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クロッシング

2010年11月13日 | 映画
クロッシング を観た。

トレーニングデイのアントワーン・フークア監督の最新作です。
トレーニングデイは好きな映画ですので、クロッシングの予告を見たかぎりテイストも似てそうだったので観に行きました。
3人の刑事の悲しい苦悩を描いた群像劇です。



(お話)
NYブルックリンにあるBK公営住宅は最悪の犯罪多発地区。
そこで働く3人の刑事の物語。

定年を間近に控えたエディ(リチャード・ギア)は控えめに20年間努めてきた。
感情を表に出さず家族とも別居中。
管轄が違えば目の前の犯罪も無視する。

BK地区での新人研修の教育係に任命されるが正義感に燃える新人に嫌われる。
新人に臆病と罵られたりするが放っておいても犯罪は起こるので自ら首を突っ込まない事を信条としている。
唯一の心の拠り所は娼婦のチャンテル。
彼女に己の苦悩を伝える。

麻薬捜査官のサル(イーサン・ホーク)は信心深く家族思い。
2人の息子に加え双子が生まれる予定で妻は病弱。
今の家では暮らせないと引越しを考えるが金が無い。
引越しを心待ちにしてる子供たちの期待に応えたいし妻の体にいい家に引越したいが故金の工面に苦悩する。
そして警察の立場を利用して麻薬捜査の際に見つかる金に手をつけようと思い始める。

BK地区を基盤とするギャング団に潜入捜査官として長く潜入しているタンゴ(ドン・チードル)は元の生活から遠く離れ会えない妻には離婚を突きつけられる。
成果を上げても昇進出来ず精神的に限界をむかえ上司に抜けさせてくれとお願いする。
しかしその願いは聞き入れられず新たな任務を命じられる。
それはギャング団のボス、キャズ(ウェズリー・スナイプス)のおとり捜査による逮捕。
キャズはタンゴの命の恩人であり人間的にも魅力を感じていた。
タンゴはそれだけは出来ないと言うが、昇進と潜入からの脱却を餌にされ苦悩する。

3人ともそれぞれの正義の中で苦悩している。



(評価)
とても重厚でダークで大変良い映画でした。

こんな空気感を味わいたいと思っていた空気感はばっちり味わえました。

冒頭から突然不意打ち的に銃殺するシーンが多く、また後ろから突然撃ってくるパターンも多いので銃嫌いな僕としてはかなりストレスを感じました。

リチャード・ギアはリチャード・ギアとは思えないくらいしょぼくれた冴えない男を演じていて素晴らしかったです。
娼婦しか心の拠り所がなく、いつも自殺を考えている切ない男でした。
苦悩の内容も生々しくいい感じでした。

イーサン・ホークも昔から好きな俳優ですが、昔はあんなに爽やかハンサムだったのに今ではこんなにダークでハードボイルドです。
どちらもかなりいいです。
とてもいい感じで歳を重ねていると思います。
家族を想いすぎるあまりのプレッシャー。
物憂げで悲しげで疲れきった様な男でした。
仲間たちとパトカーで現場に向かう最中の気怠そうな表情がとても素晴らしく印象的でした。

ドン・チードルはホテル・ルワンダの印象が強く、いい人な感じの役しかイメージ無いですが、こんなヒステリックでハードボイルドな役もこなせるとは思いませんでした。
潜入の為に元の生活を全て失ってしまい警察に不満が沢山。
その代わりギャングとの絆は深まり心までギャングに染まってしまいそうな自分に苦悩する。
潜入捜査官特有のスリリングさも良く出ていて良かったです。

ウェズリー・スナイプスもかっこ良かったです。
B級アクションのイメージが強いですが徐々に演技派に移行しているのですね。
全然かつてのイメージは無かったです。

こんな感じでかつてのイメージとはかけ離れた役を役者さん達は演じていますが実に自然で違和感ありませんでした。
それはよほど監督さんの演出がいいのでしょう。
アントワーン・フークア監督から今後も目が離せないですね。


