人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新日本フィル「室内楽シリーズ ~ 山川永太郎プロデュース編」を聴く~モーツアルト「劇場支配人序曲」「ホルン五重奏曲」第3楽章、「ピアノ・ソナタ第16番」ほか

2025年03月22日 00時01分25秒 | 日記

22日(土)。わが家に来てから今日で3721日目を迎え、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、トランプ米大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と19日に電話で協議した際、トランプ氏がウクライナの原子力発電所を米国が所有することを提案した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

ガザやアイスランドを米国が所有するとも言ったな トランプは強欲プーチンと変わらないな

   昨日は、娘が外食で私がコンサートだったため、夕食作りはお休みしました 

         

昨夜、すみだトリフォニーホール(小)で新日本フィル「第172回 室内楽シリーズ   from "Empire" 山川永太郎(Tp)プロデュース編」を聴きました プログラム前半はモーツアルトの作品で①歌劇「劇場支配人  K.486」より序曲(金管五重奏版)、②「4つのコントルダンスK.101」より第3番ニ長調(同)、③「ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407」より第3楽章「ロンド:アレグロ」(同)、③「ピアノ・ソナタ第16番 ハ長調 K.545」より第1楽章「アレグロ」(同)、④「アダージョ 変ロ長調 K.411」(同)で、後半はヴィクトル・エヴァルド「金管五重奏曲第2番 変ホ長調 作品6」です  演奏はトランペット=山川永太郎(首席)、市川和彦(副首席)、杉本淳一郎、ホルン=日高剛(首席)、トロンボーン=山口尚人(元・副首席)、テューバ=佐藤和彦(首席)です

公演タイトルにある「 from "Empire" 」というのは、1972年にアメリカで結成され、世界を席巻した金管五重奏団「Empire Brass」から執ったもので、この日の公演は彼らのレパートリーである「Mozart for Brass」から選曲されています

演奏前に本公演の仕掛け人・山川永太郎のプレトークがありました ボストン交響楽団のトランペット奏者で Empire Brass のメンバーでもあるデレクの演奏をCDで繰り返し聴いた話や、演奏曲目の簡単な解説等を中心に、カンペなしで約7分ほど話しましたが、話し上手で分かりやすく好感が持てました

前半のモーツアルトの作品の演奏者は山川、市川、日高、山口、佐藤の5人です

1曲目は歌劇「劇場支配人  K.486」より序曲(金管五重奏版)です 「劇場支配人」はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が皇帝ヨーゼフ2世の依頼により1786年に作曲したドイツ語による全1幕の音楽劇で、同年ウィーンで初演されました

2曲目は「4つのコントルダンスK.101」より第3番 ニ長調(金管五重奏版)です  この曲はモーツアルトがザルツブルクの宮廷作曲家として1776年に作曲した作品です

3曲目は「ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407」より第3楽章「ロンド:アレグロ」(金管五重奏版)です この曲は1782年頃に親友のホルン奏者ヨーゼフ・ロイトゲープのために書かれましたが、元々はホルン、ヴァイオリン、2つのヴィオラ、チェロのために作曲されました

4曲目は「ピアノ・ソナタ第16番 ハ長調 K.545」より第1楽章「アレグロ」(金管五重奏版)です この曲は1788年に「初心者のための小ソナタ」として作曲されました

5曲目は「アダージョ 変ロ長調 K.411」(金管五重奏版)です   この曲はクラリネット2本、バセットホルン3本のために1782年か83年に作曲されました

「劇場支配人」序曲、「コントルダンス」第3番、「ピアノ・ソナタ第16番」アレグロのような比較的速いパッセージの曲では、2本のトランペットの鋭角的な演奏が全体を支配します また、「ホルン五重奏曲」アレグロでは、ホルンの独奏が鮮やかでした 一方、「アダージョ 変ロ長調」のような緩やかなテンポの曲では、それぞれの金管楽器同士のアンサンブルの美しさが際立ちました

