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明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(543)丹後半島、与謝野町でお話します。(9月16日です!)

2012年09月15日 23時30分00秒 | 明日に向けて(501)~(600)

守田です。(20120915 23:30)

京都に向かう新幹線の中で書いています。投稿するのは、京都市内の自宅に戻ってからですが。今日(15日)は、福島県いわき市で行われていた高木仁三郎基金主催の測定室講習会にオブザーバー参加してきました。全国から15箇所ぐらいの測定所が集まり、中身の濃い討議が重ねられていました。今後のさまざまな測定室へのかかわりに役立たせていただこうと思っています。

さていったん家に帰って、明日は朝から京都府北部、日本海側の与謝野町に向かいます。天橋立のそばで講演なので、少し前にこの日本有数の名勝を見学してしまおうと思っています。この天橋立も、高浜原発から直線で20数キロに位置しています。ここで深刻な事故があれば放棄しなければいけなくなってしまう。そうしたところが他にも日本中にたくさんあるわけで、それはこれらの景勝地をえいえいと私たちの代まで伝えてきてくれたご先祖様方への冒涜であると思えます。

さらにこのところ腹が立って仕方がないのが、なんとこの高浜町に、西日本各地で押し返された震災遺物(いわゆるガレキ)が押し付けられようとしていることです。焼却灰の埋め立てが寝られれてます。これは本当にひどい!高浜町ばかりでなく、敦賀市も候補にあがっています。なんというか、結局ここに持ってくるのか・・・という感じです。与謝野町は京都府、高浜町は福井県、それだけに僕は与謝野町の方が、声を上げやすい面もあるのではないかと思い、ぜひ、高浜町と与謝野町のために、震災遺物広域処理反対の声をあげて欲しいと訴えてこようと思っています。

さらになんとも言えないのは、この高浜に持ち込まれようとしているものが、岩手県大槌町の震災遺物だということです。京都OHANAプロジェクトで中古自転車を届けた町です。その後のフォローでこの7月にも大槌に行ってきましたが、津波で大きく流されてしまった町を見渡して、震災遺物が積み上げられているのはほんのわずかなところであり、広大な地域が復興の手などまったく入らないままに放置されていることが分かりました。震災遺物が復興を妨げているなどというのはまったくの嘘です。

またほかならぬ大槌町の人たち自身、自分たちの住まいなどでもあったこれら震災遺物の移動処理などのぞんでいないのです。壊れたままにされている防波堤を直すために、そこに遺物を積み上げ、鎮魂の森を作りたいというのが地元の願いなのです。そのためには実は大槌のものだけでは足りない。周辺自治体のものを大槌でひきとってもいいという声もあるほどです。

この場合は焼却処理を経ません。震災遺物をしっかりと固めてその上に盛り土すれは、放射性物質も閉じ込めることができます。森の作り方には慎重を要しますが、その点をクリアし、地下水への漏れ出しを防止すれば、これは震災遺物の合理的な処理方法になりえると僕にも思えます。そのために、放射性物質の遮蔽のあり方を研究し、放射性物質があるところまで根をはることのない植物の移植の方法など研究して、安全で、心のこもった鎮魂の森を作ることは可能だと思います。またそのためにこそ予算を投入してその可能性を拓くべきです。

にもかかわらず、人々がここに鎮魂のためにおいておいて欲しいというものを奪い去って移動し、これまで原発を受け入れてきた高浜町、敦賀市に押し付けようとするこの国の政府、高官たちのモラルはいったいどうなっているのでしょうか。心の中に本当に温かい血が流れているのでしょうか・・・。そう考えざるを得ません。こうしたことをこの日本海に面して町でお話してこようと思います。

直前のお知らせで恐縮ですが、以下、案内を貼り付けます。

*****

原発を考える会講演会「放射能(内部被ばく)に向き合う~子どもたちの未来を守るために」

9月16日(日)14時、生涯学習センター知遊館(京都府与謝郡与謝野町字岩滝2271。KTR「岩滝口」より徒歩23分)TEL0772・46・2451。

ストロンチウム90が10都県で検出されました。子どもたちの安全を守るために、内部被ばくについて、今しっかりとした知識が必要になってきています。

講師=守田敏也(フリーライター)。

無料。

問い合わせTEL0772・46・5048(宮津与謝九条の会:吉田)。

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明日に向けて(542)内部被曝と被爆者差別(中)

2012年09月14日 22時00分00秒 | 明日に向けて(501)~(600)

守田です。(20120914 22:00)

東京のホテルからです。今日は内部被曝問題研のある委員会の会議で出向いてきました。明日はここから福島県いわき市に向かい、ある測定室に全国の測定室のメンバーが集って行われる測定室講習会に参加してきます。その後、夜中にいったん京都市に戻り、明後日は京都府北部、丹後半島の与謝野町にいってお話します。旅から旅ですが、特有の楽しさを味わっています。

さて、今回は「内部被曝と被爆者差別」の(中)をお届けします。内容としては、内部被曝のメカニズムについてのお話です。なんだ、まだ差別のことは出てこないではないかとお思いかもしれませんが、放射線の人体に及ぼす影響が深刻であるがゆえに、それに続いて、その結果といかに向かい合うべきなのかということも導き出されることになります。なのでまずはしっかりと放射線の作用について耳を傾けていただきたいのです。

岩波ブックレット『内部被曝』でまとめた内容を短い発言の中にこめることができたように思いますので、ぜひお読みください。活用もしていただけたらと思います。

***

内部被曝と被爆者差別(中)

3,隠されてきた内部被曝の脅威

それではなぜこれほどの放射線の評価に対する違いというものが出てくるのでしょうか。それは放射線と人間の関係がどこでどのように調べられたのかということに帰着します。どこの何か。広島・長崎の原爆です。では誰が調べたのか。アメリカ軍、およびそれが組織した機関です。ではなぜアメリカ軍が調べたのか。一つは兵器としての性能を知りたいからですね。落とした側ですから。もう一つ、決定的なことは、徹底して、原爆の非人道性を隠したかったということがあります。では非人道性を隠す核心は何だったのかというと、内部被曝を全くなかったことにすることです。

外部被曝と内部被曝、これはもうポピュラーになった言葉ですね。外部被曝は外からの被曝です。内部被曝は放射性物質を食べたり飲み込んだりして、そこから被曝することです。では原爆ではどう言われているのか。原爆が破裂した時に、中性子線とガンマー線という放射線が飛んできます。これに当たるのが外部被曝です。プラス、キノコ雲があがって、その中に放射性物質がたくさん含まれていました。それが数十キロにわたって、広島・長崎を汚染しています。そこから降下してきたものを多くの方が、黒い雨に当たったり、埃と一緒に吸い込むなどして内部被曝してしまったのですね。

これをアメリカは一切、認めてこなかったのです。ないということになっているのです、これが。正確に言うと「認めてこなかった」のではなく、現在進行形で、今なお、認めていないのです。そして日本政府はこれに完全に追随してきたのです。だから内部被曝という言葉は日本政府は使ったことすらありませんでした。一番最初に使ったのは、昨年の3月11日以降の、枝野さんの会見においてでした。それが日本政府高官が、内部被曝という言葉を使った初めてのことだったのです。内部被曝は全く隠されてきた、そして現在も隠されているのです。そのことをおさえてください。

4,放射線による電離作用

続いて内部被曝のメカニズムについてお話したいと思います。放射線の害というものはどのように出るのかですが、これは物理学の領域になります。みなさんの大好きな物理学ですので聞いてください。わりと単純です。私たちの物理的世界は原子から成りたっています。原子には真ん中に原子核があり、その周りを電子が回っています。ただ原子として存在しているものはまれで、原子と原子がくっついて分子の形で存在しているのですね。その場合、どのようにして原子がくっつくのかというと、電子が軌道を共有化し、相互作用を及ぶぼすことによってくっつきます。

それに対して放射線の作用はシンプルです。放射線が分子に飛んでくると、そのうちのあるものが電子にあたり、軌道からはじきだしてしまうのです。そうすると電子の相互作用によってつながっていた分子が切れてしまいます。分子切断が起こるのです。それが放射線が物質に与える影響の基礎になります。電離作用といいますが、これがまた副次的な要素を作り出していくことになります。

5,DNAが切断される

これが生物に対してはどういう影響を与えるのか。私たちの体の細胞の中にはDNAがあります。一番大事な遺伝子情報が入っています。ここに放射線が飛んでくるとどうなるかというと、分子切断が起こりますので、生命の鎖が切れてしまいます。ところが、DNAは二重の螺旋になっていて、そのことで自分を守っています。さらに生物の体には驚異の修復力があって、二重の鎖のうちの一本が切られたぐらいだったら、何とかつなぎなおすのです。

ところがこの二重の螺旋が解けるときがきます。それぞれが一本になり、自分を複製してもう一度、二重になる。これが細胞分裂です。今、私たちの体の中で激しく起こっていることです。なので細胞分裂中のDNAというのは、放射線に弱いわけです。一本になっているときだからです。ではどういうところが弱いのかというと、細胞分裂が激しいところで、例えば粘膜ですね。だから粘膜はやられやすくて、例えば鼻血が出る。下痢や口内炎が起こります。腸の上皮細胞の粘膜が細胞分裂が激しいからです。あるいは細胞分裂が激しいのは毛根です。抗がん剤治療で髪の毛が抜けるのもそのためです。抗がん剤は、がんという激しく分裂増殖を繰り返している細胞を攻撃するので、副作用として毛根もやられるのです。

その考えからいくと、細胞分裂を激しくしている人ほど、放射線に弱いことになります。誰かという子どもです。そのため大人より子どものほうが放射線の影響を受けやすいのです。ただし、高齢者は放射線に強いのかというと、そんなことはありません。高齢者の場合は、一般的に言って、免疫力が落ちていますし、いろいろな病気を抱えていますから、その病気に対して放射線は促進するものとして働きます。だから高齢者も、放射線に対しては弱者です。そのことを知っておいてください。

さらにDNAに飛んでくる放射線が増えるとどうなるのか。そうなると二重切断が起こります。その場合でもDNAはつなぎなおしをしようとしますが、それができないとDNAは死んでしまいます。DNAが死ぬと、それが入ってる染色体が、そして細胞が死にます。これが全身に起こると、いわゆる放射線急性症状を起こして、ひどい場合にはその方が亡くなってしまいます。

