人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでロッシーニ「ウィリアム・テル」を観る ~ ゲジム・ミシュケタ、ルネ・バルベラ、オルガ・ペレチャッコ、安井陽子にブラボー!

2024年11月21日 00時59分54秒 | 日記

21日(木)。わが家に来てから今日で3600日目を迎え、ロシア政府は20日、「プーチン大統領から北朝鮮の人々への贈り物」として モスクワの動物園からライオンやクマなどの動物70匹超を北朝鮮・平壌の動物園に移送したと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     北朝鮮がロシアに売り飛ばした数千人の兵士と 70匹の動物は同じ価値ってこと?

         

昨日、「肉じゃが」「生野菜とアボカドとモッツアレラチーズのサラダ」「シメジの味噌汁」を作りました 昨日は午後4時からオペラだったので、午前中に作り、私は昼食に娘は夕食に食べました 私の夕食はオペラの休憩時間に食べたオニギリ2個とお~いお茶です

     

         

昨日午後4時から新国立劇場「オペラパレス」でロッシーニのオペラ「ウィリアム・テル」を観ました 新国立劇場初上演で、日本での原語・舞台上演は今回が初めてとのことです

出演はウィリアム・テル=ゲジム・ミシュケタ、アルノルド・メルクタール=ルネ・バルベラ、マティルド=オルガ・ペレチャッコ、ヴァルテル・フュルスト=須藤慎吾、メルクタール=田中大揮、ジェミ=安井陽子、ジェスレル=妻屋秀和、ロドルフ=村上敏明、リュオディ=山本康寛、ルートルド=成田博之、エドヴィージュ=齊藤純子、狩人=佐藤勝司。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、指揮=大野和士、演出・美術・衣裳=ヤニス・コックスです

     

「ウィリアム・テル」はジョアッキーノ・ロッシーニ(1792-1868)がF.シラーの台本に基づき、1829年パリ・オペラ座で初演した全4幕6場からなるバレエ付きの『グランドオペラ』です

無知な私はイタリア人のロッシーニが作曲したオペラなのでイタリア語で歌われるのかと思っていたら、フランス語によるオペラなのですね プログラム冊子に掲載の早稲田大学名誉教授・丸本隆氏の「グランド・オペラ 生成・発展の歴史」によると、ロッシーニは多くの時期をフランスで過ごし、とくにパリ・オペラ座の制作活動に関りながらフランス・オペラの発展に大きく貢献した」とありました

【あらすじ】

物語の舞台はオーストリア公国の圧政を嘆くスイスの山村。長老メルクタールの息子アルノルドはハプスブルク家の公女マティルドへの恋に悩んでいた 村一番の弓の名手ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)はアルノルドに圧政に抵抗するよう諭す 総監督ジェスレルに反抗した村人を匿ったメルクタールは殺され、マティルドはアルノルドと永遠の別れを交わす 自分に従おうとしないテルとその息子ジェミを捕らえたジェスレルは、息子の頭に載せたリンゴを射ることが出来れば命を助けると告げる テルとジェミたちの運命は、そして、アルノルドとマティルドの愛の行方は如何に

     

会場は新国立オペラ初上演プロのプルミエ(初日)公演ということでか、少なくとも1階席はほぼ満席です

考えてみれば、前日夜にサントリーホールで東京フィルの定期演奏会を聴いたばかりなのに、その翌日には新国立劇場のオーケストラピットに入っています これは楽団員が日本最大の160人いる東京フィルだからこそ為せる業です ちなみに定期公演のコンマスは近藤薫でオペラは依田真宣と役割分担が出来ています

大野和士の指揮によりチェロの静かなアンサンブルで序曲が開始され、嵐の音楽に続きイングリッシュ・ホルンの長閑な演奏が奏でられ、トランぺットのファンファーレが高らかに鳴り響きます 東京フィル絶好調です