ところで、18世紀後半のモーツアルトの時代にはテューバは存在しませんでした 佐藤氏の話によるとテューバが世に出たのは1835年頃だといいます 5曲のアレンジは仕掛け人の山川氏が担いましたが、すべてにテューバを採用しています そこが本公演の大きな特徴ですが、佐藤氏の演奏はとても素晴らしく、高・中音域の演奏を重低音でしっかり支え、大きな存在感を示しました

仕掛け人・山川氏は曲と曲の合間に他の出演者へのインタビューを行い、本公演に対するそれぞれの想いを語らせるなど、プロデューサーとしての役割をしっかりと発揮していて、とても良かったと思います 各自のトークを通して、それぞれの”人と成り”がよく分かりました

プログラム後半はエヴァルド「金管五重奏曲第2番 変ホ長調 作品6」です この曲はロシアのヴィクトル・エヴァルド(1860-1935)が1905年頃に作曲しました 山川氏によると、金管楽器の演奏者でこの人を知らない人はいないほど有名な作曲家とのことです 鈴村優氏のプログラム・ノートによると、「金管楽器は1800年代後半にピストンやヴァルブが搭載され、自然倍音や半音階が演奏できるようになった 当時は金管楽器の設計と製造が改良の途上にあり、金管五重奏曲自体も黎明期だった」ということです

この曲の演奏は、トランペットの市川の代わりに杉木淳一朗が入ります この曲は3楽章から構成されていますが、大雑把に言って 急 ~ 緩 ~ 急 の流れで演奏されます

初めて聴く曲でしたが 分かりやすい曲想で、金管楽器特有の輝かしい音色で シンフォニックな演奏が繰り広げられました

大きな拍手のなか、カーテンコールが繰り返され、アンコールに 出演者全員でモーツアルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」から第1楽章「アレグロ」を 輝くアンサンブルで演奏し、再び大きな拍手を浴びました プレトークからアンコールまで、充実した楽しいコンサートでした

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高関健 ✕ 阪田知樹 ✕ 東京シティ・フィルでベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番」、同:序曲「コリオラン」、チャイコフスキー「くるみ割り人形」第2幕を聴く

2025年03月21日 00時05分04秒 | 日記

21日(金)。わが家に来てから今日で3720日目を迎え、ロイター通信が入手したホワイトハウスの文書によると、トランプ米大統領は20日、教育省廃止に向けて大統領令に署名する見通しである  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     国の基本は教育だと思うんだけど トランプには国民が賢くなるのは困るみたいだ

         

昨日、夕食に「鶏のクリームシチュー」と「生野菜とアボカドと生ハムのサラダ」を作りました シチューにはチーズを乗せましたが、とても美味しかったです どうでもいいけど、またワイン飲んでるし

         

昨日、ティアラこうとう大ホールで東京シティ・フィル「第80回ティアラこうとう定期演奏会」を聴きました プログラムは①ベートーヴェン:序曲「コリオラン」ハ短調 作品62、②「ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73 ”皇帝”」、③チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形  作品71」より第2幕(全曲)です    演奏は②のピアノ独奏=阪田知樹、指揮=常任指揮者・高関健です

オケは12型で 左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対抗配置   コンマスは特別客演コンサートマスターの荒井英治です

1曲目はベートーヴェン:序曲「コリオラン」ハ短調 作品62です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が1807年に作曲、同年ウィーンで初演されました なお、序曲といってもオペラの序曲ではなく、演奏会用に作曲された単独の作品で、「交響曲第5番 ハ短調 ”運命”」と同じ「アレグロ・コン・ブリオ ハ短調」です