ところがこの段階でも、DNAはつなぎ直しを試みるのですね。試みてどうなるのかというと、二重切断で情報がめちゃめちゃになっているので、何とかつなぎなおすのですが、異常再結合することが多くなる。それが染色体異常をもたらします。そしてその異常再結合したDNAが、さきほど説明したように細胞分裂していくのです。細胞分裂してあやまった自己をコピーして増やしてしまいます。そのためある程度の時間が経つと、異常再結合したものの数が体の中で増えていって、病気などをもたらします。これが「にわかに健康に被害はない」ということの正体です。気をつけてくださいね。あれは「健康に害はない」とは言っていませんからね。

6,放射線の違いによる物質への作用の違い

ここで内部被曝の核心問題を話します。注目してほしいのは放射線の種類です。原発からでてきた放射性物質の中から飛び出してくるのは、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線です。一番、強いのはα線、次にβ線、γ線です。α線は空気中では45ミリぐらい飛びます。β線は1メートルぐらい。γ線は体も通り抜けていきます。この言い方は間違いがないのですが、これがしばしば誤解を生みます。この点は物理学者さんがもっときちんと説明すべきだと思うのですけれども、次のような説明もされます。「α線は紙1枚で止まります。β線は金属板で止まります。γ線は厚いコンクリートでないと止まりません。」こう言われると、γ線が一番強く見えてきてしまいます。

これは一体、どういうことなのか。ここでもう一度、注目してほしいのは放射線が電子を弾き飛ばして、分子切断をする場面です。比ゆ的な言い方になりますが、α線は一番大きいのです。大きいので、飛んでいくと、自分の行く先にある分子にことごとく衝突するのです。α線がなぜ空気中で45ミリで止まるのかといえば、45ミリの中にあるたくさんの分子を切断して、エネルギーを失うからです。人体の中では100分の4ミリしか進みません。それでも細胞の世界では大きな単位ですが、ともあれその間にある分子をことごとく切断し、そこでエネルギーを使い果たして止まってしまう。それだけ密集した被曝をもたらすのです。

それに対してγ線が体を通り抜けていくというのは、分子の中の原子核と電子の間をスカッと抜けていくからです。α線に比べると、電子にあたる確率が非常に小さい。そのため物質との相互作用が少ないので、エネルギーを使いきらず、人体を通り抜けてもまだ遠くまで飛んでいくのです。

そもそも分子の世界は私たちの日常感覚とはずいぶん違う世界です。原子核が米粒ぐらいだとすると、電子は学校の校庭の周りぐらいのところを回っています。内部はスカスカなのです。そしてそのスカスカなところを、γ線は通り抜けていきます。突き抜けるのではありません。γ線はα線と比べたら、物質とあたりにくい放射線なのです。

7,内部被曝の核心問題

そこから核心問題が導きだされます。外部被曝では当たるのはほとんどγ線に限られるということです。β線も1メートルぐらいは飛んできますが、そこにいるともうエネルギーを失うので体に入ってくることはありません。50センチではどうか。エネルギーが四分の一は残っていますから、体に入ってはきますが、数ミリで止まります。直近からなら1センチは入ってきますが、内臓レベルでみたらほとんど届くことはない。なので外部被曝はほぼγ線だけで起こると言ってよいのです。

対して内部被曝は、この3種類の放射線を出す物質を、吸い込んだり食べたり飲み込んだりして体内に取り込んでしまうことですから、すべての放射線に被曝します。しかもα線とβ線の被曝はγ線の被曝に比べて局所に密集して行われます。なので内部被曝は外部被曝とは比較できないほどに強烈なのです。これはなかなか数値化できないのですが、ヨーロッパ放射線リスク委員会の科学者たちは、あえて数値化するなら数百倍の危険と見積もるべきだと主張しています。バスビーさんは、平均すれば600倍ぐらいではないかと語っています。なので内部被曝の方が圧倒的に怖いのです。

ところが今の日本政府は、「この人は1ミリシーベルトの内部被曝をしました、1ミリの外部被曝もしました、したがって被曝は2ミリシーベルトです」・・・という言い方をしています。つまり外部被曝と内部被曝を同じに扱っている。すべて外部被曝に相当するものとして扱っているのです。内部被曝の特有性、圧倒的に密集して行われる被曝の恐ろしさが何ら考慮されていないのです。それで食料の許容値なども導き出しているのです。だからそのまま鵜呑みにして食べたら、大変深刻な内部被曝を被ってしまうことになります。

続く

 

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明日に向けて(541)内部被曝と被爆者差別(上)

2012年09月13日 22時30分00秒 | 明日に向けて(501)~(600)

守田です。(20120913 22:30)

このところ、尾道、大阪、長野と連続する中で、僕なりに、内部被曝と食べ物の問題、差別の問題、戦争の問題をより深く掘り下げることができたように思います。それをそれぞれの現場の発言で表現しましたが、順次、その発言を起こしてここにも反映させていこうと思い立ちました。

今回は9月8日に日本カトリック差別人権委員会のお招きで、大阪梅田教会でのシンポジウムで発言した「内部被曝と被爆者差別」について取り上げます。僕に先立って、福島から京都に避難されてきている西山祐子さん(避難者と支援者を結ぶ京都ネットワークみんなの手)が、「いのちを守るために~福島から京都に自主避難して」というタイトルでお話くださり、それを前提に話すことができました。

そのことを紹介して、発言の前半部を掲載します。読みやすいように小見出しをつけます。


内部被曝と被爆者差別

みなさん。こんにちは。守田敏也です。今日はカトリック教会にお呼びいただきありがとうございます。

1,避難権利区域、強制避難区域に該当する福島や東北・関東の現実

僕は内部被曝の危険性についてあちこちでお話しているのですけれども、一定のまとまった時間を頂いてお話するときは、必ず前半で福島のこと、東北のことをお話するのですね。写真などもお見せして、実際の被爆状況の話をします。なぜかというと、その現実があるというところからこの問題は始めなければいけないと考えているからですが、今日はその点をすでに西山さんが話してくださったので、それを前提に話を進めたいと思います。

ただ一点だけ付け加えることがあるとすると、チェルノブイリでは今、避難のあり方はどうなっているのかというと、年間での線量が1ミリシーベルトを超えると、避難準備区域に該当することになります。この区域はその方が避難をしたいと言って手をあげたら、政府が全面的に責任をもって避難をさせなければいけないと決められている地域です。

さらに年間5ミリシーベルトを超えると強制避難区域になります。では西山さんのお家のあるところはどうなのでしょう。1時間あたり1マイクロシーベルトを超えているそうですから、年間では8から9ミリシーベルトになってしまうので、強制避難区域にあたります。その周りの多くの地域が避難権利区域になります。その強制避難区域に値する西山さんの地域が、「線量が低いから除染は待ってね」と言われているのです。そういう状況ですよ。

それでは除染活動自身はどうなのか。飯舘村でかなり大規模な除染が行われました。多くのところでほとんど線量が下がっていません。やっても無駄なところが多いのですね。無駄なお金を使って、それが全部、ゼネコンに入っているだけです。なおかつ、作業者がものすごく被曝してしまいます。本当に危ないのですよ。除染活動とは何かと言うと、放射能があるところに行って、除去する活動ですよね。そこにそれがあったら人が住めない状況のところで行うわけではないですか。だから本来これは、専門業者でしかできない仕事なのです。

ところがそんな専門業者はどこにいるのか。いないのです。こんな事故は起こったことがなかったのですね。そして実際の状況は、原発の中の危険な労働が、外に出てきているのと同じなのです。しかもそれを一般の方、何らまともな防護もしてない方が行ってしまっています。だから僕は、除染活動における被曝は大変なことになっていると思います。すでに除染活動中に、作業員の方が亡くなっています。だけれどもこれは、放射能の被害とはカウントされていません。どう亡くなったのかというと、作業中の休憩時に車の中で休んでいる時に、心不全で亡くなられました。

このように心臓の病で亡くなられている方が多いです。この点でも、放射線の被害は何かガンにしかならないようなことが言われてきたのですが、ベラルーシのゴメリ大学のバンダジェフスキーさんとお医者さんが、チェルノブイリ事故の犠牲者のたくさんの遺体解剖を行いました。そして驚いたことに、心臓にセシウムがたくさん入っていたのです。それが心筋に影響して、心筋梗塞や心不全を引き起こしていました。このためバンダジェフスキーさんは死亡要因はガンよりも心臓疾患の方が多いのではないかとおっしゃっています。遺体解剖を200例以上、なさっているので、かなり有力なデータだと思います。

実際にどうなのかというと、私が東北に行っても、心不全などによる突然死の話を非常によく耳にします。もちろんこれは有意なデータになっているのではありません。政府がデータにさせないようにもしていると思います。だからデータとしての科学的な裏付けがあるとは言えないのですけれども、話を聞いているときの「リアル感」というものがあるのです。

例えばこういうことがありました。岩手県でのことですが、あるお寺さんで私が話をさせていただくことになり、前日に和尚さんと打ち合わせも兼ねた話をしました。和尚さんが、「放射能の害でやはりガンなどになるのですか」とおっしゃるので、今、ここで行った話をしました。「心不全などによる突然死も多いのですよ」と語ったのですが、そうしたら和尚さんが、「なるほど、それでこの頃、突然死の葬式ばかりが出るのですね」とおっしゃいました。

その話を近くの仮設住宅に行って話したら、高齢のおばあさんが来てくださっていたのですけれども、この話をしたら、おばあさんが途中で手を挙げて、「うちのとうちゃんです。3ヶ月前に前日まで元気に仮設住宅の周りを歩いていたのに、朝、死んでいました。自分は放射能を疑っているのだけれども、お役人は全然そうは思ってくれません。それで今日は話を聴きに来ました」とおっしゃられました。

この一つ一つが実際にどうなのかは、わからないのですが、おそらく僕は、津波を受けたストレスや、避難のストレスなども、間違いなくあったのだと思います。その上に、放射能の被害が重なってきたのだと思います。人間が亡くなるとき、その要因は一つではありません。ガンにしても、それをもたらす要素はたくさんあります。放射線だけではなくて、化学物質や生活の不摂生、さまざまな精神的ストレスなど、それらが全部重なってなりますから、そのようにもともと身体が悪かったり、ダメージを受けているところに、放射線を浴びて、寿命が短くなってしまう事態が頻発しているのではないかと思えます。

本当に大変なことです。そういう事態の中にあるのは福島だけではありません。東北・関東のかなりのところが、さきほど言った避難権利区域に該当します。あるいは強制避難区域に該当するところもあります。そういうところの方々を助け出さないといけない。そうでないと、大変なことになります。というか、大変なことが進行中だと思います。


