15日(木)。昨夕、初台の新国立劇場で新国立オペラ、マスカー二「カヴァレリア・ルスティカーナ」とレオンカヴァッロ「道化師」の2本立てを観ました 新国立オペラにおけるこの2つのカップリングによる上演は2004年、2006年に次いで今回が3回目ですが、今回は演出が変わりました
最初に「カヴァレリア・ルスティカーナ」が上演されました。キャストはサントゥッツァにベネズエラ出身のルクレシア・ガルシア、ローラに新国立オペラでお馴染みの谷口睦美、トゥリッドゥにイタリア出身のヴァルテル・フラッカーロ、アルフィオに成田博之、ルチア=森山京子というメンバーです 演奏はレナート・パルンボ指揮東京フィル、新国立歌劇場合唱団。演出はベルギー出身のジルベール・デフロです
舞台はシチリアのある田舎町。サントゥッツァの恋人であるトゥリドゥは昔の恋人ローラとよりを戻す。それに嫉妬するサントゥッツァは、ローラの夫アルフィオに、二人の不倫を密告したため、アルフィオは激怒しトゥリドゥに決闘を申し入れ、トゥリドゥは命を落とす
この「カヴァレリア・ルスティカーナ」は「ヴェリズモ・オペラ」と呼ばれていますが、その特徴はドラマのリアリティにあります それまでの「あり得ない」設定から脱し「等身大の登場人物」「現実味のある題材」によってオペラが作られているということです
前奏曲から入りますが、パルンボの指揮は情熱的で説得力があります 歌手が歌う前に、オケが美しいメロディーを朗々と奏でます。良い演奏です そして舞台にはサントゥッツァ役のガルシア(ソプラノ)とルチア(メゾソプラノ)が登場して歌うのですが、どうも違和感があります この違和感は公演の終了まで続くのですが、その原因はガルシアにあります 体格が良すぎて、オペラのヒロインとしておさまりが悪いのです。声も良いし、歌も良いのですが、あの太った体型は不利です オペラは歌が第一だ、とはいうものの、聴衆は歌手を見ながら歌を聴きますから、外見から受けるイメージは大切です 願わくば、よりダイエットした上で聴くことが出来たらと思います
フラッカーロは新国立で「アイーダ」「トゥーランドット」「イル・トロヴァトーレ」「オテロ」などで主役級のキャストを務めているので、日本の聴衆に人気がありますが、今回も圧倒的な歌唱力で楽しませてくれました
ドラマの中間に「間奏曲」が演奏されますが、何と美しい音楽なのでしょうか 耳を澄ませて聴いているとオルガンの響きが聴こえてきます。それがこの曲の美しいメロディーを下で支えているのではないか(まさに通奏低音)と思いました
25分間の休憩後は、レオンカヴァッロの「道化師」です。最初にトニオ役のヴィットリオ・ヴィテッリが幕の中央から登場して、「作者は人生のひとこまを、事実に着想を得て描こうとしました」と前口上を述べて、幕が開きます そして、客席の両サイドの扉からサーカス団員(に扮した役者)が何人も登場し、ビラを配ったり、逆立ちしたり、バレエを踊ったりしながらステージに上がっていきます。これも演出の一つでしょう
キャストは、カニオに2012年『道化師』カニオでウィーン国立歌劇場にデビューしたグスターヴォ・ポルタ、ネッダにイタリア出身のラケーレ・スターニシ、トニオにイタリア出身のヴィットリオ・ヴィテッリ、ペッペ=吉田浩之、シルヴィオ=与那城敬というメンバーです
旅芝居の座長カニオの妻ネッダは、村の若者シルヴィオと恋人関係にある。トニオの密告で、カニオはネッダとシルヴィオが密会しているところを目撃する カニオは、劇の中で浮気を楽しむネッダの芝居に我慢できず、逆上して芝居と現実の区別がつかなくなり、ついに妻ネッダと恋人シルヴィオを刺し殺す 最後にトニオが観客に向かって「喜劇は終わりました」と言って幕を閉じる
「カヴァレリア」と違って、賑やかな幕開けでオペラが開始されます 舞台は「カヴァレリア」とまったく同じですが、移動可能な小部屋が2つ置かれています
まず、カニオを歌ったポルタは迫真の演技とともに堂々たる歌唱力で楽しませてくれました ネッダ役のスターニシは世界のオペラハウスで歌っているだけあって素晴らしい歌唱力です トニオ役のヴィテッリは脇役ながら重要な役を見事に演じ、歌いました 性格俳優のような人です
午後7時からの公演は途中25分の休憩を挟んで午後10時に終わりました。2つのオペラの間には舞台転換がないのだから、休憩時間をもっと短縮してほしい、と思いながら家路につきました