ウィリアム・テル役のゲジム・ミシュケタはアルバニア出身のバリトンです  パルマで学び、2006年AsLiCoコンクールで優勝 イタリア、ドイツの著名な歌劇場を中心に活躍しています。新国立オペラでは22年「椿姫」ジェルモンに出演しました 艶のある力強い歌唱で圧倒的な存在感を示しました

アルノルド・メルクタール役のルネ・バルベラはアメリカ出身のテノールです 2011年のオペラリア・コンクール3部門を単独で受賞した実力者です 明るくリリカルな歌唱と力強い高音が魅力で、聴衆の大喝采を浴びました

マティルド役のオルガ・ペレチャッコはサンクトペテルブルク音楽院、ハンス・アイスラー音楽大学などで学ぶ 世界各国の歌劇場で活躍しているソプラノです 新国立オペラでは2017年「ルチア」タイトルロールデビューを果たしました 卓越したヴォイスコントロールにより美しいコロラトゥーラを聴かせてくれました

ジェミ役の安井陽子は桐朋学園大学卒・同大学研究科修了。二期会オペラ研修所マスタークラス修了。ウィーン国立音楽大学研究課程声楽科修了 新国立オペラでは「魔笛」夜の女王、「ホフマン物語」オランピアなど数多くの役柄で出演。安定感のある美しいソプラノです 彼女が登場した時、「あれっ、安井陽子ってこんな小柄だったっけ」と意外に思いました 今回は子役ということなので、その意味ではピッタリなのですが、他の歌手が比較的立派な体格の人が多いから小さく感じたのだろうか

ヴァルテル・フュルスト役の須藤慎吾は国立音楽大学・同大学院修了。第42回日伊声楽コンコルソ第1位 新国立オペラでは数多くの演目に出演しています 力強いバリトンで存在感を示しました

ジェスレル役の妻屋秀和は東京藝大・同大学院修了のバスです 100以上の役柄を歌っており、新国立オペラにはなくてはならない存在です 今回は悪役に徹し、低音の魅力を発揮していました

エドヴィージュ役の齊藤純子は東京藝大・同大学院修了のメゾソプラノです フランス政府給付留学生として渡仏、パリ、ボルドーなどで研鑽を積む 美しいフランス語による歌唱が印象的でした

特筆に値するのは新国立劇場合唱団の力強いコーラス、そして東京フィルの渾身の演奏です

     

【初日公演のため注:ここからは演出面について触れますので、これからこの公演をご覧になる方で、先入観を排して鑑賞したい方は、読まないことをお薦めします】

第1幕と第2幕で、天井から大きな矢じりの形をしたオブジェが何本か降りてきます ↓ あれは民衆を圧迫するオーストリア公国の象徴であるとともに、第3幕でテルがジェミの頭の上のリンゴを弓で射る「矢」の象徴でもあると思います

第3幕でテルがジェミの頭に乗せたリンゴを弓で射るシーンは個人的なハイライトですが、見事にリンゴが真っ二つに割れて落下します あれはどうやったのだろうか タイマーでもかけて割れるようにしたのだろうか。知りたいです

さて、このオペラは「グランドオペラ」なので、各幕でバレエが踊られますが、ダンサーたちのバレエはリズミカルで楽しめました ただ、演出面で評価が分かれると思われるのは、第3幕の、広場で総督ジェスレルが皇帝の権力を象徴するトロフィーに跪くよう民衆に命じ、強制された女と兵士たちが躍るシーンです 3人の若い女たちが兵士に囲まれ、逃げようとしても捕まり、頭に鹿の角を付けられたりして、屈辱的な扱いを受けるーという演出になっています これは強い者(権力)と従属させられる弱い者(民衆)の関係を象徴したもので、現代で言えば「セクハラ」「パワハラ」を表していると思います また、第1幕では、兵士たちが民衆を殴る蹴るの暴行を加えるシーンがあります これについて演出家のヤニス・コックスは「プロダクション・ノート」で、「作中に多い、民衆の歓喜のシーンと徹底して暴力的な場面のコントラストも強調したいと思います」と語っています 最近「このごろ、辛い出来事や悲しい事件などを扱ったニュースを見たり聴いたりしたくないという人が増えている」という記事に接しましたが、「現実から目をそらすな」ということでしょうか

