森林環境税 使途を明確化し理解得よ(産経ニュース 2018.1.8 05:01)
>すでに森林の環境整備などに充てるために独自の地方税を徴収している府県は30超にのぼり、市町村との二重課税となる問題もある。
国が森林整備をするなら、地方に財源は必要ないはずです。廃止の方向性で動くのがいいのではないかと思います。その方が納税者も喜ぶはずです。
>新税の税収は年620億円に達する。巨額な財源が確保されるため、森林整備を名目に関連が薄い林道整備などに予算を投入するばらまきは徹底的に排除すべきだ。
特定財源は無駄な支出に直結し易いと考えられますから、使い道に関する十分な検討は必要だと思います。森林に防災に関する機能はあると思いますが、林業が必ずしも防災に資する訳ではありませんし、エコツーリズムのために林業がある訳でもありません。
>多くの税収が見込まれる都市部の住民には、森林保全の恩恵は感じにくい面もある。受益と負担の関係を明確にしなければ、国民の幅広い理解は得られまい。
森林に多様な機能はあると思いますが、森林保全をしなければならない理由というのは、結局のところ、木材自給率と世界の森林減少傾向にあるんだろうと思います。森林の二酸化炭素固定機能は明らかですし、輸入を減らして世界の森林を守っていくことは日本にとっても重要だろうと思います。林産物の関税も併せて検討すべきと思いますが、いずれにせよ、日本の木材消費者こそが日本の林業を守る主体であるべきです。
日本の木材の用途は建築・土木が43%で紙・板紙が42%なのだそうです(
木材の用途 - 森林・林業学習館)。紙の消費はある程度仕方が無いと考えられますから、ここでは建築・土木に関して考察します。火災・地震に対する脆弱性から建築・土木への木材利用に疑問がない訳ではありません。しかしながら、製材技術や加工技術の向上により弱点はある程度カバーされてはいるようですし(
公共建築における木材活用推進資料集 - 国土交通省)、利用方法にもよるのではないかと思います。環境材料としての木材利用の意義は高いようで、炭素を貯蔵する効果もあります。建築・土木に木材を利用していく日本の文化を守ることに小さくない意義は認められますから、消費量を減らす対策に限定せず、利用を維持・発展させながら、木材自給率を高めていく方向性で良いのだと考えられます。
実際問題、間伐で廃棄物がでますから、その対策を考えることも急務でしょう。バイオマス発電が考えられますが、安い海外燃料の輸入に繋がっているようで、現状はバイオマス発電が環境破壊にもたらしているという本末転倒の状況もあるようです(
活況のバイオマス発電 疑わしき持続可能性 計画乱立、第2の太陽光バブルか WEDGE REPORT 2017年12月21日 石井孝明)。
気候変動が異常気象の頻発をもたらす可能性はあると思います。日本としても世界の森林減少を食い止めていくことは重要で、そのためにも木材自給率を高めていくべきなんだろうと思います。特に熱帯雨林は環境保全機能も高く再生が難しいともされ(
熱帯雨林の再生は難しいと言われるのはどうしてですか?(森で遊ぼっ!)
森林−土壌相互作用系の回復と熱帯林生態系の再生に関する研究(鈴木英治(鹿児島大学)))、適切な支援が必要ではないかと考えられますが、日本がただただ木材を輸入して世界の環境破壊を促進していられる状況ではないことも考えなければなりません。南洋材の輸入割合がそれほど大きいという訳ではありませんが(
わが国の木材供給量と自給率(木材の輸入量) - 森林・林業学習館)、世界の木材の消費量は増加傾向にありますし、ある日突然問題解決するようなことはありませんから、全体の流れを意識して、着実に政策を実行していくべきではないでしょうか?米加欧州NZあたりはまぁ自分で何とかしてしまうんでしょうが、日本の木材輸入先を見てみると、インドネシア・マレーシアといった南洋材の輸出国以外にも、ロシアのタイガ(
FoE Japan | シベリアタイガプロジェクト)、チリ(パタゴニア)の温帯雨林(
木材貿易と森林~チリ - 熱帯林行動ネットワークJATAN)、乾燥大陸で森林再生の技術的困難性が考えられるオーストラリアの森林(
JATAN NEWS No.44 オーストラリアの森林伐採問題)、人口大国で黄砂を飛ばし三峡ダムを抱え万一の場合沖縄に甚大な負の影響をもたらすと考えられる中国の森林(
現代中国の森林をめぐる動向 - 筑波大学)がどう守られていくかも気になるところです。日本に責任が全くないとは言えないんだろうと思います。
※筆者のfacebook投稿を加筆・修正した記事。