明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2046)本当に知りたいことが書かれていない!-放射線被曝のウソを見破るスキルをつけよう 『放射線副読本すっきり読み解きBOOK』を読む会に

2021年06月11日 16時30分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210611 16:30)

なぜかスッキリしない読後感の正体は?

各地で色々な形で行っていただいている『放射線副読本すっきり読み解きBOOK』を読む会、こんどは7月1日(木)午前中にオンラインで行います。
主催はエル・コープ脱原発委員会のみなさん。実は中心メンバーの方とは一度、クローズドで読み会を行っています。
申し込み先を末尾に貼り付けます。QRコードもあるのでぜひお申し込みください。チラシの文言が面白く、しかもかなりポイントをつかんで書かれているので、以下にご紹介します。

***

「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」を読んでみよう。
昔々、あるところに原発がありました。事故はあり得ない!!といわれていたその原発で、未曽有の大事故が起こりました。でも、それはもう昔の話・・・?
「事故はもう過去のもの」と感じている人が少なからずいる中、こうした「風化」に拍車をかけるように、文科省から放射線副読本が配布されました。
「見たことあるわ~」という方もいるでしょう。
政府発行の副読本やし、間違ったことは書いてないはず・・・。なのに・・・なぜかすっきりしない読後感。
なぜなら・・・・・本当に知りたいことが書かれてない?!

そう思った3人のお母さんたちは放射能汚染に詳しいジャーナリストの守田敏也さんと放射線副読本を読み解くことを始めました。
そして完成したのが「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」です。
私たちも一緒に読み解きBOOKを開いて読み解いていきましょう。
読み解くなかで、隠された情報の読み方も学べるといいですね。

*****

うーん。まさしくその通りなのだなあ。一見間違ったことは言ってないのだけれど、大事なことを書かないでスル―する。それで被曝に危険性がないかのように印象操作していく。それが騙しのテクニックなのです。
反対に言えば、何がどう隠されているのか。また印象操作をひっくり返してみるとそこには何があるのか、丹念に見ていくと、放射線被曝の危険性がよく見えてきます。
このBOOKが隠そうとしているものこそ、多くの人々が知るべき真実です。


被曝被害隠しが原子力マフィアの常とう手段

この大事なことを隠すテクニック。実はこのBOOKを作った人々が発案したものではありません。
もっと前から、原爆を製造し、広島・長崎に投下して大量の人々を本当に酷く殺し、さらに各地の核実験で多くの人々を被曝させ続けてきた原子力マフィアが行ってきたことです。
その顕著な例が、原爆が製造されたアメリカ・ニューメキシコ州にある、核のミュージアムの展示です。

例えばアルバカーキ―の「ニュークリア・サイエンス・ミュージアム」では、入り口に「パイオニア・オブ・ザ・アトム」なんて書いてレントゲン博士を始め、「核の偉人」たちの肖像が並べられています。
「放射線副読本」も同じで、最初にレントゲン博士が出てきますが、しかし初期の放射線の発見者は、ものすごい被曝をしてしまい、多くがガンになるなど大変な目にあっているのですが一切書かれていない。隠されているのです。(以下写真はすべてニューメキシコで守田が撮影)

原爆製造の地、ロスアラモスにあるブラッドバリー・ミュージアムも同じ。広島・長崎に投下された原爆の模型を置き、投下後の広島・長崎の写真が展示されているのですが、被爆者の姿が一枚もないのです。

写されているのは、被爆からかなり経って被災がれきなどが道のわきに片づけられた町の姿や焼けた三輪車などのみ。人々がどんな酷い目にあったのか、実情を示すものがすべて隠されている。


アメリカでは長い間、「原爆こそが戦争を終わらせ、たくさんの市民と軍人の命を救った」というウソの宣伝が国によって続けられてきましたが、それは被爆者隠しと一体のものとして行われ続けたのです。

しかしだからこそ真実を明らかにすることこそが騙しを打ち破る強力な手段だということが分かります。被爆の本当の姿を示せば容易にひっくり返せるようなウソでしかないのです。


すっきり読み解きBOOKで賢くなろう!

