７、ハッピーフライト

準備で徹夜。
後輩夫婦が成田まで送ってくれるというのでお言葉に甘えて送ってもらう。

ほぼ初海外で色々と不安だったから本当に助かった。
寂しい一時の別れをして旅客機に乗り込む。

加速してGがかかる。
窓際の席を取ったので目の前にジャンボジェット機の翼が見えていた。
ジェットの高温でその後方の空気は著しく歪む。
翔べ！翔べ！と心のなかで何度も叫んでいた。
今まで生きた全ての時間を散らすように翔んでしまえ！と。

やがて機体は地面を離れ空にその巨体を乗せる。
轟音の中地面がどんどん遠くなる。
ちぎれた雲がチラチラと眼下になっていく。
遂に旅立ってしまったのだ。

どうしても旅に出ずに生きてきた自分が旅に出たのだ。

ヘタしたらもう二度と日本に戻らない可能性だってある。
帰ったもののもう日本では暮らさなくなるかもしれない。
今まで生きた自分を捨てて新しい自分に出会うことが目的。
行き先なんて決めていない。
ただそれだけ。