---数年前僕はとあるコンビニエンスストアの深夜バイトをしていた。
住宅街にあるコンビニだからそれほど客は多くない。
毎日同じ客が同じものを買ってく、そんなコンビニだった。
深夜1時から朝9時までの間、店員は僕一人だけだった。
断っておくが僕は反社会的な思想を持っていた。---
街は群像劇の塊、コンビニはその交差点
不思議な事に、
誰にも平等に人生の時間は与えられている。
誰にも平等に好みが与えられている。
ざるそばのシーズンになるとそいつは現れた。
毎日ざるそばを買って行く男。
うだつの上がらない40歳前後のサラリーマン。
そいつは店内に入ると一目散にざるそばのある惣菜コーナーへ向かいざるそばを手にする。
ざるそばってそんなに深いものなのか・・・?
毎日いけるものなのか・・・?
ところでコンビニはふた月に一回ほどのペースで業者さんが来て、店を封鎖し床掃除、ワックスがけをする。
時間にして30分程、店の入口に「清掃中」と書かれた黄色い立て札を立てて客の侵入を防ぐ。
あなたも見たことくらいはあるでしょう。
空気の読めないアホはその立て札があっても入ってきたりする。
店内は尋常じゃないくらいぬるぬるなのでマジで危険なのだが、お構い無しに入ってくる客のせいで、我々は応対をせねばならないのである。
案の定転んでえらいこっちゃな人もちらほら。
しかし基本店は開店休業なので我々はバックルームで優雅に雑誌を読みながら、ジュースを飲んで一服という至福の時間を送る。
防犯カメラの映像を観ながら、そんな感じでのんびりする。
時々アホが入ってきたらレジに立つというスタイル。
そんな時間にざるそばに摂り付かれた男はやってきた。
多少空気を読んで、店内には入ってこない。
驚いた事に入口からレジに立つ僕に向かって
「すいません、ざるそば下さい」
と千円札を差し出しているのである。
ええ~!そんなに食いたいかね、ざるそば!
多少憤りは感じたものの、空気は読んでいるので、ドSの僕も仕方が無く彼の望みを叶えてあげた。
入口でお会計をしたのは後にも先にもその一回だけであった。
何が彼をそうさせたのか?
その執念たるは何のごたるですか?
ひょっとしたら一年中来ていたかもしれないのだが、
不思議な事にざるそばシーズン以外の彼の記憶がない。
(2年3ヶ月ぶりの更新でした)
住宅街にあるコンビニだからそれほど客は多くない。
毎日同じ客が同じものを買ってく、そんなコンビニだった。
深夜1時から朝9時までの間、店員は僕一人だけだった。
断っておくが僕は反社会的な思想を持っていた。---
街は群像劇の塊、コンビニはその交差点
不思議な事に、
誰にも平等に人生の時間は与えられている。
誰にも平等に好みが与えられている。
ざるそばのシーズンになるとそいつは現れた。
毎日ざるそばを買って行く男。
うだつの上がらない40歳前後のサラリーマン。
そいつは店内に入ると一目散にざるそばのある惣菜コーナーへ向かいざるそばを手にする。
ざるそばってそんなに深いものなのか・・・?
毎日いけるものなのか・・・?
ところでコンビニはふた月に一回ほどのペースで業者さんが来て、店を封鎖し床掃除、ワックスがけをする。
時間にして30分程、店の入口に「清掃中」と書かれた黄色い立て札を立てて客の侵入を防ぐ。
あなたも見たことくらいはあるでしょう。
空気の読めないアホはその立て札があっても入ってきたりする。
店内は尋常じゃないくらいぬるぬるなのでマジで危険なのだが、お構い無しに入ってくる客のせいで、我々は応対をせねばならないのである。
案の定転んでえらいこっちゃな人もちらほら。
しかし基本店は開店休業なので我々はバックルームで優雅に雑誌を読みながら、ジュースを飲んで一服という至福の時間を送る。
防犯カメラの映像を観ながら、そんな感じでのんびりする。
時々アホが入ってきたらレジに立つというスタイル。
そんな時間にざるそばに摂り付かれた男はやってきた。
多少空気を読んで、店内には入ってこない。
驚いた事に入口からレジに立つ僕に向かって
「すいません、ざるそば下さい」
と千円札を差し出しているのである。
ええ~!そんなに食いたいかね、ざるそば!
多少憤りは感じたものの、空気は読んでいるので、ドSの僕も仕方が無く彼の望みを叶えてあげた。
入口でお会計をしたのは後にも先にもその一回だけであった。
何が彼をそうさせたのか?
その執念たるは何のごたるですか?
ひょっとしたら一年中来ていたかもしれないのだが、
不思議な事にざるそばシーズン以外の彼の記憶がない。
(2年3ヶ月ぶりの更新でした)