その点で「放射線副読本」は、原子力マフィアが繰り返してきた「被曝のウソ」の典型例が網羅されています。
このため「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」で読み解くと、放射線被曝についての核心的なことが、比較的容易につかめます。
このことがこの間、あちこちで何度もこのBOOKの読み会が行われている理由です。

同時にみんなで気持ちを込めて、音読することも大きな効果をもたらします。
もともとそれを考えたわけではないのですが、各地でやってみたら、音読が面白いという。実際の会話のように気持ちを込めて読みあげると、文章の心身への響き方が違ってくるのです。
これはもう体感してもらわなければ分からない領域なので、ぜひご参加を呼びかけたいです。

とまあ、そんな話を小耳にはさみながらも、なかなか参加できなかったあなた。ぜひ7月1日午前10時からの回にご参加ください。これまで参加された方もぜひぜひ。
毎回、被曝の問題でアップデートされたことの解説も付け加えているので、前には得られなかった新しい何かを必ずつかめると思います。
しかも今回は、なんとエル・コープさんの厚意で無料での開催!太っ腹。このチャンスを逃す手はないですよ~~。ぜひご参加ください。お待ちしてま~す。


お申し込みは以下に

お申し込み https://bit.ly/3egbg7p
お問い合わせ エル・コープ西センター 075-934-7371(奥田)
参加費 無料(読み解きBOOKを購入する場合は500円)
申し込み締め切りが6月14日、もうすぐです!いますぐお申し込みを。

#放射線副読本 #すっきり読み解きBOOK #エル・コ―プ #脱原発委員会 #原子力マフィア #被曝のウソ見抜く

*****

連載2000回越えに際してカンパを訴えます。「よく2000回まで頑張った。さらに頑張れ」との思いでカンパして下さるととても嬉しいです。振込先など記しておきます。

振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
Paypalからもカンパができます。自由に金額設定できます。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500

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明日に向けて(2042)伊方原発をみんなで止めよう!-伊方原発をとめる会第11回定期総会でお話してきました!

2021年06月06日 23時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210606 23:00)

松山市でお話してきました

5月30日に、松山市で開催された「伊方原発をとめる会第11回定期総会」に参加し、記念講演としてお話させていただきました。
この時の報告が、同会のFacebookページに掲載されたので、写真ともどもお借りして、ご報告させていただきたいと思います。

場所は松山市男女共同参画推進センター (愛称はコムズ)の大会議室。
はっきりとお聞きしてはいませんが80~100名ぐらいのご参加だったでしょうか。コロナ禍の前は200人が集まっていたとか。まずその多さに感動しました。

講演は・・・とても気持ちよくさせていただくことができました。レスポンスがとても良かったためでもあります。
この後、総会でしたが、僕は頼まれて、講演を聴いてくれた愛媛大学の学生さん3人に別室で質問を受けてお答えしていました。質問後にすぐに総会に参加するつもりだったのですが、学生さんたちがとても熱心だったので「これはじっくりお答えせねばな」と思いなおし、時間をとらせていただきました。
その後、総会の後半に合流。何はともあれみなさんの熱気をしっかりと受け取ることができました。

定期総会、全体として大成功だったのだと思います。
今後も、みなさんと一緒に、伊方原発を止めるため、動かさないために全力を尽くします。
なお松山市訪問と講演にあたって、同会のみなさま、とくに松浦秀人さんにたいへんお世話になりました。心よりお礼申し上げます。

以下、記念講演・総会・歌の紹介を、「伊方原発をとめる会」のタイムラインからの転載で行います。
なお写真も同会のみなさん撮影のものを拝借します。

*****

記念講演「原発からの命の守り方」 守田敏也さん(フリーライター、丹波篠山市原子力災害対策検討委員会委員、京都「被爆二世三世の会」世話人、市民環境研究所理事)