高関氏は開演前のプレトークで、この曲の思い出を次のように語りました

「(1977年のカラヤン指揮者コンクール・ジャパンで優勝したが) コンクール優勝のご褒美としてベルリン・フィルのコンサートで前座として1曲、指揮できることになっていた その時『序曲 コリオラン』を指揮することになったが、リハーサルでタクトを振り下ろしてもオケからすぐには音が出てこず、何度やっても音が遅れて出てくる それを見ていたカラヤンが『そんなに振りかぶって指揮したら音が遅れるに決まっている。もっと低い位置からタクトを振り下ろしてみろ』とアドヴァイスをくれた その通りにやってみると、思い通りのタイミングで音が出てきた これは(桐朋学園で齋藤秀雄先生から教わった)”斎藤メソッド”に反する指揮法だった その時から私は斎藤先生の良い弟子ではなくなった 今日はカラヤンに教わったやり方で指揮をします

このように、高関氏のプレトークは、時に全く知らなかったエピソードが披瀝されるので聞き逃せません

高関の指揮で、冒頭の動機が力強く演奏され、最後まで緊張感に満ちた演奏が展開しました

2曲目はベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73 ”皇帝”」です この曲は1809年に作曲、1811年1月13日にウィーンのロブコヴィッツ邸で私的に初演された後、1812年2月15日にウィーンで公的初演されました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アダージョ・ウン・ポーコ・モッソ」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成ります

ピアノ独奏の阪田知樹は2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位、2021年エリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門第4位入賞。国内外のオーケストラと共演を重ねる。現在、ハノーファー音楽演劇大学院ソリスト課程に在籍中

高関の指揮で第1楽章がオーケストラの主和音の力強い演奏で開始され、阪田のソロがカデンツァ風のスケールの大きな演奏を繰り広げます 阪田はこの演奏で一気に聴衆の心を惹き付けます 彼のピアノは明晰そのもので、一音一音がくっきりと浮かび上がります その美点が最も生きたのは第2楽章でした 阪田のピアノは音色がとても美しく、とくに高音部の輝きは比類のない美しさを湛えています 第3楽章は一転、躍動感あふれる演奏が展開します 高関 ✕ シティ・フィルとの丁々発止のやり取りにより、堂々たるフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました 阪田はアンコールにラフマニノフ(阪田編)「ここは素晴らしい場所」をリリカルかつロマンティックに演奏、再び大きな拍手に包まれました

阪田知樹はリストはもちろん、ラフマニノフもいいし、今回のベートーヴェンも良かった 何を弾いても素晴らしいピアニストです

プログラム後半はチャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形  作品71」より第2幕(全曲)です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)がマリインスキー劇場の依頼により1891年から翌92年にかけて作曲、1892年にペテルブルクで初演されました 音楽評論家・萩谷由喜子さんのプログラム・ノートによると、マリインスキー劇場がチャイコフスキーに依頼したのはオペラ「イヨランタ」とバレエ「くるみ割り人形」の2作で、同劇場は一晩にオペラとバレエを2本立てで上演しようと意図していたとのことです 「イヨランタ」は1幕物の短いオペラですが、「くるみ割り人形」とのカップリングで上演すれば全体で3時間以上かかるのではないかと思います すごい2本立てです

バレエ「くるみ割り人形」は第1幕(序曲から第9曲まで)、第2幕(第10曲から第15曲まで)から構成されています この日演奏される「第2幕」は次の通りです

第10曲「情景」:お菓子の国の魔法の城

第11曲「情景」:クララと王子の登場

第12曲「ディヴェルティスマン」(バレエの本筋とは関係なく挿入されるショー的な踊り)

 ①チョコレートの精によるスペインの踊り

 ②コーヒーの精によるアラビアの踊り

 ③お茶の精による中国の踊り

 ④トレパック(ロシアの踊り)