また、ラスト・シーンが印象的です 全員が「自由よ、天から降り来たれ」と唱和しますが、彼らの背後に映し出されるのは爆撃を受けて崩れ落ちた『廃墟』の映像です 見ているわれわれは「これはウクライナか、あるいはガザか」と思わせられます 「自由を得るためには こういう犠牲が伴うものだ」というメッセージなのか、あるいは「破壊しかないバカな争いはやめて 一刻も早く平和な世界を」という祈りなのだろうか

拍手とブラボーが飛び交う中 カーテンコールが繰り返され、私が会場を後にしたのは20時45分でした

     

         

今日はNHK交響楽団の11月Bプロ定期演奏会(2日目)を聴くため、サントリーホールに行きます

     

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アンドレア・バッティストーニ ✕ 東京フィルでマーラー「交響曲第7番 ホ短調 ”夜の歌”」を聴く ~ 第1009回サントリー定期シリーズ / 谷川俊太郎さんとモーツアルト

2024年11月20日 00時07分34秒 | 日記

20日(水)。昨日は朝一で都立0病院に検診に行ってきました 昨年5月末に都立0病院で前立腺生検を受け、前立腺癌はなかったと診断されましたが、その後、半年後検診ということで同年11月に経過をみるため再び受診しました 今回はその1年後検診という位置づけにあります 今回の検査結果は、PSA(前立腺特異抗原:前立腺に特異のたんぱく質)の濃度が4.8と正常値より高めであるが、1年前と同じで安定しているので様子を見ることとし、また1年後に検査をすることになりました 医師に「高値安定ですが大丈夫ですか?」と訊くと、「そうですね。これが数値が上がると話は別ですが」という答えでした 今後1年間様子を見るしかありません

ということで、わが家に来てから今日で3599日目を迎え、米ブルームバーグ通信は17日、トランプ次期大統領が自動運転の規制緩和を検討していると報道したが、大統領選でトランプ氏を支援した電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高責任者が求めていた措置で、テスラの株価は上昇している  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     トランプのやりたい放題人事の次は 大統領選貢献者への成功報酬のばら撒き措置か

         

昨日、夕食に「エノキダケの豚肉巻き焼き」「生野菜サラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました   今回はエノキダケを巻きましたが、野菜なら何でもいいみたいです

     

         

詩人の谷川俊太郎さんが13日、老衰のため死去しました。享年92歳でした つい先日の朝日新聞の紙面に谷川さんの詩が突然掲載されたので「おやっ?」と思いました その時、朝日は谷川さんの死の情報を持っていたのでしょう 昨日の朝日夕刊の第1面に編集委員・吉田純子さんによる追悼記事が掲載されていますが、過去のインタビューの思い出の中に、「モーツアルトの、僕が大好きな数小節に匹敵する詩が書けたら死んでもいい」「言葉は、どうやっても音楽にはかなわない。僕はきっと死ぬまで音楽に嫉妬し、片思いし続けるのだと思う」という言葉があります これを読んで思い出したのは谷川俊太郎詩集「モーツアルトを聴く人」(小学館文庫)です 同書の中で、谷川さんはモーツアルトの2つのロンド(ニ長調K.485とイ短調K.511)について書いています この本については感想を2022年1月17日付toraブログに書きましたので、興味のある方はご覧ください

     

         

昨夜、サントリーホールで東京フィル「第1009回サントリー定期シリーズ」を聴きました プログラムはマーラー「交響曲第7番 ホ短調 ”夜の歌”」です 指揮は東京フィル首席指揮者アンドレア・バッティストーニです 彼にとって人生で初めて振るマーラー「第7番」とのことで、東京フィルの定期演奏会としても、2002年10月の第666回以来、22年ぶりの演奏ということです