守田敏也さんの講演は、二人の対照的な人物を引き合いに出して始まりました。
先ずは、田中俊一・元原子力規制委員会委員長の「新規制基準に合格したからと言って『安全とは言わない』」という無責任極まりない「いなおり発言」を紹介しました。
続いてその対極にある樋口英明・元福井地裁裁判長の「原発の耐震性はハウスメーカーの建てた家よりはるかに低くて危ない!だから私は(大飯原発を)止めた」との見解を提示しました。
重大事故を前提としている新規制基準では困ります
その上で、伊方原発が抱える危険性、すなわち、南海トラフ地震の危機、活断層帯という立地、一次冷却水ポンプ(=原発のアキレス腱)の故障問題、MOX燃料使用の問題、ずさんな避難計画等を列挙し、万が一の原発災害に備えて、「避難訓練」と、「とっとと逃げるシミュレーションを重ねておくこと」が大事だと熱弁をふるわれました。
また、広島・長崎への原爆投下時に被爆影響が恣意的に隠された事実、アメリカ・ネバダ州やマーシャル諸島での核実験の被爆実態を通して、原爆と原発による被ばくが歴史的にもつながっている事実を語られました。
盛りだくさんにして説得力のある講演でした。
「請戸小 2019 遺したものは」杉山洋さん(松山市在住)による油絵を展示しました





再稼働阻止に向けて奮闘を

総会は、幹事の来島頼子さんと大川耕三さんのお二人が議長に選出され議事席に就任。
来島議長のもとで、「弁護団からの報告」として中川創太弁護団事務局長から、伊方原発運転差止訴訟松山地裁での口頭弁論についての解説がありました。
特に第25回で提出された(中野宏典弁護士による)準備書面(86)、火山についての反論の中で、東大話法(欺瞞的で傍観者的な話法)という言葉を使って、電力会社や政府が推し進める原発再稼働の方針がいかに欺瞞に満ちたものであるか、徹底的に暴いているので、目を通してほしい(HPの【運転差止タブ】に収納しています)。
また、次回7月15日の第26回口頭弁論では、原発の公益性と被害論について四電側への反論を予定しているとのこと。
また、伊方裁判も10年を経て、その間、伊方原発では、1号機も2号機も廃炉に追い込み、残るは3号機だけとなり、各地の原発を巡る重要な判決もあり、いよいよ最終局面に入っているとの認識が述べられました。

次に、和田宰事務局次長から「経過報告」、奥田恭子会計担当から決算報告、高下博行さんから会計監査報告があり、若干の質疑応答を経て全て承認されました。
ここで議長が交代し、大川議長のもと、「活動方針、予算、役員の提案」が松浦秀人事務局次長により提案されました。質疑応答の中で、「脱原発の機運を盛り上げるようなグッズの販売を事務局で考えてもらえないか」との声があり、事務局で相談することになりました。
また会計担当から「新事務所への移転に伴い、電気は新電力の大一ガスと契約した」との補足報告もありました。このあと、すべての議案が採択されました。
新年度役員の須藤昭男事務局長と3人の事務局次長(松浦・和田・越智勇二)が壇上にあがり、須藤事務局長が代表で決意表明。議長退任を経て、最後に越智事務局次長が閉会の挨拶をし、無事に定期総会が終了しました。


伊方原発をとめる会のFacebookアイコンより 前列左からお2人目が松浦秀人さん

「伊方原発をとめる歌」ができました!

総会終了後に、幹事の松尾京子さん、立田卓也さんの二人が前に出て、須藤事務局長作詞による「伊方原発をとめる歌」が初披露されました。
メロディーは、奇しくも「みかんの花咲く丘」がピッタリです。瀬戸内海の美しい自然を歌ったこの歌へのオマージュにもなっています。

伊方原発をとめる歌  作詞 須藤昭男
Ⅰ 蜜柑の香り 瀬戸(うみ)の幸
  文化の香る 遍路道
  集い憩うは 道後の湯 
  原発いらぬ わが故郷(さと)に 
Ⅱ 気高く聳ゆ 石鎚の 
  恵み四国を 潤して
  澄みきる空と 清流に 
  育む子等の夢高し
Ⅲ 福島事故を忘れない 
  ひと手におえぬ 事故の処理
  この子等のため 世界(よ)のために 
  今立ち上がり止めましょう       
*「みかんの花咲く丘」のメロディーで


2017年12月に伊方原発を訪問した際に現地行動に参加 右奥に見えるのが伊方原発 (守田のカメラで撮影)

