とみぞうのお気楽ブログ

クルマ、日本、北海道を愛する生粋の道産子50歳♂です。カバー画像は、PC版は増毛駅、スマホ版は733系電車の大谷ver.

公共事業悪玉論のバカバカしさ

2013-12-24 20:20:47 | 政治経済
 昨日、藤井聡教授(内閣官房参与)の著書「巨大地震Xデー 南海トラフ地震、首都直下地震に打ち克つ45の国家プログラム 」を読み終えました。感想は後日エントリーしようと思いますが、過去に起きた災害の多さと悲惨さ、今後必ず起こるであろう巨大地震に備えるべきことが多すぎること、、、ホントのことをゲロしますと、一瞬絶望的な気分になりました。すぐに頭を切り換えましたけど。詳しい感想は後日にしまして、まずはこの話題。

 去る12月17日、国土強靱化政策大綱が決定しました。まずはスタートラインに立つことができたということです。
やることは山積みですが、相変わらず中国の機関誌である朝日新聞が何か言ってるようです。→三橋貴明先生の12月18日のエントリーをご覧下さい。
 真人さんもこう言われています「例によって「国の借金ガー!」「公共事業で土建国家ガー!」という嘘つき連中がうるさそうですが、こういった反論はガンガン潰して行きましょうね。」と。ホントそのとおり。
 なんてったって、現在の日本国に財政問題なんぞ存在しませんから。マスゴミは「平成26年度の予算運営は相変わらず厳しい財政運営ガー」とかウソを言ってますが。

 まず、個人的な昔話を。

 1996年(平成8年)1月8日、北海道小樽市にて。

 この日、人口15万人の小樽市で1日で84センチの大雪が降りました。


 人口180万人都市の札幌市と往来できる道路は2本しかありません。一般道である国道5号線と高速道路である札樽自動車道です(鉄道は函館本線が1本)(人口はいずれも当時で概数)。札幌と小樽は通勤圏且つ観光地であり、札幌から更に離れたマチとの間でも多くの大量の物資が出入りしていて、人、クルマ(鉄道は、ほぼ札樽間に限っては多い)の移動はとても多いです。それが一夜にして麻痺してしまったのです。
 前日まで普通の雪景色だったのが、朝起きたら自分のクルマが雪の中に埋もれていて、地面が1m近く持ち上がってました。1mの白い津波が来たことを想像していただければおわかりいただけるかと思います。それくらい、外に出たときの景色を見たときは唖然としました。
 報道を見てみると、雪が降っている真っ最中にクルマを運転した人が「ワイパーをかけても追いつかなく、窓にすごい勢いで雪が積もってきた。視界はどんどんゼロに近づいてきた。」と語っていたのを覚えています。
 私はこの日、あまりの大雪で出勤できなかったのですが、翌日にタクシーで出勤しました。その車内でタクシーの運転手さんに言われたことを今も覚えています。

「幹線道路(国道や高速道路)より生活道路(市道)の除雪を先にやるべきだ!」

 社会人になって間もない自分は、物流がどういうものかあまりわかっておらず、その問いかけに「そ、そうですか、、、」と言うしかありませんでした。ここ10年くらいです。物流の仕組みと重要さを知ることになったのは。今なら「どう考えても幹線道路が先ですよ。裏道だけ除雪して幹線道路を雪で埋もれたままにしても、生きていくのに必要な物資は何も来ませんよ」と答えることができるのですが。

 時は経ち、私が遅まきながら物流の重要性を認識している最中、民主党が政権をとりました。彼らは、人の命がかかっているような「削ってはならぬ予算」がなんなのかはどうでもよく、ひたすらテレビ受けするために予算を削りまくり(テレビのキチガイ編集(官僚の困った顔が映し出される等)を見越して)、徐々に明らかになってきます。いわゆる「仕分けショー」ですね。ともかくテレビの前で「これは削る!」と叫び国民の喝采を浴びる。それが彼らの考えた「政治ごっこ」だったのです。
 文頭で述べた「除雪」。北海道の冬でこれを一切やめてしまうと物流がストップし、下手をすれば(いや、しなくても)死人が出ます。そりゃそうでしょう。暖を取る灯油が突然来なくなり、食料が来なくなるのですから。
 民主党政権はある年の新年度予算で「4月に限っては国道の除雪の予算を付けない」(正確には「一時凍結」だったようです)をリアルにやろうとしました。これは頭がイカれているとしか思えないことです。結果的に国道を管理する国の職員の激しい怒りに触れて予算は付いたみたいです。当然ですよ。先に述べたとおり人の命に関わりますし、毎日絶え間なく運ばれている搾乳したての牛乳は廃棄しなくちゃいけなくなるし、その他多くの甚大な影響が出るわけですから。北海道庁や市町村にこの情報が伝わっていたかどうかは私は知ることができませんでしたが。4月の北海道は場所にも寄りますが、都市部においては概ね雪が溶けきりそうな雰囲気です。しかし、4月上旬に突然の大雪が降ったことは過去に何度もあり、その都度交通が麻痺して除雪車がフル稼働したのを、一北海道民として何度か見てきました。
 こんな学生運動のノリで政治をやってきた反日サヨク民主党がやっと完全なる野党となりました。
 天地災害がしょっちゅう起こる日本という国において、減災の準備に国の予算を使うことに何の問題があるのでしょうか。今年の10月には台風26号(マスゴミが「悲惨な絵」を撮るために伊豆大島に大挙押し寄せたアレです)で死者が出ました。北海道の場合、一昨日に新千歳空港の発着便がほぼすべて運休という事態を引き起こした悪天候、「豪雪」もそのひとつです。
 Aという町とBという町をつなぐ道路は1本で良いのでしょうか。なにも起きないのならそれでもいいのでしょうが、日本はそうではないのです。2本目の道路の種類は、その土地の事情に応じて高速道路でも一般道でも良いでしょうけど、ともかく1本つぶれたとき使える2本目の道を用意しておく必要はどうしたってあるわけです。といいつつ、先進国の中では圧倒的に高速道路は少ないことは事実です。道路行政に関わっていた私の父が30年以上も前から「2本目の道路」を考えていたと言ってました(ただし、交通量予測は今ほど緻密では無く、テキトーだったようですが)。それが今でも「土建行政の復活だ!」とか「いまある道路を拡張すりゃいいじゃねぇか」の声が大きいため、今はなかなか実現していません。
 なおわたくし、恥ずかしながら、日本における道路建設が妥当かどうかを判断する指標がB/C(コストベネフィット)しかないことを知ったのはつい最近です。災害時の迂回道路としての役目とか経済波及効果といった要素は一切考えられておらず、せいぜい「走行時間短縮」「走行経費短縮」「交通事故減少」といった項目くらいしかないのです。
 でも、少しずつ空気が変わってきているような気がするのは私だけでしょうか。