この曲はグスタフ・マーラー(1860-1911)が1904年から05年にかけて作曲、1908年9月19日にマーラー指揮チェコ・フィルによりプラハで初演されました 第1楽章「ゆるやかに ~ アレグロ・リソルート、マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「夜の歌Ⅰ:アレグロ・モデラート」、第3楽章「スケルツォ:影のように」、第4楽章「夜の歌Ⅱ:アンダンテ・アモローソ」、第5楽章「ロンド ~ フィナーレ:アレグロ・オルディナリオ」の5楽章から成ります

     

オケは14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東京フィルの並び。コンマスは近藤薫です

バッティストーニの指揮で第1楽章に入ります 冒頭のテナーホルンが、この曲の幕開けに相応しい素晴らしい演奏を展開します その後は勇ましい音楽が繰り広げられますが、相変わらずバッティストーニは指揮台の上でジャンプしたりして元気溌剌です 彼のエネルギーを感じるがごとく金管楽器を中心にオケのメンバーもアグレッシブな演奏を展開します この楽章の楽天的とでも言うべき演奏を聴きながら、思うところがありました

玉川大学芸術学部教授の野本由紀夫氏がプログラム・ノートに「第1~4楽章が陰鬱な音楽なのに対し、第5楽章はそれまでの苦労を水泡に帰するかのごとく、まるで能天気な明るい音楽になってしまう。これが聴衆を戸惑わせてきた」と書いています

一方、バッティストーニはプログラム冊子に寄せた「特別寄稿」の中で、この曲について「多くの批評家が、ここまで続いてきた洗練と高尚さの後の、このフィナーレの厚かましさを指摘している だが私はこのフィナーレに違和感は全く覚えず、むしろ非常に刺激的であり、1人の作曲家の並外れた感受性の中を巡る奇妙な旅路の、意表を突いた終結に相応しいと感じる 彼はこの交響曲で世界を、もはや叙事詩的な旅ではなく、熱情と偶然と予測不可能性に満ちた人形芝居の劇場として描いているように思われる」と書いています

一般的な捉え方を代表する野本氏の考えに対するバッティストーニの反論的な主張を読んで、私は「バッティストーニは第1~4楽章を『陰鬱な音楽』だとは考えていない。むしろ第5楽章と同じように『非常に刺激的』な音楽と捉えている。だからそれが分かるように第1楽章から『熱情と偶然と予測不可能性に満ちた人形芝居の劇場として』演奏しているのではないか」と思いました これは実際に第2楽章以降の演奏を聴いた時も感じました

第2楽章はホルンの独奏から開始されますが、高橋臣宣の演奏が素晴らしい この後も、何度かソロを吹くシーンが数多くありますが、息の長い旋律を含めて抜群の安定感で素晴らしい演奏を繰り広げました 第3楽章のスケルツォはグロテスクな雰囲気が存分に醸し出された演奏でした 第4楽章はセレナーデというタイトルが相応しい音楽で、ギターとマンドリンも加わります ただ、100人規模のフル・オーケストラの中ではアンプでも使用しない限り音が埋もれてしまいます 今回も音として聴こえたのはほんの短い時間でした 指揮者によっては、ギターとマンドリン奏者を指揮者の近くに控えさせて、視覚に訴えて音が聴こえるかのように錯覚させるクレバーな人もいますが、バッティストーニはそういう気は全くないようです 人生いろいろ♬ 指揮者もいろいろ♫です

そして、問題の第5楽章「ロンド・フィナーレ」です バッティストーニは第1楽章の段階から、第5楽章のコンセプトで演奏してきたので違和感なく受け止めることが出来ました ほとんどドンチャン騒ぎの様相を呈したイケイケドンドンの世界で、クラリネットやホルンは時にベルアップ奏法を見せ、打楽器が炸裂し、弦楽器が切れ味鋭い演奏を繰り広げ、バッティストーニは再び指揮台の上でジャンプしました 東京フィル総力戦のフィナーレは圧巻でした

バッティストーニ ✕ 東京フィルらしいエネルギッシュな演奏に、満場の拍手とブラボーが飛び交いカーテンコールが繰り返されました

     

     

     

     