#伊方原発をとめる会 #原発からの命の守り方 #伊方原発をとめる歌 #伊方原発再稼働阻止 #松浦秀人

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明日に向けて(2041)放射線被曝の過小評価=だましのテクニックをつかんで賢くなろう!(『読み解きBOOK』読む会のお知らせ―6日日曜日)

2021年06月04日 22時30分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210604 22:30)

「核との共存」の流れ逆転させるために

直前のお知らせで恐縮ですが、6日日曜日の午後2時から、「放射線副読本すっきり読み解きBOOK」を読む会を行います。
京都市の「使い捨て時代を考える会」さんの主催で、事務所とzoomでの開催です。今からでも申し込み可能ですので、ぜひご参加下さい。
にょきにょきプロジェクトから中村あゆ美さんと僕が参加します。

この間、ナガサキの被爆後に原爆を「喜び」と捉えることを提唱した永井隆氏によって、ナガサキの怒りが抑えられてきた歴史を捉え返してきました。
その抑えを突き破って、怒りを声をあげた方たちもたくさんいることも踏まえなければですが、それでも大事なのは、この永井隆氏の信奉者である長崎大学の山下俊一氏によって、福島で安全論が振りまかれ、多くの方が騙されたことです。
さらに山下氏の右腕とも言える高村昇氏によって、現在、「放射線災害復興学」が進められています。次の核災害を起きるものとして捉え、受容し、核汚染の中で生きていくこと=「核との共存」の流れが作られようとしているのです。

この高村昇氏が中心になって作られたのが文科省の『放射線副読本』です。そこには放射線被曝を軽くみせ、受容させるためのテクニックがたくさんちりばめられています。
反対に言えば、これをきちんと読み解き、騙しのテクニックを一つ一つ学んでいけば、私たちは相当に賢くなることができます。『読み解きBOOK』を読む会の位置はここにあります。
私たちがみんなで賢くなることで「核との共存」など許さない、力強い流れを作りだそうということです。そのための読む会ですので、ぜひご参加下さい!


使い捨て時代を考える会の案内を貼り付けます!

以下、案内を貼り付けておきます。
なおすでに二日前ですので、会場参加は難しいかも。zoom参加ご希望の場合は、お振込み後に連絡となっています。
ともあれぜひ6日に会場で、あるいはzoomで、お会いしましょう。

*****

文科省が小・中学生に配っている「放射線副読本」には疑問がいっぱい。子どもたちが持ち帰った副読本を見て、何かおかしいと感じた人たちが集まって、みんなで疑問に感じたところを考えてみることにしました。
それをまとめたのが「読み解きBOOK」です。読み解きグループのメンバーの守田敏也さんと中村あゆ美さんに来ていただき、一緒に読み、考えていきます。「読み解きBOOK」をお持ちの方はご持参ください。当日会場でも販売します。

BOOKは以下のホームページから無料でダウンロードすることもできます。   
https://nyoki2pj.com/lp/info_yomitokibook/           

会場:使い捨て時代を考える会事務所(コミュニティカフェ) 
下京区富小路通仏光寺下る筋屋町141
★コロナ禍につき会場参加は10名までです。定 員:当日会場参加10名まで(先着順・要申込)
参加費:会場参加 会員500円 一般700円 ZOOM配信または後配信500円

*申し込みは前日までに下記へ。オンラインの場合はお振込み後にご連絡ください。
℡075-361-0222  メール tukaisutejidaiwokangaerukai@gmail.com  
振込先:ゆうちょ銀行 14450-17747391 特定非営利活動法人使い捨て時代を考える会
他行からの場合 ゆうちょ銀行 普通 (店名)ヨンヨンハチ 口座番号1774739

#放射線副読本 #すっきり読み解きBOOK #使い捨て時代を考える会 #高村昇 #放射線災害復興学 

*****

連載2000回越えに際してカンパを訴えます。「よく2000回まで頑張った。さらに頑張れ」との思いでカンパして下さるととても嬉しいです。振込先など記しておきます。

振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
他の金融機関からのお振り込みの場合は 
店名 四四八(ヨンヨンハチ) 店番 448 預金種目 普通預金 口座番号 2266615

Paypalからもカンパができます。自由に金額設定できます。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500

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明日に向けて(2040)「核との共存」を拒否しよう!核とともにある社会を未来世代に送り渡してはならないー山口研一郎氏の論稿から-4

2021年06月03日 15時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210603 15:00)

核との共存なんてありえない!

