女性の活躍が進まない原因(1)の続き
⑤企業が女性に対して差別意識を持っていると、男女が同じ生産性を発揮しても同じ賃金が支払われなくなる(差別の直接効果)。差別の直接効果は各種調査で証明されている。例えば、MBA取得者という同質性が高く高学歴の人の間でもMBA取得から10年後の賃金には大きな差が出てくる。子育てと関連して発生しやすい就業中断や労働時間の短縮を計算に含めたら、格差は縮小されるが、それでもなお格差は残る。また、アメリカのオーケストラでは性別等個人の属性が分からないよう衝立で応募者を隠して演奏技術を評価するようにしたところ、女性の採用率が高まった。また、製造業という労働者の生産性を直接的に計測しやすい産業でデータを収集、分析を行ったところ、女性の限界生産性は男性より少し低いが、生産性の違い以上に女性は男性より賃金が低いことが示された。
まぁ筆者は女性ではありませんから、女性差別があるかどうか分かりませんけれども、差別があると必要以上に評価が下がることは理解できます。差別は良いことではないと思いますが、だからと言って枠を与えるアファーマティブアクションのようなことは上手くいかないだろうと思いますし、筆者はそういった結果の平等的な手法を好んでいません。実際問題、差別があるとしても、差別は計測できないのであって、差別の分を差し引きして判断するというようなことは不可能ではないでしょうか?実効的な対策は事実を認め誤解を解くことしかないだろうと思います。例えば、男女差別を肯定する人と否定する人がいた場合、肯定する人の方がより差別的であろうと推測できます。能力が同じでも評価が変わってくるのが差別で差別は実際に存在することは認めなければならないでしょう。また極端な差別になると能力が同じということ自体を認められなくなると思われます(男女の性差がないと主張している訳ではなく、性差の部分を考慮に入れても偏見によるマイナス評価はなお残ると指摘しています)。男女差別を否定する人もあるいは無意識に差別している可能性はあるかもしれませんが、筆者はそこまでは取り上げません。無意識の部分はどうしようもないと考えられるからです。どの程度差別していてどうしたらいいか全く分からないでしょう?嘘をついている可能性は考慮しなければならないかもしれませんが、意識の上で差別は良くないと認定されるならば、それ以上はつっこまないで良いと筆者は考えます。問題なのは差別が存在しないと認定する人です。男女の賃金差の全てを能力差で理解する人は差別という現実から目を背けていると考えられ、人間を評価するある種の能力が欠けていると考えられます。
差別の存在を教え差別は悪いことと教えることはひとつの重要な対策だと思います(ただし、男女差別のような隠しようがない差別と差別のような隠せる差別を全く同列に扱うべきではないかもしれません。特に地元の人間に対して何処まで隠せるかの論点はあるかもしれませんが、を知らない人間が差別をすることがないのは当然の理です。勿論差別はあると思いますし否定されるべきだとは思いますが、決め付けるつもりもありませんが例えばガラの悪い人をそれなりに扱ったところで差別だと言われてもどうしようもないところはあるでしょう。外国人差別もあると思いますし否定されるべきだと思いますが、日本語が通じないならお客さんになってしまいますし、政治に参加する権利など与えられない権利は出てきます)。存在するものを否定されると議論のしようもありません。結局のところ、昔は男女は役割分担をしていれば良かったのでしょうが、現代になってくるとそうもいかなくなってきています。役割分担の時代には女性の仕事を評価する必要は無く、寧ろ女性の仕事を否定して自分の役割を演じろと決め付ければ良かったのでしょうが、その慣習を維持すると現代では上手くいかないということではないでしょうか?(別に男女の体力差などある差を否定して何でも平等を主張している訳ではありませんので、勘違いしないでくださいね?)