         

今日は新国立劇場「オペラパレス」にロッシーニのオペラ「ウィリアム・テル」を観に行きます 予定上演時間は、2回の休憩を含めて4時間35分とのこと 腰痛持ちには最長最悪です

     

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井上道義 ✕ 新日本フィルでショスタコーヴィチ「交響曲第7番ハ長調」を聴く ~ 井上道義と新日本フィルの最後の共演 / 東京シティ・フィル「2025年度シーズン・ラインナップ」発表

2024年11月19日 00時01分51秒 | 日記

19日(火)。東京シティ・フィル「2025年度シーズン定期演奏会ラインナップ」(創立50周年記念)が発表されました

     

Ⅰ。定期演奏会(東京オペラシティコンサートホール:全6回)

会場の都合により全6回(従来は全9回)の開催となります 高関健氏は4月にストラヴィンスキー「春の祭典」他、9月にヴェルディ「ドン・カルロ」(演奏会形式)、11月にメシアン「トゥーランガリラ交響曲」という大曲に挑みます 藤岡幸夫氏はヴォーン・ウィリアムズの「カンタータ」他を、鈴木秀美氏はベートーヴェン「交響曲第6番」他を、松本宗利音氏はブラームス「交響曲第2番」他を取り上げます

     

Ⅱ。ティアラこうとう定期演奏会(ティアラこうとう大ホール:全4回)

高関氏は4月にショスタコーヴィチ「交響曲第15番」他を、10月にラヴェル「ラ・ヴァルス」他を取り上げます 藤岡氏は9月にチャイコフスキー「交響曲第5番」他を、ジョゼ・ソアーレス氏(2021年東京国際指揮者コンクール優勝)は5月にドヴォルザーク「交響曲第9番」他を取り上げます

     

Ⅲ。50周年記念演奏会ほか

定期演奏会が全9回から全6回に減少することを勘案し、以下により50周年記念演奏会他を開催するとしています

     

Ⅳ。チケット代は以下の通りです

     

ということで、わが家に来てから今日で3598日目を迎え、米主要メディアは17日、バイデン大統領がウクライナに対し米国製の長距離兵器を使ったロシア領攻撃を許可したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     これまでウクライナはやられっぱなしだったからな  しかし危うさも感じる転換だ

         

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜サラダ」を作りました ビーフはいつもの牛バラ肉を使いましたが美味しかったです

     

         

昨夜、サントリーホールで新日本フィル「第659回定期演奏会」を聴きました プログラムはショスタコーヴィチ「交響曲第7番 ハ長調 作品60 ”レニングラード” 」です

この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1941年に作曲、1942年3月5日にソ連の臨時首都クイビシェフで初演されました 第1楽章「アレグレット」、第2楽章「モデラート(ポコ・アレグレット)」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

全15曲の交響曲の中で最大の長さを誇る交響曲で、演奏時間は約75分です ショスタコーヴィチは当初、それぞれの楽章に「戦争」「回想」「祖国の広野」「勝利」という副題を考えていたと言われていますが、最終的には省かれています 彼は「第7交響曲をファシズムに対する戦いと勝利、そしてわが故郷レニングラードに捧げる」と語ったことから「レニングラード」という通称が付けられています しかし、この「ファシズム」については、独ソ不可侵条約を一方的に破棄しソ連に攻め入ったナチス・ドイツを指すとともに、ソ連国内で独裁体制により国民の肉体的・精神的な束縛を行ったスターリンをも表していると言われています

     

オケは16型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの新日本フィルの並び    コンマスは崔文洙、隣は伝田正秀というダブルトップ態勢を敷きます   ステージ下手にはハープ2台とピアノが控え、2階パイプオルガンの手前のバルコニーにはバンダ(ホルン、トランペット、トロンボーンの計10人)がスタンバイします

