家中の扉や窓をひとつひとつ確認してみたが、僅かな期待も泡と消えた。
「せっかく早く帰れたのに・・・」と落胆しながら庭の芝生にランドセルを乱暴に置き、自分も芝生に腰を下した。
夏に向け、芝生はここぞとばかりに生命力を発揮して、チクチクと僕の足をつっついた。
すると 間もなく、2つ上の兄も学校から帰ってきた。
「鍵。閉まってるよ。」
「そうなの?」
・・・そんなやりとりをひと通りした後、やはり兄も僕と同じように家中の扉、窓を調べ始めた。どうせ無駄だよと僕は心の中で思いながら、その一部始終を見守った。
やはり駄目だった兄が、しばらくして戻ってきた。そして僕の横に座り、芝生に寝転んだ。
僕も真似して寝転んだ。
落胆した兄弟はなんとなく言葉を無くしていた。
・・・やけに空が青かった。
・・・やけに空が近かった。
まるで天井みたいな空の壁を白い雲が形を変えながらゆっくりと流れていた。
夏が近づいて来る・・・。
その足音を耳を澄まして聞いていた。
気分はもうどうでもよくなっていた。それは雨の日に長靴の中に入ってきてしまった雨の雫と同じだ。
隣で同じようにしている兄も多分同じだろう。
不思議と時間の概念が消えていたので、どれほどの時間が経ったのかは、わからなかった。
不意に兄が、二階の窓を調べると言いだした。僕には出来ないが、兄はブロック塀をつたって一階の屋根に登れるのだ。そこから二階の部屋へ辿り着ける。少し危険で面倒だが、何もしない時間を大切にするほど子供は単純ではない。
案の定、二階の窓は開いていて、兄はそこから家の中に入り、一階の鍵を開けた。僕はおかげで家に入れた。一時はどうなる事かと思ったが、こんな感じで小さな事件は終る。
そして兄弟はすぐに、近所の公園に野球をしに、家を出た。
その日は学校が予定より早く終ったので意味もなくウキウキしながら家路を急いだ。
僕が家に着くと家の鍵が閉まっていたもので、僕は途方に暮れた。いつもは母か祖父が居る事が多かったので、僕はあたり前のように家に入れると思っていた。しかし家族は皆、仕事に出てしまっていたらしい。仕事に行ってしまったということは、母が帰る夕方まで僕は家に入れない。
僕は家中の扉や窓をひとつひとつ確認してみたが、僅かな期待も泡と消えた。
「せっかく早く帰れたのに・・・」と落胆しながら庭の芝生にランドセルを乱暴に置き、自分も芝生に腰を下した。
夏に向け、芝生はここぞとばかりに生命力を発揮して、チクチクと僕の足をつっついた。
すると 間もなく、2つ上の兄も学校から帰ってきた。
「鍵。閉まってるよ。」
「そうなの?」
・・・そんなやりとりをひと通りした後、やはり兄も僕と同じように家中の扉、窓を調べ始めた。どうせ無駄だよと僕は心の中で思いながら、その一部始終を見守った。
やはり駄目だった兄が、しばらくして戻ってきた。そして僕の横に座り、芝生に寝転んだ。
僕も真似して寝転んだ。
落胆した兄弟はなんとなく言葉を無くしていた。
・・・やけに空が青かった。
・・・やけに空が近かった。
まるで天井みたいな空の壁を白い雲が形を変えながらゆっくりと流れていた。
夏が近づいて来る・・・。
その足音を耳を澄まして聞いていた。
気分はもうどうでもよくなっていた。それは雨の日に長靴の中に入ってきてしまった雨の雫と同じだ。
隣で同じようにしている兄も多分同じだろう。
不思議と時間の概念が消えていたので、どれほどの時間が経ったのかは、わからなかった。
不意に兄が、二階の窓を調べると言いだした。僕には出来ないが、兄はブロック塀をつたって一階の屋根に登れるのだ。そこから二階の部屋へ辿り着ける。少し危険で面倒だが、何もしない時間を大切にするほど子供は単純ではない。
案の定、二階の窓は開いていて、兄はそこから家の中に入り、一階の鍵を開けた。僕はおかげで家に入れた。一時はどうなる事かと思ったが、こんな感じで小さな事件は終る。
そして兄弟はすぐに、近所の公園に野球をしに、家を出た。