昨日、四国・岡山訪問の旅を終えて京都に戻りました。
5月10日から13日の福島訪問も含めて、旅の報告を後日行いたいと思います。
今回は、山口研一郎さんの小論、「原発被災地・フクシマに漂う「核との共存」ー被爆地・ナガサキも同じ過ちを経験した」の4回目、最終回をお届けします。

山口さんはここで端的に福島に「核との共存」の動きが忍び寄ってきていることに強い警戒を訴えています。
「漏れ出てしまった放射能とうまく付き合う」などといって、甚大な汚染をもたらしたものを免罪しつつ、被災者にさらなる被曝を許容させようとの動きを紹介しつつ、原爆の真の恐ろしさとの対決を貫いた、故秋月辰一郎医師の言葉も紹介しています。
核との共存の強制など、絶対に許してはなりません。そのためにぜひこの山口氏の論稿をあちこちで広めていただきたいです。末尾に紹介されている共著『国策と犠牲』も強くお勧めします。
以下、連載最終回をお読み下さい。

*****

「原発被災地・フクシマに漂う「核との共存」ー被爆地・ナガサキも同じ過ちを経験した」その4

6 . 福島の地に忍び寄る「核との共存」

長崎における核への怒りの沈静化、そして「共存」とも言える経過について紹介してきました。では、今日の原発被災地福島についてはどうでしょうか 。県外に住む私どもにとって、その実態はあまり見えてきません 。ただ時折聞こえてくるのは、「(子どもの甲状腺癌の発症原因について)科学的で正確な説明がなされず、住民が的確に考え判断する機会が奪われている」「福島では、原発被害について声高に語ることがタブーにされつつある」といったことです。

それはかつて、永井氏と同様な被爆医師として、戦後50年間医療活動を実践してこられた故秋月辰一郎氏(聖フランシスコ病院院長)が、1972年に出版された 『死の同心円ー長崎被爆医師の記録』 のあとがきに書かれた以下のような内容と一致します。
「長崎原爆の実態が、はじめから知られていない、正確に調査され、記録されていない、という不満が私をいらだたせるのである。被爆の直後から、これを知らせまいとする、またくわしく調べさせまいとするなにかがあったのではないだろうか」
「要するに、原子爆弾というものは、終始私たちには知らされず、歴史の流れのなかにぼかされていく」
「じつはだれもほんとうは原爆について知らないのである」

さらにここにきて以下のような記事が、2018年3月3日付『毎日新聞』や3月5日付『朝日新聞』に掲載されています 。
1つは、芥川賞作家玄侑宗久(げんゆうそうきゅう)氏についてです。2013年短編小説集『光の山』において、放射線を浴びた土や木々や草葉を所有地に進んで受け入れ、積もり積もって不思議な光を発する山になる幻想的な寓話が描かれました。そして、2018年1月に出版された小説『竹林精舎』中に、「愛し合うって、被曝し合うことだよね」という若者たちのつぶやきが描かれます。玄侑氏は記者の質問に、「漏れ出てしまった放射能とは上手に付き合わねばなりません」と語ってます 。

一方、前原子力規制委員長の田中俊一氏の談話も紹介されています。現役を退き避難指示が解除された飯館村に住む田中氏は今後の任務として、「放射能汚染の環境で生き抜く力を持つ子供たちを育てたい」と語っています (その一方田中氏は、2018年10月17日付『毎日新聞』において、「問題を先送りしながら原発を動かしていくなら、やめた方がいい」とも語っています)。
今私たちには、「核との共存」をきっぱりと拒否するのか否かが問われています。被爆地・長崎が戦後辿ってきた道を繰り返すのか否かが問われているのです。秋月氏は『死の同心円』の最後を以下の言葉で締め括られています。
 