 ⑤葦笛の踊り

 ⑥ジゴーニュ小母さんと道化たち

第13曲「花のワルツ」

第14曲「パ・ド・ドゥ」:金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ

第15曲「終幕のワルツとアポテオーズ(大団円)」

高関の指揮で演奏に入りますが、第10曲「情景」から第12曲「①スペインの踊り」まで続けて演奏しました 「スペインの踊り」での松木亜希のトランペット・ソロが異国情緒豊かで素晴らしい演奏でした ②「アラビアの踊り」では本多啓佑のオーボエが冴えていました ③「中国の踊り」ではフルートによるコミカルな演奏が印象的でした ④「ロシアの踊り」では弦楽セクションの繊細な演奏が素晴らしかった ⑤「葦笛の踊り」では低弦のピッツィカートに乗せて奏でられるフルート3本の演奏が新鮮に響きました 第13曲「花のワルツ」では2台のハープの華麗な演奏が素晴らしかった また、谷あかね率いるホルン・セクションの演奏が冴えていました 第14曲「金平糖の精の踊り」ではチェレスタのオルゴールのような音色が美しく響きました 第15曲「終幕のワルツ」では、オーケストラの総力を挙げての演奏で華麗なフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返されました

高関氏は本番前のプレトークで、「『くるみ割り人形』を指揮するのは、以前、日本フィルの子供向けのコンサートで抜粋を演奏したことがあるくらいで、あとは記憶にありません 第2幕全曲を演奏するのは今回が初めてです 演奏がまずかったら、すべての責任は私にあります」と語っていましたが、どうしてどうして素晴らしい演奏で、十分楽しませていただきました

終演後 外に出ると、東京シティ・フィル自慢のオケ・トラがお見送りしてくれました

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高関健 ✕ 東京シティ・フィルで「第80回 ティアラこうとう定期演奏会」の公開リハーサルを見学する ~ チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」第2幕

2025年03月20日 00時20分51秒 | 日記

20日(木・祝)。わが家に来てから今日で3719日目を迎え、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領が18日、電話で協議したが、エネルギー施設やインフラに限定して攻撃を止めることでは合意したが、それ以外の点でプーチン氏は従来の強硬姿勢を崩さず、米国とウクライナが合意していた30日間の無条件での即時停戦には応じなかった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

プーチン ロシアは何かとイチャモンをつけて 戦争を長引かせ 領土拡大を最大限にするのが目的だ

         

昨日の夕食は「豚肉とキャベツの豚骨醤油鍋」にしました メインの豚肉とキャベツは鍋の底で 見えません   ソコが問題です

         

昨日、正午からティアラこうとうで、東京シティ・フィル「第80回 ティアラこうとう定期演奏会」の公開リハーサルを見学しました

朝から雪がちらつく寒い中、傘をさして江東区住吉の「ティアラこうとう」まで出かけました

本番(下のチラシ参照)は本日15時からですが、この日公開されたのはチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」第2幕でした

オケは12型で 左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、その後ろにコントラバスという対抗配置。コンマスは荒井英治です

カジュアルな衣装の高関が指揮台に上がり、最初に段取りを説明してから演奏に入ります

リハーサルでは「金平糖の踊り」「中国の踊り」「花のワルツ」などが順不動で演奏されましたが、高関氏は演奏の途中で止め、指示を出して演奏を再開するするーというやり方で進めました 時々、荒井コンマスから高関氏に質問が出されていました 客演コンマスなので不明なところは逐一確認しておきたいということでしょう

「金平糖の踊り」のチェレスタはキラキラとして綺麗だし、「花のワルツ」のハープは流麗で美しい 1時間だけの公開リハーサルでしたが、チャイコフスキーがいかにメロディーメイカーであるかを再認識しました 阪田知樹の「皇帝」とともに今日の本番が楽しみです

リハーサル終了後、13時過ぎにホールの外に出ると雪は雨に変わっており、地下鉄神保町駅で降りて昼食を取った時は、午前中の冬のような寒さが嘘のような暖かい天気になっていました Spring has come と早く言いたい

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セバスティアン・ヴァイグレ、メータの代役でベルリン・フィル定期演奏会を振る / フー・ティエンユー監督「本日公休」を観る ~ 常連客が集う台湾の理髪店の女主人を描いたヒューマンドラマ

