守田です(20210907 13:00)
公開講座、200名以上のご参加のもと大盛況のうちに終了しました。
録画をお届けします。記事もお読み下さい。(9月17日追記)
zoom公開講座「被爆二世問題・運動の歴史と今後の展望」 2021年9月12日
● 被爆問題をしっかり把握しよう
すでに一度、お知らせしていますが、9月12日日曜日の15時から18時に、zoomによる公開講座(無料)が行われます。
タイトルは「被爆二世問題・運動の歴史と今後の展望」。主催は「神奈川県原爆被災者の会二世・三世支部」です。
前回、お知らせしたのは7月30日の「明日に向けて(2076)」においてでした。
その後8月1日から7日まで広島をめぐる旅をし、さらにその後に長崎のことなども深く調べる中で、ますますこの企画にみなさんをお誘いしたくなりました。
いま僕が一番力を入れている問題です。なんとしても聴いていただきたい。必ず大きなものをつかんでいただけると確信しています。
今回、みなさんと共有したいのは被爆問題そのものです。なぜなのか。核兵器が通常兵器と大きく区別される点は、ものすごい量の放射線が放たれることです。
それが人々を激しく傷つけ、命を奪う。しかも何年も何十年もかけて殺すこともある。戦争後も傷害を繰り返すあまりに残酷な兵器です。
しかしこの兵器の残虐性はそれだけにとどまらない。被爆者の遺伝子を傷つけ、次世代、そして未来世代を著しく傷つけるのです。その場にいなかった人を攻撃する!それが許せない。
この章の小見出しに「被爆問題をしっかり把握しよう」と書きました。
そうなのです。この次世代、未来世代への攻撃面をきちんと批判的に捉えないと、被爆問題はすべてをきちんとおさえたことにはならないのです。
毎日新聞小山美砂記者が素晴らしい紹介記事を書いて下さいました。ぜひ全国から視聴していただきたいです。
● 原爆を最初に批判したのは生物学者たちだった!
実際、アメリカが広島と長崎で大量虐殺を行った直後に、最初にこのことを批判した人々は、ハーマン・ジョーゼフ・マラーを始めとする生物学者、遺伝学者たちでした。命あるもの、そしてまた命の連鎖への許しがたい攻撃であることが告発されたのでした。
アメリカはこの批判をかわさなければ核戦略を維持できませんでした。それで試みたのは被爆影響を非常に低く見積もることでした。そのテクニックの一つは内部被曝の影響を隠すことでした。
同時にアメリカが全力を挙げたのは、放射線被曝による遺伝的影響を否定し、打消し、消し去ることでした。そのためにマラーその人をアメリカの側に取り込むことも行わました。
一方、アメリカは戦後に広島と長崎にABCC(原爆傷害調査委員会)を設立し、排他的な被爆者「調査」を始めましたが、その際の軸になったのも遺伝的影響を否定するための、あらかじめ「影響はない」という答えの決まった「調査」でした。
このことは中川保雄著『放射線被曝の歴史』などに書かれています。なおABCCは現在は米日共同運営の組織にとなり「放射線影響研究所」と名をあらためています。
中沢啓治さんはABCCへの怒りを繰り返し語られた
したがって私たちが被爆問題と取り組むときに、最も大切なのは、米軍によって打ち消されようとしてきた二つの事柄、内部被曝の影響と、遺伝的影響についての把握を進めることなのです。
今日、内部被曝の実態は、被爆者に起きた病が、放射線の影響によるものでることを認めさせてきた原爆症認定訴訟、さらには黒い雨訴訟などの画期的な勝利によって、徐々に真実が明るみに出され始めています。
そのような時だからこそ、核の問題を考えるすべてのみなさんにいま、さらに「被爆二世問題」を共有していただきたいのです。
● 『被爆二世宣言』と『核なき未来へ』
今回、メインのお話を行うのは、この間、僕がさまざまに活動を共にしてきている、被爆二世の森川聖詩さんです。
神奈川県原爆被災者の会二世・三世支部副支部長、広島平和文化センター被爆体験伝承者であり、『核なき未来へ 被爆二世からのメッセージ』の著者でもあります。
同時に、若い時に関東被爆二世連絡協議会を立ち上げ、『被爆二世宣言』を出された方でもあります。この宣言、とても深い文章なのでぜひお読み下さい。
明日に向けて(2026)「被爆二世宣言」(1977年6月)をあなたにお届けします!