2,チェルノブイリ事故の死者数をめぐる「世紀の大嘘」

ここから放射線と人間の関係について、お話をしたいと思うのですが、その前にみなさん、ちょっと考えてみていただきたいと思います。チェルノブイリ原発事故で犠牲になられた方の数は何人だと思いますか。あるいは何人と聞いたことがありますか?これが実は、数が、まったく違って語られているのです。どういうことなのかというと、2005年にIAEA(国際原子力機関)という組織が、それまでに研究してきた成果として、2004年までに亡くなったのが約60人、今後、亡くなるのが3940人、従って最終的な死者は4000人という数を出しました。

これに対してすぐに共同研究者だったベラルーシ共和国政府が即刻、抗議の脱退を行いました。「そんなはずはない。そんなに少ないはずがない。ふざけている」と。それに対して、IAEAと非常に親しい組織にWHO(世界保健機構)があります。ここがいわば仲裁に乗り出してきて、訂正を行いました。そこでは今後亡くなる数は9000人とされたのですね。ところがこれでいよいよおかしいという批判が高まりました。半年前に4000人と言われたものが、なんですぐに9000人になるのか。

こうした批判の高まりの中で、科学者50人ぐらいを集めて、並行的に調査を進めてきたグリーンピースが2006年に出した数は、ロシア以外の国々も含めて14万人でした。14万人がチェルノブイリ原発事故の死者数だというのです。

ところがこれをも覆すものが出てきました。2009年に、アメリカのニューヨーク科学アカデミーという、アメリカの中でも科学的な権威の高いところからでた論文なのですが、誰が書いたのかというと、もともと旧ソ連邦時代に、ゴルバチョフ大統領やエリツェン氏などのもとで調査をされた方たちで、ソ連邦が亡くなったあと、アメリカにわたって研究を継続されて出されたものでした。そこで出された数は、今後の推計ではなくて、2004年までに亡くなった数で98万5千人です。

なぜグリーンピースが打ち出した数とこれほどの違いが出たのか。僕はグリーンピースに集った科学者たちは、信頼のおける方たちだと思うのですが、一番の違いは、読んだ文献の言語の違いです。つまりこの旧ソ連の研究者たちが読んだのは、ロシア語の他、ウクライナ語、ベラルーシ語の文献でした。この言葉を話す方たちが一番被害者になったし、あるいはその被害者をそばで診たお医者さんや看護師さん、あるいは家族など、そういう方の証言が西側の方たちはあまり読めなかったのですね。西側の言語圏の文献しか集められなかった。

だからグリーンピースの方たちは、少し遠いところから被害の実態を探って、14万人まで突き止めたと言えると思うのですけれども、それに対して、アメリカから出た文献での犠牲者は98万5千人でした。2004年なので、現在は2012年ですから100万人は軽く突破していると思われます。現在までに亡くなった犠牲者の数です。

ところがですね。これが日本の首相官邸のホームページにはなんて書かれているのか。HPの中に「チェルノブイリ事故と福島との比較」という文書が出てきます。ここに書いてある死者数は約60人です。アメリカで出ている文献では98万5千人ですよ。この60人という数はなんなのかというと、IAEAが最初に出した数です。だから60人という言い方をするのも騙しなのです。IAEAが言ったのは、今、死んでいるのは60人だけれども、あと3940人死ぬということでした。それに対して轟轟の避難が起こって、訂正が行われていったわけですが、日本政府は、この3940人を言わずに60人だけを出しているのです。

これが未だに首相官邸のホームページに載っています。世界の中でも突出した大嘘ですね。本当に。アメリカのカール・グロスマンという方が、IAEAが4000人と言ったことを、「世紀の大嘘の一つ」と言いました。日本政府はこの世紀の大嘘の上を行っているのですね。そんなことを日本政府が行っているのだということを、ぜひみなさん、しっかりとおさえて、とにかくこの政府に騙されないようにしましょう。まずはそのことを訴えたいと思います。

続く

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明日に向けて(540)チェルノブイリ―大惨事が人びとと環境におよぼした影響(下)

2012年09月09日 08時30分00秒 | 明日に向けて(501)~(600)
守田です。(20120909 08:30)

9月7日尾道、9月8日大阪市カトリック教会と、素晴らしい時間を過ごしてき
ました。そこでお話したこと、感じたことなど、ぜひ紹介したいのですが、
いかんせん能力が追いつきません。もうしわけなく思いますが、またおいおい
報告させていただきます。尾道のみなさん、カトリック教会のみなさん、どう
もありがとうございました。

さて今日はこれから長野県高遠町の千代田湖キャンプ場に向かいますが、その
前に、(538)でお伝えした、チェルノブイリ事故による死者数についての続
編を書いておこうと思います。今日は、「チェルノブイリ100万人の犠牲者」
と題された、重要なビデオを紹介します。

これは、前回ご紹介した、アメリカ・ニューヨーク科学アカデミーから出され
た著書「チェルノブイリ―大惨事が人びとと環境におよぼした影響」の寄稿者
である、ジャネット・シェルマン博士に対して、カール・グロスマンという
キャスターがインタビューしたものです。本書のエッセンスがコンパクトに紹
介されているので、ぜひ、ご覧になってください。映像をみる時間のない方の
ために、書き起こしも行いました。なお収録は2011年3月5日!なんと、福島原
発事故の直前でした。このことにもご注意ください。

ただしその前に、僕の前回の記事に関する重大な訂正があります!!というの
は、前回の記事の中で僕はの内容について次のようにコメントしました。
「この中でチェルノブイリの犠牲者(1986年から2004年の推計で今後亡くなり
うる数も含めたもの)が98万5千人になることが明らかにされているからです。
衝撃的な数字です。」

ところが、このビデオ番組の中で2人は、98万5千人という数は、2004年までに
すでに亡くなった方の数だと語っています。僕はIAEAや、WHOの報告と同じよう
に、今後、亡くなる人も含めた推計だと理解していたので、翻訳チームの方に
確認をしたのですが、やはりそうではなく、すでに亡くなった方の数だという
ことがわかりました。僕の勘違いでした。申し訳ありません。

この違いはとてつもなく大きいです。IAEAの発表の4000人はすでに亡くなる人
の方が圧倒的に多い数になっています。ところがこの書の発表は、すでに亡く
なった方であり、ということはさらに長く時間が経てば、死者数はもっと増え
ることになるからです。

このように膨大な死者を出したのがチェルノブイリ事故だったのにもかかわら
ず日本政府は首相官邸ホームページに、死者数を62人と掲載し続けています。
カール・グロスマンはインタビューの中で、「チェルノブイリ事故による犠牲
者はわずか数千人とよく引用されて聞きますが、これは史上最大の嘘の一つ
ですよね」とジャネット・シェルマン博士に問いかけているのですが、日本政
府は、その「史上最大の嘘の一つ」のさらに上をいっているのです。

記事内容のあやまりへの訂正とお詫びとともに、この日本政府の大嘘つきをた
だし、罰を与えるために、ともに努力を傾けることを訴えたいと思います。

以上のことを踏まえて、「チェルノブイリ100万人の犠牲者」をご覧ください。

********

チェルノブイリ100万人の犠牲者
http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/info/chernobyl-a-million-casualties/

ようこそ。司会のカール・グロスマンです。
2011年4月26日はチェルノブイリ事故よりまる25年になります。
その一歩世界中の原子力産業は再興を図っています。
この重要な本が出版されました。
「チェルノブイリ~大惨事の環境と人々へのその後の影響」について取り
上げていきます。

この本は公開された医学的データに基づき、事件のおきた1986年から2004
年までに98万5千人が亡くなったとしています。そしてその死者数はさら
に増え続けています。

スタジオにはジャネット・シェルマン博士をお迎えしています。ジャネッ
ト博士はこの本の寄稿者です。
共著はベラルーシのアレクシー・ヤブロコフ博士、バシリー・ネステレン
コ博士、そしてアレクシー・ネステレンコ博士です。

G ようこそジャネットさん。チェルノブイリ原発事故の死者は100万人とい
うことですが、死因は何でしょう?

S がん・心臓病・脳障害や甲状腺がんなど、死因はさまざまでした。何より
多くの子どもたちが死にました。胎内死亡、又は生後の先天性傷害です。

G 科学者たちが98万5千という死者数を特定した方法は?

S これは公開された医学データを基にしています。

G 原子力を規制・奨励する国際機関である国際原子力機関(IAEA)はチェル
ノブイリの死者数を約4千人とホームページで発表しています。これは本に
発表されている98万5千人と大きく異なるのはなぜでしょう?

S IAEAが発表したチェルノブイリフォーラムという調査書は350の論文に
基づき英文で公開されている資料でしたが、ヤブロコフ博士とネステレンコ
博士たちは5千以上の論文を基にしています。それは英文の論文に限りません。
また実際に現場にいた人たちの声を基にしています。現場にいたのは医師、
科学者、獣医、保健師など、地域の人々の病状を見ていた人たちです。

G この本によりますと、世界保健機構(WHO)さへ、チェルノブイリの真実
を語っていないと批判していますね。WHOとIAEAは協定を結んでおり、発表
することができないとのことですが、それについて説明していただけますか?

S 1959年に結ばれた協定は、それ以来、変わっていません。一方がもう一
方の承諾を得ることなしに、調査書を発表することを禁じています。WHOは
IAEAの許可なしに調査書を発表できないのです。

G IAEAは世界中の原子力の規制だけではなく、原子力の促進をになう機関
でもありますからね。当然、WHOに「原子力は健康に有害だ」と言われては
困るわけです。

S そのとおりです。こうした協定は終結すべきです。協定は破棄されるべ
きです。

G さて毒物学者として、研究に生涯を捧げておいでのあなたが、今、この
本を編集されている中、あらゆる科学的なデータをみた上で、チェルノブイ
リの犠牲者数は100万人とおっしゃる。これは科学技術による史上最悪の事
故ということですね。

S そのとおりです。

G データを読み取り、本を編纂された時の感想は?

S 事態は私が思っていた以上に深刻でした。人々ががんや心臓病で命を
落とすだけでなく、体中のすべての臓器が害されて、免疫機能、肺、眼内
レンズや皮膚など、すべての器官が放射能の悪影響を受けたのです。しか
も人間だけではありません。調査した全ての生き物、人、魚、木々、鳥、
バクテリア、ウイルス、狼や牛など、生態系のすべてが、例外なく変わっ
てしまいました。

G そのことが本に書かれてあるのですね。

S 人間への影響にとどまらず、鳥や動物にも人間と同様の悪影響がありま
した。

G 今となってはがんと放射能の関係はわかりますが、心臓病はどうし
て起こるのでしょう?

