「近代文明の終焉」

2011-03-16 15:09:57 | 「パラダイムシフト」
          「近代文明の終焉」


 私は、今書いている「ゆーさんの『パソ街!』」という小説で、

近代文明はすでに終焉に向かっているのではないか、という仮説の

上で話を創っているところです。ただ、東北で起った大地震そのも

のによって、我々の近代社会が終焉するとは思っていません。それ

は、神戸の震災からの復興を見ても分かるように、壊れた古い町家

はこれ幸いと近代化が押し進められました。我々は、自然による災

害にはただ諦めるしかないからです。さらに、転落した者は再び同

じ場所へ復帰しようとするものです。ところが、今回の原子力発電

所の大事故については、その原因が地震発生による自然災害である

とはよもや誰も思っていないでしょう。さらに、再び同じことが起

らないと断言できない限り、否、できたとしても原発に頼った電力

供給は難しいでしょう。つまり、同じ場所へ戻ることが出来ない。

これまでも国民は、巨大地震発生を想定した上での安全性を、行政

と電力会社から散々聞かされてきました。彼等は国民の不安に対し

て詳細な情報を開示せず、その秘密主義は緊急会見でも見事に繰り

返されました。外に閉ざされた隠蔽体質の組織を丸山真男は「たこ

つぼ社会」と言いましたが、国民の安全よりもまず組織を守ること

が優先されるのです。個人の自由を認めない閉鎖性は儒教序列道徳

の所為だと、私は信じて疑いませんが、それは食品偽装問題等の謝

罪会見で会社が見せた対応とまったく一致します。ただ、原発事故は

今もなお深刻な事態が進行していて軽々に語る訳にはいきませんが、

「近代文明の終焉」はこの原発事故によってもたらされるだろう。

地球温暖化の原因といわれるCO2排出を削減するために、我が国

では原子力発電に大きな期待をかけ、原発はCO2を排出しない「

きれいな」エネルギーだと喧伝され推進されてきました。ところが、

絶対に起らないはずの放射能物質の飛散が起った。放射能汚染はこ

の先何十年も消滅することはない。ただ住めなくなるばかりではな

く、経済に深刻な影響を与えるだろう。それは、単に国内だけに止

まらず、輸出に頼る日本経済にとっても大きな打撃になることはま

ず避けられない。所謂「ジャパンフリー」が起って日本の安全神話

が崩壊する。地震大国の我が国で起った今回の事故は、原発の安全

性そのものも崩壊した。よもや、これからも電力供給を原子力発電

に頼るなどということは、地元住民の強硬な反対にあって出来ない

だろう。そもそも、福島の原発で供給される電気は総べて都心の需

要を賄う為のものなのだ。合理主義経済の一点のためだけに都市へ

の一極集中が図られ、吐き出された不都合な汚物は地方へ放棄され

てきた。しかし、今回の事故はその汚物によって電力供給が賄えな

くなり、やがて1300万大都市東京のライフラインを脅かそうと

している。高層化した便利な暮らしは電気が止まってしまえば、忽

ち玄関にさえ辿り着けない不便な暮らしへと一転する。私は「パソ

コンを持って街を棄てろ!」(百七)の中で、地震によって高層ビル

の一棟でも崩壊すれば東京から人々が逃げ出すだろう、と記述した

が、まさに今、近代都市東京はその機能が寸断され、やがて人々は

「パソコンを持って街を棄て」ようとするに違いない。メトロポリ

ス東京の電力を原発によって賄えなくなれば、1300万都民の生

活の大前提が覆(くつがえ)され、やがて高層化都市は廃墟と化した

限界都市へと変貌するかもしれない。そして、原発事故によっても

たらされた、最先端の近代文明都市東京の崩壊は、紛れもなく「近

代文明の終焉」の象徴となるだろう。

                                 (つづく)                                                                                                                                                 

                                                                                                                                              

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 「あほリズム」(127)~

2011-03-16 01:05:30 | アフォリズム(箴言)ではありません
           「あほリズム」



             (127)



 かつて、人は愛するひとにこう告げた、

「あなたさえ居れば、他に何もいらない」と。

果たして、我々は、今でもそう告げることが出来るだろうか?

この未曾有の大震災は、再び、我々に、愛する人こそが、

どんな豊かさよりも優先することを教えてくれた。


                        (つづく)


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