井上の指揮で冒頭「人間の主題」と呼ばれる第1主題が力強く演奏されます このテーマを聴くと、いよいよレニングラードの攻防戦が始まるぞ、と意識が高まります やがて小太鼓のリズムに乗って最弱奏で「戦争の主題」と呼ばれるテーマが奏でられ、楽器や奏法を変えながら大きなクレッシェンドを描いていきます この部分を聴けば、誰もがラヴェルの「ボレロ」を思い浮かべるでしょう この音楽が最高潮に達した後、ファゴットの長い息による演奏が展開しますが、河村幹子のソロが素晴らしかった 第2楽章では神農広樹のオーボエ、瀧本(客演)のバスクラリネットの演奏が冴えていました 第3楽章冒頭の主部はコラールですが、第1ヴァイオリンを中心とする弦楽セクションのアンサンブルが心に迫って来て背筋が寒くなる感動を覚えました その後のヴァイオリン・セクションの最弱音の演奏は、公開リハーサルの時に井上が厳しく指導していたところで、練習の成果がハッキリと現れていると思いました また、第1ヴァイオリンを中心とする弦楽セクションの最弱音の演奏は他の楽章でも聴けましたが、研ぎ澄まされた美しいアンサンブルに心を奪われました フルートの清水(客演)の息の長い旋律の演奏が冴えていました 第4楽章は何と言ってもフィナーレに向けての、長大なクレッシェンドを伴うオケの総力を挙げての演奏です 咆哮する金管・木管楽器、炸裂する打楽器、渾身の演奏を展開する弦楽器により壮大なフィナーレを飾りました 井上は新日本フィルの楽員の持てる力を全て引き出し、自らも全力を出し切りました 井上 ✕ 新日本フィルの最後を飾るに相応しい、終始弛緩するところのない集中力に満ちた演奏でした

井上のタクトが下ろされるや否や、満場の拍手とブラボーが飛び交い、カーテンコールが繰り返されました 新日本フィルとの共演は今回が最後ということで、楽員を代表して崔コンマスから井上に花束が贈呈されました 井上のホッとした表情が印象的でした

     

     

     

     

     

     

     

     

         

今日はサントリーホールに東京フィルの定期演奏会を聴きに行きます

     

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ジルヴェスター・コンサートとニューイヤー・コンサート / 筒井康隆著「敵」を読む ~ 「敵です。敵が来るとか言って、皆が逃げ始めています。北の」という「敵」とは何なのか?

2024年11月18日 00時37分41秒 | 日記

18日(月)。今週は今日から21日(木)まで4日連続コンサート、1日おいて土曜日にもコンサートがあるので腰痛持ちには非常に厳しい1週間となります 毎朝整骨院に通いながら、腰痛対策ベルトをしっかり締めてコンサートに臨みたいと思います

さて、昨日の日経朝刊にサントリーホールの全面広告が掲載されていました サントリーホールが毎年、年末に開催している「ジルヴェスター・コンサート」と 新年に開催している「ニューイヤー・コンサート 」について、音楽評論家・小宮正安氏がフリーアナウンサー・木佐彩子さんのインタビューに答える形で解説しています    それによると、2025年はワルツ王・ヨハン・シュトラウスⅡ世(1825-1899)の生誕200年にあたるメモリアル・イヤーなので、ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団のニューイヤー・コンサートのプログラムも彼の作品が存分に堪能できるように組まれているとのことです   また、今年=2024年はジルヴェスター・コンサートで演奏されるヨハン・シュトラウスⅡ世のオペレッタ「こうもり」の初演150年にあたる年とのことです

ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団の「ジルヴェスター・コンサート2024」は12月31日(火)14時開演、同「ニューイヤー・コンサート 2025」は25年1月1日(水・祝)、2日(木)、3日(金)の3日間、いずれも14時開演となっています 私は年末年始は家族とともに過ごすのが習慣なので聴きに行きませんが、楽しそうですね

     

     

     

     

ということで、わが家に来てから今日で3597日目を迎え、ドナルド・トランプ次期米大統領は16日、エネルギー資源採掘企業リバティエナジーの創設者で、気候変動懐疑論者としても知られるクリス・ライト氏を次期エネルギー長官に指名したが、同氏はビジネス向け交流サイトへの投稿で「気候危機は存在しない」と否定している  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     独裁者トランプのやりたい放題人事が進んでいる 米国の気候変動対策は後退するな