S 私がこの本を編集するときに気づいた重大なことの一つですが、バンダ
ジェフスキーという科学者は研究で、子どもたちの体内に蓄積されたセシ
ウム137の量が、実験動物と同じ値になっていることを発見し、それが
心臓にダメージを与えていることに気づきました。この研究結果を発表し
たことで、彼は刑務所に収監されてしまいました。

G 刑務所に収監されたのですか?

S そうです。

G 彼は動物実験をしたのですか?

S 病理学者だった彼は、まず動物実験を行ってから、子どもへの影響を
調べようとしました。その結果、亡くなった子どもたちの心臓に蓄積され
たセシウムの量は動物の場合と同じでした。これを発表したために逮捕さ
れ刑務所に収監されました。

G チェルノブイリからの放射能によって、ロシア、ベラルーシ、ウクラ
イナは高濃度で汚染されましたが、この本によればそれどころか世界中
に拡散したと書かれていますね。

S そのとおりです。放射能がもっとも集中したのは前述の三国ですが、
最大量の50%以上は北半球全体に行き渡ったのです。特に北はスカンジ
ナビア、東やアジア圏へと。

G 中国までもですね。

S そうです。

G チェルノブイリによる死者は近隣国だけでなく、もっと広いエリア
で見られたということですか。

S もちろんそうです。世界中です。

G この悲劇はいつまで続くのでしょうか?放射性物質が浄化されるには
千年はかかるのでしょう?

S もちろん。セシウム137およびストロンチウム90だけでも半減期は30
年。少なくとも3世紀は残ります。多くの同位体が千年残るはずですので
おっしゃる通りです。

G この本には最大の被害が起きたのは最初の数ヶ月、もしくは数週間と
強調していますが、とてつもない大火事が起きていた時のことですね?

S はい。今でも原子炉から水道へタダ漏れてしています。今も原子炉の
周りの構造も安全ではありません。もし小地震でもあれば建物が崩壊す
る可能性もあります。原子炉は安全に覆われ、漏れていないとは言えま
せん。

G チェルノブイリの真実を語るこの本は、権威あるニューヨーク科学
学会によって発行されましたね。科学の専門機関はこれ以外にもあるわ
けでしょうが、チェルノブイリの情報を外に出すことについて、彼らの
立場はどうなっているのでしょうか?

S 情報を外に出すことに好意的なグループもあり、原子力御用学者と
組み合い、どの様な内容が書かれていたのかは明らかではなかったよう
です。

G 著者のヤブロコフ博士とネストレンコ博士たちは、チェルノブイリ
の影響を調べる為に、あなたとどのように取り組んだのですか?

S 彼らはWHOとIAEAの協定の事を前から知っていました。実はジュネー
ブのWHO本部の前で一日中、協定を抗議するデモを行なっている人々が
います。

G この方たちがデモを行なっている人々ですか?

S そうです。

G この本にはIAEAとWHOの「談合の協定」と呼んでいますね。

S そうです。チェルノブイリの件で、ヤブロコフ博士は、ゴルバチョフ
とエリツィンの補佐を務めていました。事故直後の3年間、ソ連政府は
情報の隠蔽を続けていましたし、一般に真実を知らせまいとデータ収集
もしませんでした。ヤブロコフ博士はそれを知り、情報収集を始めまし
た。出版された論文の数は15万以上でしたが、この本の執筆には5千点
以上が使われました。これらの資料は英語に訳されたことが無く、ほと
んどがウクライナ語、ロシア語、ベラルーシ語の論文でした。こうした
情報が西側世界の眼に触れるのは初めてです。

G 人、動物、植物への影響について、違いはなんでしょうか?

S メカニズムは同じです。放射性同位体に汚染されると、人や鳥や動植
物が受ける影響は、細胞が破壊されダメージを受けるということです。
DNAの損傷がもたらされ、遺伝メカニズムがダメージを受けるという点で
同じです。細胞を破壊するのであればガンにはなりませんが、細胞にダ
メージが与えられるとがんになります。もしくは先天性障害の原因とな
ります。人や鳥だけでなく植物にさえ先天性障害が出ます。チェルノブ
イリのせいで植物にも変異が起こりました。

G 風の影響で北西が被害を受けたとのことですが、チェルノブイリや原
子力とはまったく無縁だったスカンジナビアのラップランドの人々でさえ
も、雨などによる放射性物質拡散で余波を受けました。こうした事後的
影響については?

S 最近の研究によると、チェルノブイリの事故当時に生まれたスカンジ
ナビアの子どもは、高校を卒業する割合が低いようです。知的能力に影響
が出たのではないかと思います。私が知る限りのチェルノブイリの最悪な
影響は健康と言えるベラルーシの子どもは、わずか2割だということです。
つまり8割のベラルーシの子どもたちは、チェルノブイリの事故以前のデ
ータと比べると、健康でない状態だということです。医学的に健康でない
だけでなく、知的にも標準以下となってしまっているのです。

G 知的能力の低下と放射能の関係について教えてください。

S 妊婦たちが食べる物の汚染については、きちんと知らされていない場
合が多かったようです。または汚染されていない食べ物が手に入らなかっ
たのです。妊娠中に放射性同位体が体内に入ると、母体を通じて胎児に届
き、心臓、肺、甲状腺、脳と、すべての細胞、免疫系統にもダメージを与
えたのです。こぷした子どもたちは未熟児で、生まれつき健康状態が悪く、
死産の率も非常に高く、これは被曝がもたらした結果です。人間の文化に
起こりうる最悪の悲劇です。

G チェルノブイリの原発事故があったウクライナは、旧ソ連の一大穀倉
地帯でした。チェルノブイリ原発の3基の原子炉は今でも運転中です。
そこでとれた食べ物はあちらこちらへと出荷されました。

S はい。これは、きわめて深刻な問題です。数百年間も土壌汚染が続く
中、どの様にして人々に食料をまかなっていけばよいのでしょうか?
しかも小麦やライ麦などの穀物だけでなく、マッシュルームも汚染され
ています。重要な食料と思えないかもしれませんが、この地域では広く
流通している食べ物で、非常に高濃度で汚染されています。

G 本は医学的データに基づき、死者数は98万5千人と結論づけました。
けれどもこのデータは1986年から2004年までのもので、番組のはじめに
「100万人の犠牲者」という言葉を使いましたが、やはりチェルノブイリ
の犠牲者の数はその位になりますでしょうか?

S そう思います。やがてその莫大な規模が知られることでしょう。例え
ば「清算人(リクビダートル)」と呼ばれた人たちがいました。近隣諸
国から主に軍より召集された若き男女でした。火災を消化し、問題の原
子炉を封印する仕事をさせられました。その15%が死亡しています。こ
の人たちは18~30歳くらいの若い男女だったのです。

G 原子炉から放出された放射性物質の数量ですが、これにつきましても
本が記す数値と公式に発表された数値に大幅な違いがありますね?

S まったくです。もし放出されたのが少量だったならば、低レベルの
放射性物質は極めて危険だということですし、もしそれが大量に放出さ
れたのだったら、その甚大な被害の規模をみなければなりません。しかし
私たちはいまだに真相を知らないのです。なぜなら原子炉に残されている
ものは何か、地下水に漏れ出しているものは何かを、実際に現場に行って
確かめることができないからです。

G 原子力の安全性はどういうことになりますか?原子力産業、原子力
関係の組織は大抵、政府系の機関だったりするもので、原子力「ルネサン
ス」の再興を押しまくり、原発をもっと建設しようとしていますね。
チェルノブイリ原発事故の教訓は?

S 私が思う教訓とは、技術を促進する前に慎重に考えることだと思いま
す。例えばBP社によるメキシコ湾の石油採掘については、何の問題もない
と私たちは聞かされていました。一つの問題として、技術者たちは技術に
関する事については分かりますが、彼らは生物学をよく理解していません。
彼らは設備周辺にある生物生命に与える影響を理解していません。チェル
ノブイリ事故の最大の教訓は、汚染されたすべての生物に影響を与えた
ことです。例外はないのです。

G 本にはフクロウのことも書かれていましたね。動物への影響について
も少し詳しくお願いします。

S 本のカバーの写真を撮った南カロライナ大学のティム・ウーソールさ
んは、25人以上の科学者をチェルノブイリ現地に連れて行き、昆虫、鳥、
ふくろうとあらゆる動物を調査しました。現地調査をしている時、突然、
ミツバチがいなことに気づき、木の実が落ちていないことにも気づいた
と言っていました。実がないのは花粉を運ぶミツバチがいないからです。
現実になっているかもしれない彼の予想ですが、未だに崩壊し続けてい
る放射性同位体によって、チェルノブイリ周辺の生命体が、すべて失われ
た可能性もあるということです。すべての種を絶滅させるかもしれない
のです。そこは渡り鳥の主な飛行ルートです。渡り鳥が来たあと、どう
なっているかわかりませんから、土壌にある物を何でも食べて、チェルノ
ブイリを飛び立って行きます。食べた小果実が糞となりチェルノブイリ
以外の場所で排便されているはずです。

G 放射能は遺伝子に甚大な影響を与えるのですよね?それについてはど
うお考えですか?

S これは改善する見込みのない話です。一度遺伝子が損傷を受けると、
何世代にも引き継がれます。ですから、こういった損傷が、人、鳥や植
物の遺伝子に起きていて、それぞれの種が増進することは無いでしょう。

G 具体的にどのような遺伝子損傷のことですか?

S 脳や心臓、肺への影響、腕のない子ども、水頭症の赤ちゃんです。
鳥の場合は、羽毛とくちばしの変化、脳の大きさなどがあります。これら
の鳥はあまり利口ではなく、汚染されていない鳥に比べたらそれほどよく
生きていません。植物も永久的に変わったのも分かっています。難しいこ
とではないのです。放射性同位体の行き先は明らかです。ヨウ素は甲状腺
に、ストロンチウムは骨や歯に蓄積します。特に胎児に影響が及びます。
セシウム137は心臓と筋肉に蓄積されます。これは謎などではありません。
これを知っている為、どんな悪影響がでるのかを予測できます。そして
結果はまさに予測通りであり、それを本で証明しました。

G 「チェルノブイリ事故による犠牲者はわずか数千人」とよく引用され
て聞きますが、これは史上最大の嘘の一つですよね。

S はい。追求もされずに逃れています。私たちはWHOと国連に圧力をか
けねばなりません。WHOとIAEAを分離させることです。

G WHOとIAEAのみならず、ここ米国の原子力規制委員会もまた、放射性物
質の影響を過小評価しようとしていますね。

S 全くその通りです。私は原子力規制委員会の前身であった原子力委員会
(AEC)で働いていました。それはカリフォルニア大学内で、1952年のこと
でした。新卒で働いていました。当時の私の限られた教育と経験でも、他
の人が思っているより、放射能は危険だと分かっていました。放射能のも
たらす害については米国民に対しても何十年にもわたり、秘密と嘘で騙さ
れていました。隠蔽及びデータの書き換えが行われ、多少の放射能なんか
大丈夫だと吹聴されました。しかしデービスベッセ原発所ではメンテナン
ス不足の為、炉心が格納容器の中で溶け出すところだったことがわかって
います。米国でなくとも世界のどこかで再び、原発事故が起こるのは時間
の問題だと信じています。

G 50年以上も原子力産業に携わってきたあなたがなぜその様な事を言う
のですか?