もうひとつ重要な対策は、労働市場を競争的にすることです。これは男女差別意識の強い人には意外な結論かもしれませんが、評価が不当に低い人がいるとすれば、その人を活用した方が有利になります。合理的に考えるとそうならざるを得ませんし、実際にそういう結果が出ているようです。競争的な市場ほど格差が少なく、非競争的な市場ほど格差が大きいようです。ここで注意すべきはそもそもやる気のない人は戦えないということです。専業主婦志向で会社を辞めるつもりの人がそうでない人に対して競争力があるはずがありません。同能力にも関わらず評価に差が出てくるのが差別なのであって、競争的市場では差別意識のない人の方が評価者としては優位にたてます。逆に言えば、差別意識の強い人が多い組織は非競争的市場にあって経済が分からないことを疑った方がいいでしょう。まぁ同じ差別意識を共有していないとそのこと自体が評価の対象にならないということも有り得ますが。ともかく、女性が不当に評価されているなら、安くて能力のある人が埋もれているということですから、ドンドン活用すればいいんだと思います。勿論妊娠出産子育てのハンディや引越し慣行によるキャリアの分断(夫婦別姓はどうとでもなりますが、夫の転勤によって仕事を辞めなければならないリスクがあるとすれば(あるでしょうが)、これは大きなハンディです)など検討すべき問題はいろいろあるでしょうが、基本的な考えとしてはそうなるはずです。
政治を題材にとると、女性政治家を増やし地位向上させるためには、政治家の選び方を競争的にすることです。例えば、人気投票で選べば必ず女性政治家は増えるでしょう。ポピュリスト政治家が増えても知りませんけれども。またテストの点で選べば女性政治家は必ず増えます。公務員がそうであるように。勉強ができるだけで使えない政治家が増えても知りませんけれども。まぁ正直言って○○党の女性政治家の面々を見ていると、男性政治家よりタチ悪くない?と正直思っていますから、日本国にとって良い結果が出るとは必ずしも思っていませんけれども、人気投票で選べば選挙に強いという意味で能力の高い政治家が増え従って女性は増えるだろうと思っています。選挙に強いからと言って政策が必ずしもいいという訳ではないと思いますけどね。選挙民が政策重視と見るのが怪しいでしょう。選挙民は自分の生活に忙しいですから、政策は必ずしも勉強していません。その中間で政治家・政党の政策の評価をなす機能が向上することが何らかの形で必要なはずです。報道やネットがその機能を担ってくれればいいと思うんですけどね。また、政治家になった後に政策は鍛えればいいとも考えられます。上が強制せずに個々の政治家の自由意志に任せて部会を選ばせ、自由な議論で頭角を表した人を重用するようにすれば、状況は結構変わってくる可能性はあると思います(筆者が部会の現実を知っている訳ではありませんので、悪しからず)。いずれにせよ、競争的にすればするほど不当に評価されている人=女性が浮かび上がるはずであって、政治も例外ではないと考えられます(あくまで一般論で男女の政治家に傾向として特性の違いが存在する可能性もありますし、現状一般社会は男性優位ですから、政治家として優位なキャリアを築いているのも男性になろうかと思います)。こういうことは一朝一夕で変わるものではありません。ですが、真摯に話し合って制度を改善し、適切に運用していく強い意志があれば、状況の改善は加速するはずです。
⑥差別には直接効果だけではなく、フィードバック効果もある。差別の存在が女性の人的投資行動や就業インセンティブに悪影響を及ぼし、結果として差別を正当化してしまう。
差別されたことがない人には分かり難いのかもしれませんが、差別されるとやる気に影響を及ぼします。やる気が無いのを見て更に差別が強まるという仕組みです。だから差別は不当なんだと思います。辞めさせるためにあえて辞めさせたい人を差別して「自発的な」退職を促すブラック企業がありますよね。自己都合退職の方が会社都合退職より会社にとって有利ですから。筆者は解雇規制緩和によって会社都合退職をやりやすいようにするべきだという考えですけれども、政治思想信条など仕事に関係ない理由で人事権を濫用する企業があることが懸念されます。でもまぁそれも過渡期でそういう企業は競争に負けて退出することになるんでしょう。大事なことは市場を競争的にすることなのであって、それに新卒一括採用で終身雇用を前提にしないことも含まれてくると思います。
⑥長時間労働・終身雇用など日本的慣行が女性差別を助長している。
日本企業は長時間労働前提でしたが、これは女性不利は明らかです。終身雇用前提も出産子育てでキャリア中断がある女性不利で、引越し慣行も女性不利だと思いますが、こうした慣行が是正されれば女性は活躍しやすくなります。働き方改革で長時間労働が是正されれば女性有利になるでしょう。筆者などはモーレツにやらないと結果は出せないなどと心配してしまうところがありますが、低賃金の奴隷労働で物価が上がらない消費が増えないも問題ですし、生産性を高めることも重要ですね。今は過渡期なんでしょう。
以上です。次回(3)をやって「日本の労働市場」を題材にとった労働問題記事は終わりにします。恐らく来週になるでしょう。移民・外国人労働者や高齢者雇用など取り扱いたいテーマはいろいろあります。徐々に進めていきます。