そんなわけで8点です。


ストリートに悪ガキが居なくなって治安が良くなったのは警察の力じゃなくてテレビゲームのせいだと言う台詞は印象的でした。

とにかく空気感が素晴らしいです。

アメリカ映画の犯罪多発地区で犯罪に疲弊しきっている刑事って設定は基本的に好きです。
セブンみたいな。




(ネタバレ)
エディは新米刑事に自ら首を突っ込むなと教え新米に罵られる。
しかしその熱い意志を持った新米は翌日殉職する。
別の新米を担当するようになるが、ある日コンビニの店主と若い客のいざこざに出くわす。
興奮状態の二人と野次馬、エディは経験から上手く二人を落ち着かせるがその場を新米に任せてほんの一瞬本部へ連絡を取ろうとパトカーへ向かう。
すると店内はまた喧嘩状態になり興奮した新米警官は銃を抜き野次馬もろとも脅かす。
そして言う事を聞かない若い客を撃ち怪我をさせる。

全ては自分の責任と主張するエディ。
上層部は撃たれた客が麻薬を持っていた事から無理矢理麻薬事件に仕立てようとエディに口裏合わせを持ちかけるがエディは自分の責任と聞かない。
そしてそのまま退職する。
何十年も努めて最後はこんなモノか・・・的な憂いを抱いて最終日を終える。

娼婦のチャンテルの元へ向かい一緒に暮らそうと誘うが断られる。
そしていつも弾倉が空の銃を加えて引き金を弾いていたが、その日その銃に弾を込める。
しかしその時、何度か見かけていた行方不明の少女を再び見かける。
いつものように悪い男どもに薬漬けにされて無理矢理車に乗せられて居た。
いつもは無視していたがその日はその車を尾行する。
車はBK地区に入る。


サルは金欲しさに情報屋を殺して金を奪う。
死んだところで事件にもならないような相手だった。

二人の息子は引越しを楽しみにしている。
妻は家のカビにやられどんどん体調を悪くしている。
サルはなんとしてでも引越しをせねばならず、知人の交通違反を見逃す見返りにとある物件を押えてもらっている。
しかしその頭金が用意できず苦しんでいた。

その後も麻薬捜査の突撃のどさくさに紛れて何とか金を集めようとする。

その行動はどんどんエスカレートしてサルはどんどん病んでいく。
そんな最中妊婦の妻は家のカビにやられ救急で運ばれる。
サルの様子がおかしいと気にかける同僚の友人はサルの現状を知る。

そんなある日サルが突然姿を消し、彼のメモから一人でBK地区の麻薬組織のアジトに金を奪いに向かった事に同僚が気付き後を追う。
そして追いついてサルを説得するがサルは聞かず、同僚の車を撃ってアジトに向かってしまう。


とことん嫌味な新たな上司と反発するタンゴ。
しかし潜入捜査の終了と昇進の約束の為キャズを罠にハメて取り引きを決心させる。
キャズは刑期を短くしてくれたタンゴに心底感謝して信頼を寄せている。
キャズの幼なじみの右腕的な男はタンゴの事が気に入らず、人を殺さないタンゴを見下し衝突する。

おとりに引っかかったキャズだが、直前で気が変わったタンゴは急いでキャズを救出に向かう。
必死に俺と逃げてくれとキャズを説得し、その様子からただごとでは無いとキャズはタンゴに従うがその次の瞬間謎のギャング達に撃たれキャズは死ぬ。
タンゴの嫌味な上司とキャズの幼なじみが組んでキャズを殺したのだった。

それを知ったタンゴは怒り狂い上司に食って掛かるが、約束を破ったタンゴに潜入捜査終了と昇進が与えられる。
しかし正義に苦悩するタンゴはキャズの復習をするため一人BK地区へ向かう。


女を拉致した車を追うエディの車の後ろを渡りBK地区に入るエディそれとすれ違い別の棟へ向かうタンゴ。
女を助けようとひっそりとサルの下の階に居るエディ。


一人麻薬組織のアジトに乗り込み敵を撃ち殺し金を見つけるサル、しかし後ろから見張りの若者に撃たれる。
キャズをハメた一味の人間に不意打ちで銃撃するタンゴ、重症を追いながら逃げる幼なじみ。
タンゴは自分が警察だと教えて撃ち殺す。
死体に何度も銃弾を浴びせる。
その光景をみたサルの同僚が後ろからタンゴを撃ち殺す。
しかしタンゴが警察だと気づいてマズイことをしたとパニックするがサルを追いサルの死体を発見する。

女を救いに向かったエディはうっすらと銃声を聞くが、男のアジトに居た3人の女を格闘の末に救い出す。
退職してから自ら正義を行ったエディだが疲れきった浮かない表情のまま現場を去る。

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