         

筒井康隆著「敵」(新潮文庫)を読み終わりました 筒井康隆は1934年 大阪市生まれ。同志社大学卒。1981年「虚人たち」で泉鏡花文学賞、87年「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、89年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、92年「朝のガスパール」で日本SF大賞をそれぞれ受賞 2010年に菊池寛賞を受賞

     

主人公は渡辺儀助という75歳の元大学教授で、フランス近代演劇を専門にしてきた 妻には20年前に先立たれ、東京山の手の住宅街にある家で一人暮らしをしている 本書は主人公が日常生活の詳細、つまり衣食住から友人との交流やパソコン通信までを事細かく読者に語るというスタイルをとっています

料理にこだわり、晩酌を楽しみ、時には酒場にも足を運ぶ 好意を寄せる昔の教え子、鷹司靖子はなかなか訪ねて来ないので寂しさを感じている 預貯金があと何年もつかを計算しながら、平穏な日常生活を送っている 彼はパソコン通信をやっているが、ある時から「敵です。敵が来るとか言って、皆が逃げ始めています。北の」という謎めいた不可解なメッセージが届くようになる 時々現れるこのメッセージにある「敵」とは何なのか? 侵略者なのか? そうでなければ一体何なのか

その答えは、夢とも現実とも不明な演劇の中で、儀助が語る台詞に現れています

「儀助は立ち上がり喝と眼を見開いて天井桟敷を睨みつける 『うぬ。やってきやがったな。敵め。敵め。悪魔め。死霊め。ではこっちも迎え討ってやるぞ』儀助は剣を抜きはなち振り上げる。『何だと。それも無駄だと。百も承知だ だがな。おれは勝利の望みのある時ばかり戦うのたあわけが違うぞ。違うわい。負けると知っても戦えばこそ勇ましさもひとしおだあ』『来た。来た。こいつらめ。老醜め。臆病め。自堕落め。陋習め。老臭め。保守め。懐古め。頑固め。偏見め。卑怯め。虚栄め。ひとりよがりめ。何。降参しろだと。誰がするもんかい 最後におれが斃れるのは承知の上だ。それが何だ。あくまで戦うぞ。貴様らはおれのものを全部奪う気だな。桂の冠も。薔薇の花も。あの知識も。あの才能も。あのジャズ・ソングも。あの思い出も。この思い出も。さあ奪え。だがな、お気の毒だが、貴様たちにゃどうしたって奪えぬ佳いものを、おれはあの世に持っていくのだ おれの永遠の幸福で青空に晴れた道、広びろと掃き清め、神の懐に入る道すがら、憚りながら皺ひとつ、しみひとつつけずに持っていくのだ。他でもない。それは・・・私の心意気だ

つまり、儀助にとっての「敵」は老醜、臆病、自堕落、陋習、老臭、保守、懐古、頑固、偏見、卑怯、虚栄、ひとりよがりーなのですが、究極的には「老いる」ことと、その先にある「死」です 儀助は「老い」と「死」に対し徹底抗戦を宣言し、「心意気」だけはあの世に持っていくと決意しているのです

この作品は吉田大八監督により映画化され、第37回東京国際映画祭で最高賞の東京グランプリを受賞、併せて吉田監督が最優秀監督賞、主演の長塚京三が最優秀男優賞を受賞し、3冠を達成しました 来年1月に一般公開されるということです 果たしてどんな映像になるのか?  是非観に行きたいと思います

        

4日連続コンサートの第1日目の今日は、サントリーホールに新日本フィルの定期演奏会を聴きに行きます

     

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ジョナサン・ノット ✕ 伊藤文嗣 ✕ 務川慧悟 ✕ 東京交響楽団でハイドン「チェロ協奏曲第1番」、モーツアルト「ピアノ協奏曲第9番」を聴く~第59回モーツアルト・マチネ

2024年11月17日 00時01分04秒 | 日記

17日(日)。わが家に来てから今日で3596日目を迎え、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは15日、イランが米政府に対して書面で、トランプ次期大統領を暗殺しないと約束したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     イランがトランプ暗殺を企てていたのは事実だが 国の約束としては珍しいんじゃね?