S はい

G それはお金のためですか?それとも技術を推進するためですか?
原子力産業の関係者はなぜ嘘やごまかしをするのでしょうか?

S 複合的な要因があるでしょう。金や原子力を促進する企業による支配
ですが、米国の人々はあまりに原子力について無知です。生物学を全く
理解していない学者がいます。町で20人の人を集めて「肝臓に手を当て
て!」と言っても、できる人は半分のいないと私は賭けますよ。放射能の
害についての教育を考えると、現在の米国はあまりにお粗末で、子どもた
ちは生物・物理・化学を学んでいない。原子力が米国の文化、経済に占め
る位置は大きいのに。

G チェルノブイリの影響を表すデータを見る上で、数十年前のご経験は
役に立ちましたか?

S もちろんです。放射能が与える悪影響につきましては、もう何十年に
も渡り広く知られています。ここ数年間で突然明らかになったことではあ
りません。物理を少しでも知っている科学者なら誰でも、放射性同位体が
人体、植物又は鳥のどこに入っていくか位はわかるはずです。謎の科学で
はありません。

G チェルノブイリの犠牲者が100万人というとき、テクノロジーの歴史や、
その現場にとって何を意味しますか?

S 技術だけに頼るのは間違いだということです。それを設計・操作する
人間にも頼るべきでもない。なぜなら、最終的にチェルノブイリ事故の
様なミスを起こすのは人間だからです。健康への影響は大規模ですね。
そのとおりです。北半球全域にわたります。放射性物質の降下地点で人々
は死んでいきます。死ななければ、子どもたちは知的・医学的傷がいを
もって生まれてきています。これがいまだに続いており、まだ終わりでは
ないのです。

G この本はどこで手に入れることができますか?

S 私にメールをください。toxdoc.js@verizon.netです。

G チェルノブイリ事故で何が起きたのか。人々が真実を知ることがとて
も重要だと思います。貴重なお仕事に感謝します。

私、カール・グロスマンがお送りしました。ごらんいただきありがとう
ございました。
www.envirovideo.comにどうぞお越しください。

インタビュー番組終わり


G 収録を行なったのは2011年3月5日でした。日本の福島原発大惨事がは
じまる6日前です。チェルノブイリそしてこの日本の悲劇の教訓は、すべ
ての原発を停止するべきだということです。原発は明らかに地球上の生
命に危険をもたらしています。二度と新たな原発の建設をすべきではあり
ません。原子力への税金を使った補助金をやめにすべきです。効率のよい
エネルギー政策にただちに転換し、すでにある風力・地熱・太陽光など
安全でクリーンな技術を、フルに回転させるべきでしょう。死を招く原子
力は完全に不必要なものです。

以上



























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明日に向けて(539)尾道市・大阪市・長野県高遠町でお話します。(9月7,8,9日)

2012年09月05日 23時00分00秒 | 明日に向けて(501)~(600)
守田です。(20120905 23:00)

今週末の講演の予定をお知らせします。

9月7日尾道市

9月7日に再び尾道市にうかがい、「食・給食の安全と放射能測定」のタイトル
でお話します。午後6時30分から午後8時45分まで。今回は僕が30分ぐらい発話
し、その後はできるだけ質疑応答に答える形をとります。これに向けて、食料
品測定のデータの収集分析をあらためて行なっています。できるだけ最新の
情報をお話したいと思います。

また栄養学についてのお話も準備しておきます。というのは放射能を避けると
いうだけでは「食・給食の安全」ということを十分にみたせないと思うからで
す。そこで僕が紹介したいのは、栄養学の新しい知見を切り開いた故丸元淑生
さんの論考です。少し古い本になりますが、『何を食べるべきか 栄養学は
警告する』などはぜひ読んで欲しい本です。例えば給食に関して、アメリカで
行われた注目すべき実験が次のように紹介されています。

「ニューヨーク市学区が給食用に購入する食品は、米国のなかでは陸軍に次ぐ
膨大な量である。年間1億ドルにも達するのだが、その内容を一挙に変えてし
まうという決然たるもので、栄養学の歴史にエポックを画した研究である。

1年目の1979年には飽和脂肪と砂糖がカットされた。ハンバーガーに使う肉か
らは脂肪の部分がとり除かれ、パンは食物繊維が豊富な無精製の小麦全粒粉で
つくり、食品にふくまれる砂糖の割合は11%を限度とした。それまで、ケチャ
ップには29%、アイスクリームには20%、コーン・フレークなどにシリアル類
には50%も砂糖をふくんだものがあったのだ。

この実験をはじめる前のニューヨーク市学区の標準学力テストの平均点は39点
で、全国平均を11点も下回っていた。食事の内容が脳に影響を与え、行動や学
習能力をも左右すると栄養学者たちは主張していたが、この年の学力テストの
平均点は、いきなり8点もあがって47点になった。

こうした学力テストの学区平均というのは急には上がり下がりしないもので、
何年かして2、3点上がれば上出来と関係者は思っていたから、その結果に
びっくりした。

2年目の1980年には、着色料は合成甘味料の添加してある食品もシャットアウ
トされた。すると成績はさらに上がり51点になった。

3年目の1981年は1980年と同じ食事にしたので学力テストの平均は横ばいのま
まだった。

4年目の1982年には、BHAやBHTなどの保存料の入っている食品が除かれた。す
ると成績は一段と上がって55点になった。食事を変える前と比べて16点も上
がったのだ。実に41%もの上昇である」(講談社+α文庫p37~39)

ここからつかんでいただきたいのは、食べるものが私たちにいかに強い影響
を与えるかです。そのため身体に悪いものを除去し、いいものを取り入れて
いくだけで私たちのパフォーマンスは上がります。もちろんそれは免疫力の
アップに確実に連動していきます。

その点で、放射能を避けるだけでなく、化学物質や、精製されて、ミネラルを
はぎとってしまった糖分、でんぷん質などの大量摂取を避け、反対に身体に
いいものを積極的に取り入れるようにすることで、私たちは総体として汚染と
立ち向かうことができます。栄養学を知ると、できることは無数にあることが
見えてきます。そうした点についてもみなさんと話し合いたいと思います。

以上の観点を踏まえて7日尾道の学習会にのぞみたいです。



9月8日大阪市

9月8日は日本カトリック差別人権委員会のお招きで、大阪梅田教会での
シンポジウムに参加します。シンポジストと演題はいかに紹介されています。

◎西山 祐子(避難者と支援者を結ぶ京都ネットワークみんなの手)
「いのちを守るために~福島から京都に自主避難して」
◎守田敏也(フリーライター)
「内部被曝と被爆者差別」
◎幸田和生(カトリック東京教区補佐司教)
「福島の思いに寄り添う」

それぞれがまず30分お話してから対話となりますが、僕はここで差別の問題と
いかに向かい合うのかについて発話したいと思っています。
というのは僕は内部被曝の恐ろしさをあちこちでお話しています。放射線は
DNAを損傷させますが、α線やβ線が主体となる内部被曝の場合、外部被曝よ
りも密集した被曝がおこるため、危険性が圧倒的に高くなる。そしてそのこと
は細胞分裂が活発な人にほど強く作用するので、子どもの方が危険であること
がわかります。

さらにお腹の中の赤ちゃんの場合、細胞分裂とともに細胞分化が激しく起こっ
ています。ある細胞が機能を別にする細胞に分かれていくことで、分かれる前
の細胞を幹細胞(かんさいぼう)と言いますが、この幹細胞が放射線でダメー
ジを受け、誤った修復が行われると、分化に支障をきたし、先天的な障がいの
発生へとつながることがあります。

だから放射線を避けるべきことを訴えているわけですが、しかしこのことから
放射線被曝を受けた人々を差別し、結婚を避けるなどの人間としての誤った
対応がでてきうるし、現に広島・長崎の被爆者は差別によっても本当に苦しめ
られてきました。このこと正面から向き合う必要があると僕は強く思います。

被曝は日本中に広がっています。したがって放射線によって障がいを持って生
まれてくる人々が増えるのも確実なことであり、そうであるならば、障がいを
持った人々が、よりよく生きれる社会、障がい者の尊厳が強く守られる社会を
作り出すムーブメントをより強めることを、私たちは今、みんなで強く腹に命
じるべきなのです。このことから目を背けたまま、放射線の害と真の意味で社
会的に立ち向かうことはできないのではとも思っています。

実はこうした点について、先日の山水人での中嶌哲演さんとの対談のときに
も話題にあげたのですが、今回はこのテーマを主題としてお話したいと思いま
す。僕なりに腹をくくって、このことに挑戦していこうと思います。


9月9日長野県高遠町

長野県高遠町の千代田湖キャンプ場で行われる「ちいさないのちの祭り」に
参加してお話します。タイトルは「東日本大震災以降の日本で生きるには」
ですが、放射線被曝と戦争の関連、関係についても話をして欲しいとのこと
なので、国家による加害と、国民・住民・市民の被害ということを念頭に
おきながら、福島原発事故と戦争とのつながり、そこで私たち市民に問われ
ることについてお話したいと思います。

私たちは今、大変な被曝状態の中にあって生きることを余儀なくされています。
日本の国土の大きな部分が被曝しており、そこにものすごい数の人々が大嘘の
もとでの安全宣言のもとに住まわされている現状の中にあっては、私たちの
多くが完全な意味での被爆ゼロの生活を行うことができない状態に陥ってい
ます。そのため今後、私たちをさまざまな健康被害が、またそれに起因する社
会問題が襲う可能性が強くあります。

重要なのはそのとき私たちはその被害をどれだけ国家のものと断定し、国家、
ないし責任企業に補償させることができるかですが、これまでの日本のあり方
野放しにしていたらその多くが泣き寝入りを強いられることになるのは確実で
す。被害の多くが、放射線起因とはみなされず、被害者は何の手当も受けられ
ず、むしろ社会的差別を被るだけという最悪の構図が私たちの国を襲う可能性
もあります。