「賢くて愚かな人間は、あの八月九日から全然変わっていない。悲しいことにおなじあやまちをくりかえそうとしているのである。あれから、とうに四半世紀がすぎたというのに・・・」
そして現在「 四半世紀」どころか、75年になろうとしているのです。

山田氏や永井氏、秋月氏、また生前のお三人と親交のあった故土山秀夫氏(元長崎大学学長)について詳しく紹介し、さらに松井氏や明通寺住職中島哲演氏、1985年のチェルノブイリ原発爆発当時、日本の原発に強い警告を発した故水戸巌(いわお)氏の御伴侶、喜世子さんなど、多くの方々の原爆・原発に関する論文を掲載した『国策と犠牲ー原爆・原発 そして現代医療のゆくえ』(山口研一郎編著、社会評論社、増補改訂版、2016年)にお目通しいただければ幸いです。

*****

以上で山口氏の論稿の連載を終わります。

#山口研一郎 #永井隆 #山下俊一 #高村昇 #ナガサキ #フクシマ #秋月辰一郎  #国策と犠牲

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明日に向けて(2039)「核との共存」が「学問的体系」にされようとしている!ー山口研一郎氏の論稿から-3

2021年06月02日 23時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210602 23:00)

「核との共存」を許さないネットワークを作り上げよう

徳島神山市→徳島市→松山市→高松市訪問の旅を終え、岡山を経て、京都に帰ってきました。昨夜は三田茂医師を訪問し、被曝問題などでたいへん貴重なお話を聞けました。
3つの学習・講演会を含むたいへん実り多い旅でしたが、その一つ一つが被曝から人々を、環境を守り、真に豊かな未来を作っていくことに繋がっています。
ぜひこの繋がりを「核との共存」を許さず、もっと素敵な未来を目指していくネットワークに育てていきたいです。

その点を踏まえつつ、今回はこの間、連載している「原発被災地・フクシマに漂う「核との共存」ー被爆地・ナガサキも同じ過ちを経験した」の3回目を掲載します。3回目で山口さんは、福島に「核との共存」の流れが押し寄せつつあることを危機感を持って告発されています。ナガサキの過ちを繰り返してはならないとの声には福島への熱いまなざしがこもっています。
その福島で展開されているのは「エートスプロジェクト」であり、そのための重要な柱の一つとして「放射線災害復興学」が打ち立てられています。担っているのは永井隆氏の信奉者の山下俊一氏の右腕の高村昇氏です。

高村氏は他の役割も果たしています。一つに文部科学省が出版した「放射線副読本」執筆に深く関わっていること、また福島の双葉町に作られた「福島原発事故伝承館」の館長に就任していることです。
ご存知のようにこの間、僕は「にょきにょきプロジェクト」の仲間たちと「放射線副読本」を「すっきり読み解く」活動を続けてきました。今回も徳島市で読み会をしてきました。また5月初旬の福島訪問では伝承館を取材してきました。
それらがそのまま、福島エートスプロジェクトの中軸の活動への抗いとなっていることをこの間、強く自覚しています。そう。この「騙し」をひっくり返すことが大事なポイントなのです。

以下、山口さんの文章をお読みください。

*****

「原発被災地・フクシマに漂う「核との共存」ー被爆地・ナガサキも同じ過ちを経験した」その3

山口研一郎氏著

5 「核との共存(放射線災害への対応と復興)」の学問体系化

私の手もとに、2017年3月発行の長崎大学広報誌「Choho」があります。誌面には、2016年度から開始された長崎大学・福島県立医科大学共同大学院「災害・被ばく医療科学共同専攻」が特集され、主だった専門家のインタビュー記事が
紹介されています 。
冒頭、国際放射線防護委員会(ICRP)副委員長であり、長崎大学原爆後障害医療研究所(原医研)教授のジャック・ロシャール氏より、「共同大学院で、放射線防護学、リスクコミュニケーション学、リスクマネージメント学を指導していきます」との
一文が掲載されています 。氏は、「着実に良い方向に」「少しずつ収束」「(住民、行政、専門機関が)情報を共有し、同じ方向に進み始め」といった、フクシマについて極めて楽観的意見を述べています。そして、「子どもも大人も高齢者も、そこに住み続けたいと思える環境作り」を呼びかけています。
次に、同じ長崎大原医研教授の高村昇氏が、共同大学院の目的と構想、しくみについて解説しています 。「放射線災害復興学」という新語が提起され、放射線災害を生じた場合の対応、災害後の長期的復興について、「学問体系」化し人材を育てるのが設置の目的とされます。ここでは、原発の存在が大前提であり、その結果「次の複合災害」が生じることを仮定して対策が立てられています。

