「あほリズム」
(27)
過去などない、ただ記憶があるだけだ。
(28)
蜩(ひぐらし)が泣いている。彼は何の為に生きているか?
「ただ生きているだけさ。」
私が悩んでいる。私は何の為に生きているか?
「何の為に生きているのかと悩みながら、ただ生きているだけさ。」
(蜩は「泣き声コンテスト」昆虫部門できっとベスト10には入るな)
(29)
私自身とは私の視線が反射されて捉えた私である。
(30)
私は生命を得る前から私であった覚えがない。
従って、生命を失くした後も私である筈がない。
(31)
我々の視力は判断能力に応じて機能する。つまり、
見る必要のないものは見えない。ところが、
我々の懐疑は判断能力を無視して探究する。つまり、
何故見えないかと。
(32)
我々は「動く」物である。
「動く」物とは「今ここ」に止まらず、
「何時かどこか」へと「動く」物である。
(33)
人間以外の生き物は自分の「死」を認識していないというが、
ところが、彼等は危機を察知すると素早く逃げる。
つまり、身に迫る危機は予感しているのだ。
その予感とは我々が認識する「死」とそれほど違っているだ
ろうか?ただ、我々のように認識しないだけではないのか?
私はと言えば、自分の「死」どころか未だ「生」すら認識で
きずにいるというのに。