そうならないためにはどうするのか。歴史を見直すこと。とくに第二次世界
大戦のときより未解決のままにきた多くの問題、とくに日本国家の指導者た
ちの戦争責任を問い、ほかならぬ私たち日本国民・住民の踏みにじられた
尊厳を回復していく必要があります。

戦争責任を問うとは、アジア侵略の責任を問うとともに、無謀な戦争に、国
民・住民を動員したことの責任を問うことです。この際、両者ともに、戦争に
動員された国民・住民自身が自己を問うモメントも必要です。しかし戦後の日
本社会はこのモメントが弱かった。そしてそのために、戦争犯罪人たちが生き
伸びてしまい、アジアの人々に対しても、日本の国民・住民に対しても、責任
をあいまいにしたまま逃れさせてきてしまったのです。そうしたことのつけが
今、私たちにのしかかってきているのでもあります。

その際、ぜひ多くのみなさんに気づいて欲しいのは、私たち日本の国民・住民
にとって一番の味方がアジアの被害者たちだということです。なぜか。この被
害者たちこそが日本の戦争責任者の犯罪を一番鋭く、訴えてきてくれたから
です。その被害者たちの声の中には、日本の国民・住民に対する、犯した罪の
告発も入っており、私たちはそれを真剣に受け止める必要があります。しかし
その先にあるのは、日本の民衆をも悲惨な戦争に狩りたてた戦争犯罪人たちを
告発し、裁くことなのです。それをアジアの被害者とともにできたとき、はじ
めて私たち日本の民衆もまた、虐げられた尊厳を回復させることができます。

僕の父は、戦争末期に、陸軍の船舶隊として四国の善通寺で訓練に明け暮れて
いました。広島に原爆が投下されたとき、父の部隊は救援のために呉軍港まで
進軍しました。そこから偵察隊を市内に出しましたが、「何もすることがない」
という報告があって、部隊はそれ以上、進まなかったそうです。その後、偵察
隊に入った方は二次被曝で亡くなりました。

父は呉にとどまったので、被曝はなかったと思っていたのですが、最近になっ
て内部被曝問題研の沢田昭二さんが、呉にもまた放射能が降下していた事実
を教えてくださいました。またその後に、より詳しい話を父より聴いていた兄
より、呉に残存していた部隊の隊員も次々倒れたことを聞かされました。父は
かなり用心していたようで、「被曝はしてないと思うが」と語っていたそうで
すが、その父は59歳の若さで、脳溢血に倒れました。戦後35年目でした。

一方、母は東京大空襲の爆心地にいました。東京深川の材木問屋の娘だった
母は、あの310大空襲の下を、本当に奇跡的に生き延びました。「火のたま
が機関車のように転がっていった」ことを目の当たりにした母が生き残ったの
は本当に偶然の賜物にほかなりません。そんな母は、「玉音放送」を、「ああ、
これで空襲が終わる。嬉しい」と聞いたそうです。

そんな父にも、母にも、国は何の補償もしていません。「国民すべてが苦しん
だのだから」という受忍論が強制されたのですが、残念なことに、長い間、
こうした国家の仕打ちに対する民衆からの追訴の声はおきませんでした。その
後、空襲に国民・住民をさらした政府の罪を問う運動が行われていますが、
僕はこうした日本民衆の尊厳が虐げられてきたことと、アジアへの侵略責任が
十分に明らかにされず、戦争犯罪人の処罰が不徹底に終わったことはセットに
なった問題だと思います。

人の足をふんづけてあまやることのできない人間は、自分の足を踏まれても、
怒りの声すらあげられないのです。

その意味で、この福島の事故に対する政府と東電の責任にどう向かい合うのか
ということは私たちの未来を占うとても大事な問題です。同時にこの問題は
放射線被曝の歴史の全てを明らかにしつつある問題であり、私たちは原爆投下
にさかのぼって、政府とアメリカによる被曝の強制の歴史を今こそ正す必要が
あります。そしてそのとき、侵略を告発するアジアの声は、私たちの味方なの
です。その意味でまさに福島は、広島、長崎と、さらにはアジアと大きくつな
がっています。そうしたことを僕は9日にお話したいと思います。

その意味でこの3回のお話は僕にとって、ずっと考えてきたものではあるけれ
ども、まだそれほどまとまって話してきていない内容であり、チャレンジング
なものになります。いずれもできるだけ事後にきちんとご報告をしたいと
思いますが、お近くの方はどうかお越しくださり、ご意見をお聞かせください。
みんなで一緒に考え、前に進んでいきたいと思います。


***

9月7日 

広島県尾道市にて学習会を主催

「食・給食の安全と放射能測定」
午後6時30分より、尾道市人権文化センター・1階和室にて
参加費無料

主催は「フクシマから考える一歩の会」
お問い合わせ: 090-2002-8667(小林)

***

9月8日

大阪市にてシンポジウム参加

●シンポジウム「福音と差別」
テーマ いのち・原発・差別
日時 2012年9月8日(土)14:00~17:00
会場 サクラファミリア(大阪教区・大阪梅田教会)電話 06-6225-8872
シンポジスト 
◎西山 祐子(避難者と支援者を結ぶ京都ネットワークみんなの手)
「いのちを守るために~福島から京都に自主避難して」
◎守田敏也(フリーライター)
「内部被曝と被爆者差別」
◎幸田和生(カトリック東京教区補佐司教)
「福島の思いに寄り添う」
 主 催 日本カトリック差別人権委員会
http://www5b.biglobe.ne.jp/~catburak/news.html

***

9月9日

長野県高遠町の「小さな命の祭り」で講演
「東日本大震災以降の日本で生きるには」

小さな命の祭り

2012年9月8、9、10、11(土日月火)
入場料 1日500円(20歳以上)
千代田湖キャンプ場
長野県下伊那郡高遠町藤澤

問い合わせ:
0265-39-2350 田村須満子
0265-94-1132盛(もり)
http://lovely-m.jugem.jp/?eid=149
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明日に向けて(538)チェルノブイリ―大惨事が人びとと環境におよぼした影響(上)

2012年09月03日 17時00分00秒 | 明日に向けて(501)~(600)
守田です。(20120903 17:00)

1日に山水人に参加し、小浜の明通寺住職中嶌哲演さんと対談させていただ
きました。中嶌さんの若狭原発今昔物語に聞き惚れてしまいました。このこ
とはまた報告を書きたいです。またそのあと幾つかのライブも聴いてきまし
た。素晴らしいパフォーマンスが多かったですが、とくに夜になって行われ
た、さこよさんのライブがすごかった。講演させていただいて、ライブもき
けてしまって、山水人への参加はいつもとてもお得です。

アーティストのPIKAさん、マーリンさんともお会いして色々とお話ができま
した。非常に意義深い時間を過ごせました。みなさん、山水人にはいろいろ
な出会いがあります。まだまだ宴は続くのでどうぞお越しください。なお
本日9月3日の夕方からは、映画監督の鎌仲ひとみさんが来られます。昨年、
トークでご一緒し、なぜか?気功話で盛り上がってしまったのですが、僕も
これから鎌仲さんにお会いするためにまた山にあがろうと思います!


さて本日の話題に移りたいと思います。今回、記事のタイトルに使ったのは、
2009年にアメリカで出版された書籍の日本語訳の題名です。英語のタイトル
は、“Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the
Environment”です。旧ソ連でゴルバチョフの科学顧問を務めたロシアの科学
者アレクセイ・ヤブロコフ博士を中心とする研究グループがまとめ、ニュー
ヨークアカデミーオブサイエンスから出版されました。目下、日本語訳が進
行中で、僕の友人や、内部被曝問題研で知り合ったお仲間も参加しています。
訳ができたら、岩波書店から刊行されることになっています。

前々からこの書物のことを詳しく紹介したいと思っていました。なぜならこの
中でチェルノブイリの犠牲者(1986年から2004年の推計で今後亡くなりうる数
も含めたもの)が98万5千人になることが明らかにされているからです。衝撃
的な数字です。

これに対して、2006年にIAEAなどが中心になって行ったチェルノブイリ・フォ
ーラムで出されたのは、今後、死亡する数も含めて4000人というとんでもなく
過小評価された数字でした。(これまでの死者60人、今後のがん死者3940人)
もともとこれはIAEAが2005年に発表した数字で、轟々たる抗議がなされ、IAEA
と密接な関係にあるWHOが数ヵ月後に9000人と訂正を行ったいわくつきのもの
でした。

しかしWHOの修正でいよいよその信ぴょう性が危ぶまれるなか、グリーンピー
スが組織した国際的な調査で、ウクライナとベラルーシの合計で14万人が死亡
という発表が同じく2006年になされました。ただしグリーンピースは依然、調
査の継続が必要であり、結論づけるのは早計だとのコメントも付していました。

この間の詳しい経緯を、京都大学の今中哲二さんが書かれているものがあるの
で紹介しておきます。
「チェルノブイリ事故による死者の数」今中哲二(初稿2006年8月)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/tyt2004/imanaka-2.pdf

この中で今中さん自身は、推計が非常に難しいことを前置きした上で、「私の
勘では、、最終的な死者の数は10 万人から20 万人くらい、そのうち半分が放
射線被曝によるもので、残りは事故の間接的な影響」と述べています。


ところでIAEAなどと違い、信頼できる組織であるグリーンピースが推計した死
者数が14万人であったことに対し、この2009年の報告が98万5千人と非常に大
きな差異が出てきている理由は、主に扱った原典の違いにあるようです。とい
うのは欧米の科学者が集って行ったグリーンピースの調査に対し、この調査で
は、旧ソ連の多数の科学者の文献が扱われました。その多くがロシア語、ウク
ライナ語、ベラルーシ語で書かれていたため、英語圏の科学者には読めないも
のが多かったのです。しかしその報告こそ、被災者に最も近くで寄り添い、健
康被害とともに向き合ってきた中で書かれたものであって、被害の実相をより
リアルに記したものでした。

そうした文献が15万点以上あると言われ、その中からこの調査では5000点の
文献が使われているそうです。その中の多くのものが英語圏、西側には初めて
紹介されるもので、そのために被害の事実がより克明に明らかにされることに
なったのでした。

なお現在、進行中の日本語訳は、完成した章から「暫定版」としてネットに
アップされています。以下のページから読むことができます。またここから
英語の原点を全文ダウンロードすることもできます。

