人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

春本雄二郎監督「由宇子の天秤」を観る 〜 急に加害者家族になったドキュメンタリーディレクターの決断:ユーロスペース

2021年09月30日 06時37分19秒 | 日記

30日(木)。早いもので9月も今日で終わりです 台風が接近しているようですが、非常に困ります 明日の夜オペラを観に行くんですけど

ということで、わが家に来てから今日で2455日目を迎え、菅首相の後継を決める自民党総裁選は投票の結果、岸田文雄氏が次期総裁に決まったというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     自民党は改革よりも安定を選んだわけだ 問題は内閣の顔ぶれと衆議院議員選挙だ!

 

         

 

昨日、夕食に「舌平目のムニエル」「生野菜としらすのサラダ」「冷奴」「ジャガイモの味噌汁」を作り、「刺身の切り落とし」と一緒にいただきました 舌平目は焦がしてしましましたが、娘に言わせるとこの焦げが美味しいのだと言います なるほど納得しました

 

     

     

         

 

昨日、ユーロスペースで春本雄二郎監督による2020年製作映画「由宇子の天秤」(152分)を観ました

3年前に起きた女子高生いじめ事件の真相を追う木下由宇子(瀧内公美)は、ドキュメンタリー・ディレクターとして、世に問うべき問題に光を当てることに信念を持ち、製作サイドと衝突することもいとわずに活動している その一方で、父が経営する学習塾を手伝い、父親の政志(三石研)と二人三脚で生きてきた しかし、政志の思いもかけない行動ににより、由宇子は信念を揺るがす究極の選択を迫られる

 

     

 

[以下、ネタばれ注意]

実は父親の政志は塾の女子生徒の授業料を免除する代わりに関係を持っていたのです それを知った由宇子が父親を糾弾すると、父親は生徒の父親に正直に打ち明けて示談に応じてもらうと言います。由宇子が「裁判に訴えられたらどうするの!」と問い詰めると、「自分が罪に問われるだけで済む」と答えます しかし、女子高生いじめ事件の取材を通じて、加害者だけでなくその家族も世間は許してくれないことを知っている由宇子は「考えが甘い! 生徒と父親は辛い思いをするし、塾の生徒たちにも、私や仕事の関係者にも大きな迷惑をかけることになるんだよ」と怒ります。この時 由宇子は事実を明るみに出すことのメリットとデメリットを天秤にかけ、父親の不祥事を隠蔽することによるメリットを選択したことになります この決断は由宇子の信念や職業倫理に反するものです。真実の報道を担う立場の人間が自分の身内の不祥事には目をつぶるということですから

由宇子が追っていた3年前の女子高生いじめ事件の取材は、放送直前に加害者の家族が嘘の証言をしていたと告白したことから放送は流動的になります 家族は加害者が不利になる動画を隠していたのです 由宇子はその事実を知ったことから、これまでの取材内容を放送することは嘘を放送することになる、として中止やむなしと判断します 彼女はやろうと思えばその動画を利用してドキュメンタリーを作り直すことが出来たはずです。しかし彼女は、それをやることによって得られるメリットと、加害者家族が一層追い詰められるというデメリットを天秤にかけ、良心に従うことにしたのです

その後、由宇子は女子生徒の父親に「娘さんを妊娠させたのは自分の父親です。今まで隠していました」と真実を打ち明けます やっぱり嘘はいけないー彼女の良心が許さなかったのです その結果、彼女は逆上した父親に首を絞められて倒れ込みます ピクリともしない由宇子の姿を見て、彼女が死んでしまったのではないかと不安感がつのりますが、彼女は咳き込んで息を吹き返します ここで由宇子は神に 生きるか死ぬかの天秤にかけられたのではないか? 意識を取り戻した彼女のケータイに事件の取材は正式に放送中止となったという電話が入り、スクリーンが暗転しエンドロールが流れます

この映画で言わんとすることは非常に重いものがあります 一つは自分や家族が関係する事件が起こった時、報道機関に働く者はどういうスタンスで事件に対峙すべきか?という問題です 由宇子の取った行動を批判することが出来るのか? もう一つは、事件が明るみに出た時、加害者だけでなくその家族にも、マスコミをはじめとする世間の目が向けられ、電話やネットによる誹謗中傷が浴びせられる その結果、加害者家族は何度も引っ越しを余儀なくされ、買い物に出るにも変装して出なければならない。呼び鈴の音にビクビクして暮らさなければならないーこういう実態に目をつぶっていて良いのか? 報道機関は真実さえ明らかにすれば、事件の関係者がどんな目に遭ってもいいのか、という問題です

その意味では、この映画は報道機関の取材と発表のあり方や 一般市民の良心を問うた問題作と言えると思います


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