2025年03月19日 00時04分55秒 | 日記

19日(水)。Googleニュースによると、ズービン・メータ(88)が健康上の理由で20~22日に開かれるベルリン・フィルの定期演奏会を降板し、代役にセバスティアン・ヴァイグレが選ばれたとのことです ヴァイグレは2019年から読響第10代常任指揮者を務めていますが、ベルリン・フィルを振るのは今回が初めてとのこと この公演にソリストとして出演する13歳のヴァイオリニスト HIMARI もベルリン・フィルへのデビューとなるそうです

HIMARIのウェブ・サイトによると、定期公演のプログラムは①ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲、②ヴィエニャフスキ「ヴァイオリン協奏曲第1番」、③シューベルト「交響曲第8番”グレート”」となっています 二人のキャリアにとって重要なコンサートになりそうですね

ということで、わが家に来てから今日で3718日目を迎え、米連邦議会の野党・民主党への支持率が過去最低を更新し3割を下回る水準となった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

米民主党が止めなくて 誰がトランプの暴走を止められると言うんだ  しっかりしてくれ!

 

   昨日の夕食は、娘が「ペペロンチーノ・クリーム・パスタ」を作ってくれました 私が週5回夕食を作っているんだから、たまには作ってくれてもいいよね 口には出して言わないけど   それにしても、他人の作ってくれる料理ってどうしてこう美味しいんだろう   

         

昨日、池袋の新文芸坐でフー・ティエンユー監督による2023年製作台湾映画「本日公休」(106分)を観ました

新文芸坐で映画を観るのはほぼ1年ぶりです 整骨院での腰痛治療の関係で時間がギリギリになってしまい、予告映画が終わり本編が始まる直前に館内に滑り込みました

物語の舞台は台中にある昔ながらの理髪店💈 店主のアールイ(ルー・シャオフェン)は40年にわたって立ち続け、常連客を相手にハサミの音を響かせている 彼女がひとりで育て上げた3人の子どもたちは既に独立しており、頼りになるのは近所で自動車修理店を営む次女の元夫チュアン(フー・モンポ―)だけだった ある日、離れた町から通い続けてくれる常連客の歯科医の”先生”が病に倒れたことを知ったアールイは、店に「本日公休」の札を掲げ、古びた愛車に乗り込んで先生のもとへ向かう

この映画は、台湾の俊英フー・ティエンユー監督が、自身の母親をモデルに執筆した脚本をもとに、実家の理髪店で撮影したといいます 撮影費も節約できるし、なんと理髪な、もとい、利発な選択でしょう 

ボーイフレンドと同棲しながらスタイリストをして活躍する長女、チュアンと別れ ヘアサロンで働きながら独立を目指す次女、太陽光パネルを販売するための費用を無心する長男・・・それぞれがキャラが立っていて印象的です

ある日、男子中学生が女生徒にモテたいと、前髪を長く伸ばしたまま散髪してほしいと注文したため、アールイは希望通りに髪を切りますが、後で母親が本人を連れてきて「全然、髪の毛が短くなっていない いつも通り短くしてほしい」と注文します その中学生が一人で来た時のワクワクした満面の笑顔と、母親と来た時の泣き面の表情の落差が可笑しくて、思わず笑ってしまいました   男子中学生にとって、母親は絶対権力ですから逆らえませんね

アールイは途中、道に迷い 他人の助けを借りながら、やっとの思いで”先生”の家に辿り着きますが、”先生”は息を引き取った後でした しかし、遺族の希望により"先生”の髪の毛を切ります 彼女は髪を切りながら、いかに故人が家族を大事に思っていたか、夫の死後 一人で理髪店を営みながら子どもたちを育てたアールイを勇気づけてくれたことを語り、家族の涙を誘います このシーンには思わず目頭が熱くなりました

アールイは「常連客がいるから、この歳になってもなんとか仕事を続けられる」と語りますが、彼女は日ごろから常連客へのセールスを怠りません 常連客のリストを見ながら電話をかけ、「もうそろそろ髪を切る時期ですよ。予約を入れましょう」と語りかけます 監督の母親もそうしていたのでしょう それにしても、手に職をつけている人は強いと思います