         

昨日午前11時からミューザ川崎シンフォニーホールで「第59回モーツアルト・マチネ」を聴きました プログラムは①ハイドン「チェロ協奏曲第1番 ハ長調」、②モーツアルト「ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271”ジュノム”」です 演奏は①のチェロ独奏=伊藤文嗣(東響首席)、②のピアノ独奏=務川慧悟、指揮=ジョナサン・ノットです

     

ミューザ川崎は8月12日の「フェスタサマーミューザ」フィナーレ公演以来なので約3か月ぶりです この日はいつもより客入りが良いようです   務川人気だろうか

オケは8型の小編成で、左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置 コンマスは小林壱成です

1曲目はハイドン「チェロ協奏曲第1番 ハ長調」です この曲はフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)が、仕えていたエステルハージ家の宮廷楽団の首席チェロ奏者 J.F.ヴァイクルのために1761~65年頃に作曲しました その後、楽譜が行方不明になっていましたが、1961年にプラハの国立博物館で筆写譜が発見され、同年に初演されました 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ・モルト」の3楽章から成ります

チェロ独奏の伊藤文嗣は神奈川県出身。東京藝大・同大学院修士課程修了 第9回ビバホールチェロコンクール第2位。2008~2010年N響アカデミーに在籍。現在東響首席チェロ奏者を務める

ノットと伊藤が入場し、さっそく第1楽章に入ります 長い序奏は古典派コンチェルトの特徴です やがて独奏チェロが明るく力強く入ってきます 伊藤のチェロは明快で、軽快なテンポで演奏が進みます カデンツァは見事でした 第2楽章は伸びやかな独奏チェロが朗々と奏でられ、時に陰りを見せるところが魅力です 第3楽章はスピード感あふれるノット ✕ 東響の演奏に乗せて、伊藤の明快なチェロが天翔けます 実に爽快な演奏でした

満場の拍手とブラボーのなかカーテンコールが繰り返され、伊藤はJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV1009」より「ジーグ」を鮮やかに演奏、再び大きな拍手に包まれました

     

2曲目はモーツアルト「ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271”ジュノム”」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が1777年に、ザルツブルクを訪れたフランスのピアニスト、L.V.ジュナミ嬢の依頼で作曲しました 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンティーノ」、第3楽章「ロンド:プレスト」の3楽章から成ります

ピアノ独奏の務川慧悟は東京藝大を経て、2014年パリ国立高等音楽院で学ぶ   2019年にロン=ティボー=クレスパン国際コンクールで第2位受賞   2021年にはエリザベート王妃国際音楽コンクールで第3位受賞   現在、日本とヨーロッパを中心に幅広く活躍している

オケは10型に拡大し、管楽器も増員されます

ノットの指揮で第1楽章に入りますが、この曲は古典派の協奏曲には珍しく、開始して間もなく独奏ピアノが入ってきます   当時としては画期的なスタイルでした    独奏ピアノとオケとが楽しく対話するように軽快な演奏が続きます    第2楽章は一転、悲しみを湛えるかのような独奏ピアノの響きが印象的です 務川のピアノはどこまでもクリアです 第3楽章は軽快なピアノ独奏により開始され、愉悦感に満ちた演奏が繰り広げられます リズム感の良い素晴らしい演奏でした

満場の拍手とブラボーが飛び交う中 カーテンコールが繰り返され、務川はJ.S.バッハ「パルティータ第1番」より「メヌエット&ジーグ」を軽快に演奏、再び大きな拍手に包まれました

2人の独奏者によるアンコールがあったため、終演は12時25分となりました 夜公演ではないので帰りの電車を気にする必要もなく 誰も文句はないでしょう

     

     

     

     

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