チェルノブイリ被害実態レポート翻訳プロジェクト
http://chernobyl25.blogspot.jp/

ちなみに、98万5千人と推定されるこの死者数に対し、日本政府はなんと首相
官邸ホームページにとんでもない数字を発表しています。問題のものは、同
HP内の「東電福島原発・放射能関連情報」と題されたページの中の「原子力
災害専門家グループ」にある「チェルノブイリ事故との比較」という文書で
す。「平成23年4月14日」付で出されています。全体として短い文書ですが、
死亡に関して書かれている部分を抜粋します。

「1原発内で被ばくした方 *チェルノブイリでは、134名の急性放射線障害
が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が
亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。」

「2事故後、清掃作業に従事した方 *チェルノブイリでは、24万人の被ばく
線量は平均100ミリシーベルトで、健康に影響はなかった。」

「3周辺住民 チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、
低線量汚染地の500万人は10~20ミリシーベルトの被ばく線量と計算されているが、
健康には影響は認められない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を
無制限に飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡くなっ
ている。」
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g3.html


あまりにひどい!絶句してしまうような大うそです。IAEAですら今後の死者
をあわせた犠牲者数は4000人になると発表していたのに、今後予想される死者
数を意図的に除外し、死者数を、原発内にいた47と、子どもたちの15人に限定
してしまっている。合計すると62人ですが、IAEA報告のさらに上をいく大ウソ
です。

ちなみにこの大ウソは次の二人の名のもとに発表されています。

長瀧 重信 長崎大学名誉教授
(元(財)放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名誉会長)
佐々木 康人 (社)日本アイソトープ協会 常務理事
(前(独) 放射線医学総合研究所 理事長、前国際放射線防護委員会(ICRP)
主委員会委員)

このお二人の名と、ここに出てくる組織には十分に注意するようにしましょう!
けして騙されてはいけません。

続く



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明日に向けて(537)今後の講演予定について

2012年09月02日 23時00分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20120912 23:00)

これまで僕は講演の依頼を受けると、少しでも丁寧にその企画を案内しようと
コメントなどを可能な限り付してここにアップしてきました。しかしそのため
多くの案内が直前になってしまったり、見る側にとってわかりにくくなってい
ました。それである方から、一覧を出してくれないかと言われて、どうして
そんな単純なことをこれまで思いつかなかったのだろうと反省しました・・・。

というわけで、ブログページのカテゴリー欄に、「講演予定について」という
一覧表を常時載せておくことにします。メール配信している方には届きません
が、講演予定一覧を見たい場合は、ぜひブログを開いて左側カテゴリーから
「講演予定一覧」をご覧ください。今回もさっそく記していきます。期日が
近づいたら、それぞれ詳しい案内を再掲します。

*********

10月7日

午前中、同志社大学の寮で防災訓練に際し、
原発事故避難の心得を講演

クローズド

***

10月8日

京都市ひとまち交流館にて岩手県大槌町訪問報告会

時午前9時15分~午前10時30分
場所:京都ひとまち交流会館第四会議室
申込:http://ws.formzu.net/fgen/S4010947/

主催
京都OHANAプロジェクト

***

10月20日

京都市左京区「茶山のさと」にて講演
午後2時より

主催 旬の会

***

10月21日

京都市室町学区にて講演

午後1時半ごろより、ソーシャルキッチンにて

***

10月27日

大阪府島本町にて講演

午後1時から3時
島本町ふれあいセンター1F「健康教育指導室」

主催 ぴあ・ネット/100万年の会

***

10月29日

奈良県奈良市にて講演

午前10時から12時
近鉄郡山駅すぐ 三の丸会館(予定)

主催 生活クラブ生協・奈良

***

11月11日

京都市醍醐にて講演

午後(予定)詳細未定

主催 醍醐母親大会

***

11月13日

同志社大学社会福祉学科の授業にて講演

10時45分から12時15分

詳細未定

***

11月18日

広島県広島市にて講演

午後2時から

世界平和記念聖堂の多目的ホールにて。広島市中区幟町4-42
主催:広島地区平和推進チーム・カトリック正義と平和広島協議会

***

11月25日

京都市内でトーク

ベジタリアンフェスティバルにてトーク
午前10時から11時の間(詳細未定)

京都府宮津市にて講演
午後2時から

主催
宮津市城北自治会
宮津市城内自治会

***

12月10日

京都市右京区にて講演

フライングタッチマンとのジョイント企画
午後6時頃より 佛教大学にて

詳細未定

****

2013年1月26日

兵庫県加古川市にて講演

午後より

主催
脱原発はりまアクション

 







 

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明日に向けて(536)セバスチャン・プフルークバイル博士が語る放射能の危機(in大阪)

2012年09月01日 07時30分00秒 | 明日に向けて(501)~(600)
守田です。(20120901 07:30)

昨日、大阪に再びセバスチャン・プフルークバイルさんが来られると聞いて、
表敬訪問がてら、講演を聴きにいきました。大阪と京都で震災遺物広域処理
に反対して大活躍している荒木祐子さんにお誘いを受けての参加でした。

集会名称は「未来をつくるフォーラム~原発事故避難者と私たち~」で、
「避難者と未来をつくる会」の主催。午前・午後で2部構成の企画で午前中の
最後に、プフルークバイル博士に、実行委の増山麗奈さんと藤波心さんが
質問をし、博士が答えてくださるセッションが行われました。

午後にもアメリカのパターソン医師、ドイツのジーデントップフ博士が講演
され、ずいぶん盛りだくさんの企画で、内容的にいろいろなことが学べまし
た。今後、ビデオが作成されるそうですので、興味のある方は、「避難者と
未来をつくる会」にご連絡ください。僕も一つ申し込んできました。
garekikarahito@yahoo.co.jp

盛り沢山な集会の上に、会場にいろいろなブースが作られていました。放射
線防護と、避難者との結合にむけたいろいろな知恵と行動がここに集まって
きていることが感じられました。素晴らしい企画でした。担われたみなさま
に感謝です。


さてプフルークバイルさんは今回もお元気に来日されていました。会場で挨
拶し、ともに広島平和祈念講演と、放射線影響研究所を訪れた時の写真をお
渡ししました。大変、喜んでくださいました。またこの間、放影研が、内部
被曝の研究をしてこなかったがゆえに、福島の事態に役立てるものがないと
告白し、新たに内部被曝の研究を始めると言い出していることもお伝えしま
した。プフルークバイルさんは「それは実に興味深いことだ」と目を鋭く光
らせていました。

荒木さんによるとプフルークバイルさんは、前日に大阪の人々を主体に行わ
れた、震災遺物処理の受け入れをめぐる大阪市との交渉現場にも参加してく
ださったそうです。この現場、大阪市の対応があまりにひどく、荒れ模様に
なったとのこと。最後は大阪府警の機動隊が出てきて、かなりてひどい排除
を行ったとのことですが、プフルークバイルさんも、一連の行動に一生懸命
になって参加してくださったそうです。日本の市民と一緒になって、生き生
きと行動している博士の姿が眼に浮かぶようでした。

午前中のセッションでも、そうした余韻を身にまといながら、闊達な答弁が
行われました。これをノートテイクしたのでみなさんにご提供します。ただ
しその場での速記なので、必ずしも通訳された文言通りではありません。
守田がこう聞き取ったと受け取ってください。なお質問は増山さんと藤波さ
んが交互に行いましたが、ここではともに質問のQで示してあります。

最後のQだけは会場からです。震災遺物広域処理についてでしたが、「これ
についてはぜひ意見をいいたい」と前おきしての応答がなされ、デモのこと
なども語られました。行動の人、プフールクバイルさんの横顔が垣間見える
お答えでした。

以下、速記録をお読みください。

**************

「関西を命のセイフティゾーンにするために」
セバスチャン・プフルークバイル博士×増山麗奈×藤波心


Q チェルノブイリのときドイツはどういう状態だったのか

P 事故があったとき、ドイツはまだ東西に分裂していた。事故について、東
ドイツでは語られなかったが、西ドイツでは議論がなされていた。しかし東
ドイツでも西ドイツののテレビをみれた。私たちも今の日本と同じように、
子どもたちは外で遊ばせていいのか、何を食べさせていいのか悩んだ。私は
当時、小さな子どもが4人にいて本当に腹がたった。今、ここで同じような
ことがおきているので、ここに参加出来て苦しみを共有できることがとても
嬉しい。


Q 当時のヨーロッパではきちんとした報道はなされたのだろうか

P 今はウクライナである当時のソ連は、長い間情報を隠そうとしていた。
最初の情報はスウェーデンからきた。放射線値が高まり、スウェーデンの原
発で何かがあるかと思われたが、何も起こっていなかった。それで観測され
た核種を調べて、チェルノブイリからきたことが分かった。

東ドイツはソ連と友好関係にあり、ソ連よりもさらに報道が少なかった。こ
れに対して西ドイツは政府も州政府も、「西ドイツはこんなに遠いいから問
題はない」と発表した。ソ連の原発は古いけれどもドイツのは新しくてしっ
かり管理されているから大丈夫だといっていた。

ところが大学の教授などが出てきて、原発の危険な構造を話すようになり、
今、ここで行っているようなイベントがなされ、教授を囲んで人々がα線や
β線とは何かと学び始めた。幼い子どものいる家族にはとても重要な内容だ
った。さらに西ドイツでは市民測定所がどんどんできていった。市民にとっ
ては自分たちで測ったものが信じられる。政府のものは信じられないとなっ
た。日本でも市民測定所をどんどん作ることが重要だ。それで食料全体をコ
ントロールできるわけではないが、危険をつかむことができる。だから測定
所を立ち上げて測ってくれる人を、ほかの市民がサポートすることだ。食料
の汚染を知ることが非常に重要になってくる。

ドイツでは事故からしばらく時間が経ったら興奮状態がおさまっていった。
それが福島の事故で再度盛り上がった。チェルノブイリ事故を経験した市民
が、当時のことを鮮明に思い出した。このときメルケル首相は国民の感情の
中で何がおこっているか迅速に把握して、これに対応しないと次の選挙で勝
てないと判断した。それですぐに脱原発を発表した。国民の中にチェルノブ
イリの思い出が一気に盛り上がったことが背景だ。この点で日本政府が国民
・住民の中で何が起こっているのかを察知してくれることをのぞんでいる。
それが民主主義だと思う。


