11日(日).わが家に来てから今日で984日目を迎え,「加計学園問題」で 文部科学省の内部から相次いで内部文書の存在を認める証言や資料が出てきていることには「官邸への霞が関の静かな反乱だ」との声が出ている という記事を見て感想を述べるモコタロです
首相官邸が官僚の人事権を持っているのが安倍一強を許してきた大きな要因では?
昨日の朝日朝刊・第2東京面「こどもの未来へ 大学の挑戦」コーナーで武蔵野音楽大学が紹介されていました 記事を超訳すると
「武蔵野音大は今春,練馬区の江古田キャンパスを刷新した 新校舎のほかに,本格的なコンサートも可能な音楽ホールが計6つ 演奏環境を向上させ,本番さながらの緊張感を体感しながら音楽の感性を磨いてもらう狙いだ.オペラが上演できる1043席の『ベートーヴェンホール』も一新された 内装にタイルやガラスなどを組み合わせて理想的な音響を実現した『ブラームスホール』,リサイタルなど小規模な演奏会に最適な『モーツアルトホール』も新設した さらに,大人数での練習も可能な3つのリハーサルホールも整備した これまで埼玉県入間市の入間キャンパスで学んでいた学生も今春から江古田へ通うようになった」
武蔵野音大は,ピアノ科卒の友人が2人いるので親近感があります とうの昔に卒業したOB・OGとしては羨ましい環境整備でしょう 音楽大学も生き残りのためにハード面・ソフト面での設備投資が大変ですね
昨日,東京藝大奏楽堂で「シアター・シンポジウム~光のパイプオルガンを~」を聴きました これは,東京藝大130周年記念と第5回国際音楽祭NIPPONとのタイアップ・イベントです 夢枕獏の書き下ろしによる台本をもとに,ヴァイオリンの諏訪内晶子,和太鼓の林英哲,サックスのMALTAら,日本を代表するアーティストが参加します
チラシを見ただけでは,シンポジウムをやるのか,何か演奏をするのか,どういうプログラムなのか,さっぱり分かりません 配布されたプログラムを見てやっとこの公演の概要が分かりました.プログラムは次のようになっています
〇バッハ「シャコンヌ ニ短調」(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータBWB1004より)~ヴァイオリン=諏訪内晶子
〇シアター・シンポジウム
〇バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043」~ヴァイオリン=諏訪内晶子,澤和樹,弦楽合奏=東京藝大学生オケ
【 休 憩 】
〇ジャズ「Crispy-Crispy」~サックス=MALTA,ピアノ=三木成能,ドラム=ジーン・重村,ベース=熊谷望
〇シアター・シンポジウム
〇松下功「飛天遊」~和太鼓=林英哲,ヴァイオリン=諏訪内晶子,サックス=MALTA,オルガン=廣江理枝,管弦楽=東京藝大学生オケ,指揮=澤和樹
全自由席です.開場時間=4時半の5分前に会場に着いたらすでに長蛇の列ができていました 辛うじて1階25列24番,センターブロック右通路側を押さえました かろうじて,と言うのは,全体の何割か(200席以上?)が「特別招待席」として関係者しか座れないようになっていたからです 常識的に考えて多すぎだと思います
会場が暗転し,2階正面のバルコニー席に真っ赤なステージ衣装のヴァイオリ二スト諏訪内晶子が登場,スポットライトを浴びてバッハの「無伴奏ヴァイオリンパルティータBWV1043」から「シャコンヌ」が演奏されました 緊張感に溢れる厳しい演奏でした
次いで,1階フロアに,この公演のタイトルとなった「光のパイプオルガンを」の物語を書いた夢枕獏が登場,「芸術家の道を志す一人の若者が,堕天使ルシフェルに導かれ,絶望と苦悩の世界へと旅を続ける」という物語を朗読します