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/84d2ee18bd129dc53be351f584fe7bd4
このように森川さんは被爆の遺伝的影響に関する先駆者です。誰もこのことに声を上げてない時に声を上げられた。ものすごくリスペクトしています。
いやいまもなお、誰もきちんと声を上げているとは言えない。それが被爆の遺伝的影響という奥深い問題なのです。
● 被爆問題の残酷さとそれを越える道
被爆問題の残酷なところ、それは誰も被爆被害を受けた当事者になりたくないのに、それが突きつけられることです。自分の遺伝子が被爆によって傷つけられ、子に伝わり、子を苦しめるかもしれない。想像するだけで悶絶してしまう領域です。
しかし実はそこに障害者差別が忍び寄ってきています。遺伝子に傷がつき、そのもとで子どもが生まれる。遺伝子が傷つくのを嫌がるのは当然だとしても、その結果、生まれてくる子を否定してしまったら、それは障害者差別につながります。
いま僕はあえてストレートにロジックだけ書いています。でもことはそんなに単純じゃない。乙武洋匡さんが『五体不満足』という本を出された時の衝撃を思い出してください。「我が子が五体満足で生まれますように」という思いに乙武さんは一石を投じられました。
ポイントだけ書きます。被爆の遺伝的影響の問題には差別問題がつきまとっている。そして私たちの社会が残念ながらまだまだ障害者差別が強い社会であることに起因して、この問題をどう捉えていいのか混沌とした混乱があるのが実情なのです。
だからこそ、遺伝的影響の問題はとてもフォーカスしにくかったのです。そこに人々の悲喜こもごもの思いがあるからです。そしてそこに乗っかるようにして、原子力推進派は「遺伝的影響などない」と非科学的な断定を続けてきました。許しがたい!
しかし遺伝的影響は間違いなくあるのです。間違いなくです。僕がこう言いきるのは京都「被爆二世三世の会」で健康調査アンケートを進めて、タフな聴き取りをたくさんしてきたからです。
でもそのことの伝え方も難しい。遺伝的影響と言うと、「五体不満足」のような目に見える障害ばかりがクローズアップされがちです。
でも長い人生の間、ずっと胃腸の不調に悩まされるとか、つねに不定愁訴に襲われるとか、治療のしようがない顔面痛におそわれるとか、そうしたものの方が多い。そして同時にそれらは見過ごされがちなのです。
にもかかわわず社会は、「遺伝的影響などないと言って欲しい」という思いへのフォーカスばかりを続けている。考えて下さい。それはすでに生まれてきた二世、三世の痛烈な無視抹殺なのです。遺伝的病のもとに生れてきた生もそれでは無視されてしまう。
遺伝的影響を受けた人びとは生まれてきてはいけなかったのでしょうか。断じて否!断じてです!同時にぜひ大声をあげて伝えたい。僕が聴き取りを行った遺伝的影響で苦しんできた二世、三世の全員が、不安を打ち破って両親が自分を生んでくれたことに感謝しています。生れてきて良かったと思っている。
ああ、こう書くだけで僕自身がまた心が激しく動きます。遺伝的影響での苦しみを与えてはいけないと、子どもを作ることを断念した被爆者、二世のこともたくさん知っているからです。そんな聴き取りもしてきたからです。
そもそもそんな思いをさせた原爆が許せない。でもでも、そんな風には思わずに、子どもが障害を持って生まれてきても、みんなできちんと受け入れられる豊かな社会を目指そうと言いたい。いやまずはそういう豊かな心を持とうと言いたい。いや僕が率先して頑張らなくてはです。
そこにこそ、被爆被害の残酷さを越え出ていく道があるのです。
● 背中に矢が飛んで来たら
森川さんは、こういう、本当にカオスをまとっている問題の蓋を開けられた。パンドラの箱を開けてくださいました。そしてそこからまとめたことを9月12日に話してくださいます。だからぜひ聴いて欲しいのです。
実は森川さんは僕にこう言われました。「守田さん。また後ろから矢が飛んでくるかも知れませんね。権力に批判されるのは大してこたえない。でも被爆者や二世から、あるいは反核の人から、なんでその問題に触れるのだと言われたら辛い。かつてそれをさんざん味わいましたから」
それで僕はこう答えました。「森川さん。そんな時は今度は僕が森川さんの背に立ちます。僕が矢を払います。払いきれなかったら僕が受けます。だから今は前を向いて、どんどん進んでください」と。そう。本当にそう思うのです。
共に第五福竜丸展示館を訪れて 2021年4月
でもみなさん。心ある仲間のみなさん。ぜひみなさんにも一緒にこのポジションに立って欲しい。一緒に森川さんを背後から守って欲しい。
そうしてみんなで放射線被爆の一番残酷な局面と立ち向かって欲しいのです。そこを突破して、すべての核を廃絶しようと叫びたい。そのために9月12日の企画をみんさんとご一緒したいのです。
僕の発言は、京都「被爆二世・三世の会」で進めている健康調査アンケ―トについてです。
コンパクトに話しますが、これも森川さんが切り開いた地平の上に作りだしたものです。僕はそれがすべての核被害者の救済につながると確信しています。
いまも世界中でヒバクシャが、ヒバクシャ二世、三世、四世が苦しんでいるのです。ひとごとだと思うなかれ!それはあなたなのかも知れない。だから僕はあなたを、そして僕を、助けたいのです。
9月12日午後3時、zoomでお会いしましょう。(現在アーカイブを準備中です。9月13日追記)
続く
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