Q 一番危険な食べ物は何か

P 私より、みなさんの方がよりよく知っていると思うが、日本の人たちは魚
をたくさん食べる。貝やワカメも食べる。そのため海産物の汚染を一番気に
している。太平洋に拡散された放射能は非常に大量だ。完全な情報はない。
海の生物にどのように拡散していくのかの研究もあまりない。地上の拡散に
ついては、空気へ拡散した放射能が草におちて牛が食べてミルクにはいると
いふうに連鎖が単純だ。その過程で濃縮されていく。牛肉を食べたりミルク
を飲むと、空間線量にあった放射能よりも大量の放射能を取り込むことにな
ることがわかっている。

水の中では連鎖の段階が細かく分かれいる。プランクトン、小さい魚、中ぐ
らいの魚と連鎖が続き、最後に人間が食べる魚に辿り着く。水の中の汚染と、
最後に食べる魚の中の汚染とはかなり大きな開きができる可能性がある。
貝は水中から栄養素をとっている。放射能をどんどん取り込んでいく。今ま
での研究で、貝の中の放射能がどこから来たかを調べるとずいぶん遠くから
来ることが分かっている。今、東の沿岸からどんどん南に汚染が降りてきて
いる。それが太平洋全体に拡散するのにまだ数年かかるだろうが、さらに南
太平洋まで拡散していくだろう。

この場合、たとえ魚の中にある放射能の濃度が低くても、健康に与える影響
は過小評価できない。なぜか、たくさんの人が食べることで被害が拡大する
からだ。一人の人の健康被害はみえにくいが、1000万人の日本人がみんな少
しずつ食べると大きな問題が出てくる。


Q 「食べて応援」という考えはどう思うか

P 狂気の沙汰だ。日本の農水大臣が、キャンペンガールと一緒に東のものを
もって食べようと呼びかけている映像をみたが、議論の余地もないほどばか
ばかしいキャンペーンだ。そういうことを政府がやっているということ、そ
の事実をみるだけでも、みなさんが日々口にしている食料が汚染されていな
いはずがない。もっとばかげていると思ったのは、南相馬でマラソン大会を
したときいたときだ。もっとましなことはできないかのと思った。


Q 肥料もノーチェックで流通している。規制もない。土壌汚染も続いている。
これらをどう思うか。

P もちろんチェックしなければいけない。日々の日常の中で、まさか汚染さ
れていないと思うものが汚染されていることがある。日本で肥料がどのよう
に使用されているかを知らないが、ヨーロッパでは農業で使われてきた肥料
からウランが検出された。何十年も普通に使われていたものだ。最近になっ
てはじめて、土壌のウラン含有率が高くなり、地下水にまで浸透し、水道水
に出ていることに気づき、問題にするようになった。ウランは猛毒だ。飲料
水も注意しなくてはいけない。トリチウムなども含まれてくる。ヨーロッパ
ではようやく今になって、飲料水の含有率も食料とおなじぐらい重要だと分
かるようになった。それで水道局で働いている人たちも、被曝する環境にい
る作業員だとようやくわかってきた。

直接の事故の原因による被曝だけでなく、社会全体のすべての領域で被曝を
考えなくてはいけなくなっている。残念ながら私たちの健康を守るべき医学
の人たちが被曝を強制している面もある。CTをとったり、治療に放射性質を
使ったり。医師が放射線に関する知識の啓蒙をしないのは、医療で被曝させ
ていることを知っているからだ。これも議論に乗せなくてはいけない。


Q ドイツと比べてみて今の日本は?どちらのほうが深刻か?

P チェルノブイリのあとの私たちは何も知らない無知な状態だった。何年も
経ってから情報が届くようになった。今になって、チェルノブイリのあとに
どういうことが起こったかを大変心配しはじめている。はじめは西ヨーロッ
パでは健康被害はないといわれていた。今になって1000キロも離れている西
ヨーロッパで健康被害があることがわかった。死産、1歳以下での死亡、障
がい、ダウン障児の出生が増えて、甲状腺疾患を持つこども、大人が多くな
った。子どもの白血病も増えた。生まれてくる男の子たちと女の子たちの比
率がかわってきている。普通に生活をしているとわかりにくく、ぱっとわか
る数字ではないが、これらはがんになる確率よりも高くおこってきている。

男の子と女の子が生まれてくる確率の変化には、どんな影響があるのとしか
思わないかもしれないが、西ヨーロッパやチェルノブイリ全体をすべて足す
と、女の子たちが100万人ぐらい生まれなかったことがわかっている。どう
して女の子が生まれなくなったのかはきちんと議論されなければいけない問
題だ。生まれてこなかった子達はもっといる。その責任は原子力産業が負っ
ているという方向に、議論を持っていかなくてはいけない。

西ヨーロッパでも、比率のずれが起こったということから福島でも起こり始
めていると思う。チェルノブイリのあとにこういう状況がかなり早い時点で
はじまっていたと思う。事故のあとの数年間の間は、注意して観測しようと
した人がいなかっただけで、今になって直後から起こったことが分かってい
るから、日本でも調べたほうがよいと思う。


Q 福島で蝶の異変が増えている。今後、私たちの遺伝子にどう影響していく
のか。健康被害を調べるときに、どのようなデータを調べておくといいか

P ドイツの今の子どもの出生の話からいくと、子どものがんの統計の数字は
非常に大事。医師がそれを支援してくれてきちんと統計をとればそれでいろ
いろなことができる。生まれたときに障がいを持つ子どもの統計も必要。長
年にわたってコンスタントにする必要があり、それで変化がわかる。

しかしそういう統計をとっている国は多くない。政府が困るからだ。統計を
とらないことによって問題が発覚しないのが政府の意図だ。なので医師たち
の間で情報を交換できるシステムを作るといい。例としてカザフスタンの核
兵器のテストをしている地域と、チェルノブイリの二つの地域、両方の調査
をした。チェルノブイリで学校にいくと赤十字の車があり、どうしたのかと
聞いたら、緊急のことが起こったわけではないが、子どもたちがときどき止
めようがないぐらい鼻血を出すことがあるのでいてもらう、意識を失って倒
れる子どもがいて生命の危機になったらいけないのでといった。ドイツに帰
って、放射線の同僚にその話をすると、子どもが鼻血を出すのは普通だと笑
われた。

カザフでは、ちょうど核兵器についての議論がなされはじめたときだった。
それで実験が始まった最初の何年間かの資料が手に入った。50年代の初めの
ものだ。そこに書いてあったのは子どもの鼻血だった。ロシア人はそこで実
験をした。わざとそこでして、人々にどういう症状がでるかを観測して、記
録をとっていた。子どもの鼻血が一番最初の記録として書かれていた。扁桃
腺のはれも確認された。ドイツで放射線医学の同僚に話すとまた笑われた。

カザフの子どもとベラルーシの子どもと、医師ががんばって治療したがなか
なか治らない。視力の低下もおこった。放射線医学の教科書にはどこにも書
いていない。同じような症状が出ていることを日本でも聞いている。

鼻血では死なないかもしれないが、被曝している一つの証明でもある。なぜ
かというと、チェルノブイリとカザフと福島を結ぶのが核だからだ。医師は
笑い飛ばそうとする。本当だったら彼らはすぐに調査に乗り出して、住民た
ちを助ける行動にでなければいけなかった。

私は過去何ヶ月かで、日本で素晴らしい医師たちにあった。しかし彼らから
聞くと、学会の態度は非常に控えめで、あまり意見を出そうとしない。被曝
の診察を受けようとした人を家に押し返していると聞いた。山下教授のいっ
ていることは本当にひどい。福島の人の恐怖をおさえるために送り込まれた。
しかし理性的な医師たちは彼はとても信じられないと言っている。ドイツで
も同じことが起こった。こういう状況はなるべく早く改善しなければいけな
い。


Q この事故は日本の技術で収束させることができるのだろうか

P 日本では事故がまだ終わってないと議論されている。東電も政府もコント
ロールできない。お手上げ状態だ。一番の問題は、使用済み燃料が大量に残
っていて、廃墟となった原発の建物がみると、燃料プールはその高いところ
にある。もし大きな地震がまたおきて建物が崩壊すれば、水が漏れて、かっ
てに溶け出して、誰もコントロールできなくなる。チェルノブイリと比較に
ならないほどの放射能が拡散する。世界にとっても大きな危機になる。
東京は避難されなけばならないという報告ができているが、全部避難させる
ことなどできない。本当に大変なことだ。

燃料棒を取り出そうとしているが何年もかかるといわれている。長くかかり
すぎることを危惧している。なのでまだ収束していない。そして事故による
健康被害も年月がたつにつれてどんどん深刻になっていく。事故は収束して
いない。

燃料棒は冷やさないといけない。だから取り出さなければいけない。しかし
どうすればいいのかあまりわかっていない。クレーンでつまんで出すという
試みがあるが、使用済みでないものでテストがおこなわれている。映像をみ
たが、クレーンで取り出す練習をしていたが、最後に手で燃料棒を持たねば
ならなかった。使用済み燃料棒では即座に死んでしまう。どうやって取り出
すのかまだよく分かってないと思う。もし取り出す最中に壊れたら、誰も近
寄れないくらいの放射能の拡散が瞬時に起こる。どうやって、誰がやるかが
本当に問題だ。


Q 廃棄物をもってくることについてどう思うか

P これについてはぜひ意見をいいたい。放射能に汚染された廃棄物を拡散し
て燃やすということは、放射性防護の観点からしても人道上の観点からして
もありえないことだ。考えられないばかげた考えだ。それによって事故後に
ある程度汚染が低かった地域に、わざわざ汚染物質をもってきて拡散するこ
とになる。燃やすことによって、物質についていた放射能は拡散してしまう。
煙突からでたり灰に出たりする。大阪では海面に出たりする。そんなことは
してはいけない。がんばって抵抗して欲しい。

もしも放射能を扱う研究所で机の上にちょっとこぼれたりしたら、どうすれ
ばいいかみんなわかっていて、とりあえずこぼれたものをまとめて広がらな
いようにする。がれきでは反対のことをしている。放射能は希釈をしてもい
けない。それは研究所では絶対してはいけないといわれている。ところが汚
染されたものを、されてないものと混ぜて燃やすといっている。それによっ
て濃度を低くしようとしているが、それはいろいろな理由からやってはいけ
ないことだ。

ロンドン条約がある。それまで人々は有害な物質を船で運んで海に投棄して
いた。放射能を含む廃棄物も含まれていた。閉じた状態で投棄したはといえ、
今、潜ってみてみると容器のフタがあいて拡散しているのがわかる。60年代
にそれをやめるとなって日本もこの条約を批准もしている。

日本はにもかかわらず、海に放射能汚染水を流した。今度は灰を海に投棄す
る。60年代の前半に戻ったような行動だ。それに抗議してデモをするのは正
しい行動だ。質問ありがとう。

以上
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