国土交通省道路局などによる「費用便益分析マニュアル」こちら

諸外国の道路事業評価手法こちら

偶然にも本日、国土交通省が福島県の相馬港と八ッ場ダムの事業評価を出してました。B/Cがどちらも6を超えてます。資料は→コチラ


(以下、三橋貴明氏による寄稿の抜粋)
 B/Cとは、コスト・ベネフィット分析(費用便益分析)のことである。道路などの公共インフラを整備する際に、社会・経済的な側面から事業の妥当性を評価するために、費用(Cost)と便益(Benefit)を比較する指標だ。B/C自体は、世界各国で事業評価手法として用いられており、ごく標準的な手法になる。
 ただ、このB/Cの分析手法が、日本は明らかに特殊なのだ。日本の「不思議な」B/C分析は、まずは道路建設から適用が始まり、次第に他の公共投資へと波及していった。

 日本のB/Cは「手法」と「思想」の2つの面が明らかに特殊(他の国と違う)なのだが、まずは手法について考えてみよう。

 日本のB/Cの「B」は、定義は極めて小さく、道路の場合は「走行時間短縮」「走行経費減少」「交通事故減少」の3つに限定される。例えば、道路を建設することで、「地域経済が成長する」「自然災害時のバックアップルートとなる」などは、便益として認められないのだ。
 他の主要国は「走行快適性」「旅行時間信頼性」「騒音」「地域分断の解消」「健康」「雇用増加」「集積による生産性向上」など、様々な直接的、間接的な効果を便益に含めている。ところが、我が国は3つの便益のみなのだ。
 3つの便益以外は認められないとなると、ポイントは「交通量」に絞られてしまう。交通量が少ない区域は、右記の便益が小さくなってしまうわけだ。結果、東北や宮崎県のように交通量が相対的に少ない地域は、B/Cが1を下回ることが多くなり、例えば防災目的であろうとも、道路を建設することは不可能になる。逆に、東京のように渋滞が多い地域は、B/Cが1を越えやすく、予算もつきやすい。
 常識的に考えて、日本のような自然災害大国では、「防災」「自然災害時のバックアップ」などを便益に含めるべきであろう。ところが、現時点の日本のB/C分析では、震災などにおいて「日本国民の安全を守る」役割は、便益としてカウントされていない。

 道路の便益を3つのみに限定する奇妙なB/C分析手法を用いているのは、世界広しといえども我が国だけである。ここまで便益を絞り込んでしまうと、必要最低限の道路さえ整備できなくなってしまう(実際になっている)。
 特に、現行のB/C分析手法を続けると、交通量の少ない地方は見捨てられたのも同然になる。
 また、我が国のB/Cは手法的におかしいことに加え、「思想的」にも奇妙なのだ。そもそもB/Cとは、「この公共事業を実施するか? それともやめるのか?」を決断するための指標ではない。単に「どの事業から予算を付けていくのか?」という、優先順位を決定するための指標なのである。
日本以外の主要国においては、B/Cの「B」は「主要3便益+多様な効果」となり、1を切るなどということは基本的には有り得ない。イギリスなど、B/Cは常に3を上回るのが普通である。B/Cが3を上回る各事業の「どれから整備をするか」を判断するために、B/Cを使用しているに過ぎないのだ。
2011年3月11日の東日本大震災の際、震災の6日前に開通したばかりの高速道路「釜石山田道路」が、被災した多くの住民の命を救った。海岸沿いの道路が通行不能になったにもかかわらず、釜石山田道路が開通していたことで、釜石北部の住民たちが徒歩で市内に避難することができたのである。
 現地の被災者を救った釜石山田道路は、現在は「命の道」と呼ばれている。本道路のB/Cは、実に1.01であった。まさにギリギリのB/Cで建設されたわけだが、震災時に「住民の生命を救う」ことは「B(便益)」の中に含まれていない。

 読者は本件について、いかなる感想を抱いただろうか。

(抜粋終わり)