次いで,藝大副楽長で作曲家の松下功氏が進行役となり,アートプロデューサ―の安田茂美氏,天文学者の吉井譲氏,音楽プロデューサーの北條哲男氏,演出家の西川信廣氏の5人によるシンポジウムが始まりました 4人はいずれも藝大の演奏藝術センターの客員教授という立場にいます.松下氏のフレンドリーな進行で,学生たちと接していて彼らにアドヴァイスすることは何か,といったことを聞き出していましたが,予想通りというか,マイクを通して聞こえる声が聞き取りにくいこともあり,それぞれが何を言わんとしているのかがいまいちよく把握できませんでした
5人が退場したところで,弦楽奏者20人とソリストの澤和樹学長,諏訪内晶子さんが登場,バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043」の演奏に移りました 演奏は軽快で素晴らしかったのですが,楽章が終わるごとに拍手が起こったのには閉口しました どうやら会場の何割かの人は,この曲を聴くのが生まれて初めてのようでした ただ考えようによっては,そういう人たちを音楽の世界に引き込んだと考えれば,今回の試みは成功なのではないか,と思ったりしました ポジティブに考えた方がいいかも
休憩後は,最初にジャズの演奏がありました 「Crispy-Crispy」という曲をサックス=MALTA,ピアノ=三木成能,ドラム=ジーン・重村,ベース=熊谷望の4人でご機嫌に演奏しました 久しぶりにジャズを生演奏で聴きましたが,思わず「おねーさーん,ビール,ジョッキで」と叫びそうになりました ジャズだから「マスター,ウィスキー,ダブルで」でしょうか ジャズにはなぜかウィスキーが似合います.と言って,だれかが持ってきてくれるわけではありませんが
次いで,再び松下副楽長の進行で,諏訪内晶子,林英哲,夢枕獏,MALTAによるシアター・シンポジウムが始まりました 彼らも藝大演奏藝術センターの客員教授です.松下氏は,前と同様「若者たちにアドヴァイスを」と求めました.諏訪内さんは「若さにまかせて,失敗を恐れず頑張ってほしい」と言っていました.MALTA氏は「われわれの時は情報が少なかったので,あっちかこっちかしかなかったけれど,今は情報が多すぎて若い人達は選択に迷うことが多いのではないか」と言っていました.林英哲氏は「へこんでいても地球は物凄いスピードで回っている.明日は必ずやってくる 足を使え,腕を使え」と言っていました.話のやり取りの中で,諏訪内晶子さんは,桐朋学園に入る前に澤和樹氏にヴァイオリンを師事していたということが分かりました
最後に,澤和樹学長の指揮,林英哲の和太鼓,諏訪内晶子のヴァイオリン,MALTAのサックス,廣江理枝のパイプオルガン,東京藝大学生オケのバックによる演奏で,松下功副楽長作曲の「和太鼓協奏曲 飛天遊」が演奏されました
冒頭,林英哲の和太鼓による強打が会場を揺るがし,ついで諏訪内の鋭いヴァイオリンが入ってきて協演します そしてオケが絡んで,サックスが加わり,パイプオルガンが会場を揺るがします.驚くべきは林英哲の太鼓のバチさばきです 盛り上がる筋肉がなければあれだけの迫力ある音は出せないだろう,と思うほど,力強い音が腹にずしんときます その反面,大きな太鼓のど真ん中だけを叩くのではなく,円周近くを叩いた細かい音の再現も素晴らしく,まさに「和太鼓演奏による芸術」を感じました この作品は2000年にベルリン・フィル・サマーコンサートで演奏され,好評を博したとのことですが,良く分かります 迫力満点の演奏に聴衆から大きな拍手とブラボーが寄せられました
今回のコンサートは,始まる前は「いったいどんなことになるのか?」と不安が先立っていましたが,終わってみると,初めての試みとしては大成功だったのではないかと思います 東京藝大にはこれからもこうした新しい試みをどんどんやって欲しいと思います