その他誌面には、随所に「リスクコミュニケーションを通して、住民が明るく楽しく毎日を送れる」「新たな村作り」「放射線への不安を持っている人たちの科学的な理解を深め、その不安を緩和するためのコミュニケーションができる人材」「放射線はわれわれの生活になくてはならないもの」といった文面が並び、共同大学院の理念といったものが見えてきます 。

最後に共同大学院のバックアップ体制について紹介されています。そこには、世界保健機関(WHO)、国際原子力機関(IAEA)、国連放射線科学委員会(UNSCEAR)、ICRPなどから教員を招聘(へい)するとされています。以上のような機関がどう
いった性格を持つのか、2013年7月の「現代医療を考える会」において、講演された松井英介さん(医師、岐阜環境医学研究所所長)の講演録が参考になります。

「ヨーロッパからとんでもない人たちが来てまして、『エートスプロジェクト』を展開しています。これに金を出してるのがフランス最大の原子力産業、アレバです。それに金をもらい、ICRPの肩書きをつけたジャック・ロシャールという人が福島に入ってきて、『大丈夫、放射線を怖がらなければ大丈夫』とやっているわけですね。彼らは、『放射能恐怖症』という言葉も使い、ベラルーシで5年以上やってきた筋金入りなんです。」
「注目すべきはIAEAというアメリカ主導でつくられている原発推進の国連機関です。今一番先頭に立って活躍しています。WHOは、いのちと健康を守るための国連機関のはずですが、問題はIAEAが主導してWHOの手足を縛って、IAEAに相談な
しには一切何もやらせないということになっているわけです。1959年IAEAはWHOと覚書を交わしたのです。国連安全保障理事会の下にあるIAEAは強権を発動でき、その力でWHOを縛っているわけです。」
「IAEA、WHO、UNSCEAR、あるいはICRPのかなりの人がだぶっていて、同じ人間が別の組織の肩書きを付けて活躍している。」(以上、『国策と犠牲』増補改訂版、96~98頁)

以下、共同大学院の設置に関連して、2つのことを報告します。
1つは、共同大学院の設置について功績のあった山下俊一原医研教授の去執についてです。私と同じ1978年に長崎大学を卒業した山下氏は、2018年3月、同大学を退職しました。彼は、「定年退職のこ挨拶」(長崎大学医学部同門会誌‘‘ポンペ’')の中で、「永井隆博士を敬愛」したこと、最終講義のタイトルを、前述の「原子爆弾救護報告」中の永井氏の「転禍為福」としたことが語られています。山下氏の中には脈々と永井精神が受け継がれ、それが2012年11月の福島における委員会での、「放射線の影響は、ニコニコ笑っている人には来ません」といった発言につながったのでしょう。

もう1つは、被爆中心地に近い長崎大学医学部構内に、エボラ出血熱やラッサウィルスなどを扱うBSL-4施設を建設しようとしています 。人口密集地域である周辺へのウィルスの感染など、地域住民は心配と抗議の声を上げています(事実、武蔵村山市にある国立感染研究所のBSL-4施設には、エボラウィルスが輸入されることが決定)。それに対し、大学側は、「浦上地区の人たちは 原爆を乗り越えたのだから、エボラも乗り越えられる」(住民説明会での片峰茂前学長の発言。ちなみに、片峰氏も私のかつての同級生です)という認識です。ここでも永井精神が垣間見えます。

*****

#山口研一郎  #永井隆 #山下俊一 #高村昇 #エートスプロジェクト #ナガサキ #フクシマ #福島原発事故 #核との共存

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