挿入歌の一つで「誰もが歳を取り白髪になる」という内容の歌が流れますが、この映画は 誰にもおもねらず、自分らしく「いつもどおり」に生き、いつしか白髪になって老いていく庶民の生き様を描いているのかもしれません

観終わった後、「なんと優しい気持ちにさせる映画なんだろう」と思うと同時に、「こういう映画は、今の日本では創れないだろうな」と思いました

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

足立正生監督「逃走」を観る ~ 1970年代中頃に連続企業爆弾テロを行った東アジア反日武装戦線「さそり」の元メンバー 桐島聡の逃亡生活を描いたドラマ

2025年03月18日 00時01分20秒 | 日記

18日(火)。わが家に来てから今日で3717日目を迎え、石破茂首相は17日の参院予算委員会で、自民党の衆院当選1回議員に商品券(一人10万円分)を配布したことについて改めて陳謝し、「社会通念上、世の中の方々の感覚と解離した部分が大きくあったと痛切に思っている」と述べた  というニュースを見て感想を述るモコタロです

石破氏を叩いても渡らない 慎重な首相にしては 信じられない行動  国民全員に配ればよかったのに

         

昨日、夕食に「ハッシュドビーフ」と「生野菜とアボカドとチーズのサラダ」を作りました 腰痛にお酒は厳禁なのですが、たまには、ね

         

昨日、池袋のシネマ・ロサで足立正生監督による2025年製作映画「逃走」(110分)を観ました この映画は、半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した、東アジア反日武装戦線の元メンバー 桐島聡を描いたドラマです

社会問題が高揚していた1970年代の日本。新左翼過激派集団である東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバー 桐島聡(杉田雷麟)は、重要指名手配され逃亡の日々を送っていた いつ逮捕されるか分からない緊張感のなかで日雇い仕事を転々とし、やがて彼(古館寛治)は「内田洋」という偽名で神奈川県藤沢市の工務店に住み込みで働くようになる 1960~70年代のブルースやロックを好む彼は、近所のライブバーに通い 趣味を楽しむ一方で、かつての仲間たちの姿を思い浮かべては日本社会の欺瞞や凋落を見つめ続けていた 2024年、70歳となった彼は末期がんと診断され、病院のベッドで生死のはざまを彷徨い、本名で死にたいとして 自分が関わった事件を刑事に告白する

「東アジア反日武装戦線」は、1970年代中頃に爆弾テロを行った日本のアナキズム系の極左テロ集団です。1974年8月の三菱重工爆破事件(死亡8名、重軽傷380名)から1975年の主要メンバー一斉逮捕・壊滅までに12件の連続企業爆破事件を実行しました 犯行声明では、反日本帝国主義やアイヌ革命論を主張し、海外進出する日本企業を「アジア侵略に加担している企業」として批判しました

この映画を監督した足立正生は元日本赤軍メンバーという経歴の持ち主です それだけに桐島の思想や行動は、足立監督自身の半生が反映されているかのように描かれています

「逮捕され投獄された仲間たちのためにも、警察に捕らえられずに逃げ続け、最後まで生き続けることが闘争を貫徹することだ」と自分に言い聞かせて、出来るだけ目立たないように生活していく桐島ですが、それは「闘争」ではなく「逃走」であることに他なりません しかし、50年もの間、常に警戒心を怠らず、本名を消し偽名で生活し続けることは、並大抵の神経では出来ないでしょう 2024年1月25日に神奈川県の病院に偽名で入院した彼が、本名の桐島聡を名乗ったのは、自分が実際に関わった事件の真相を話しておきたかったから、それと、偽名まま死にたくなかったからだと思います どうせ死ぬのだから名前なんかどうでもいい、とは思わなかった彼は、警察に身柄を確保された4日後に死亡しました

彼らが三菱重工爆破事件を起こした1974年は、私にとって人生の大きな節目を迎えた年だったので、決して忘れることが出来ません あの年から桐島の死まで50年が経過しましたが、桐島には桐島の人生があり、私には私の人生がありました 今になって思い返せば、長いようであっと言う間の50年でした

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする