「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」

2012-02-17 12:55:46 | 「パラダイムシフト」



「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」




 14日、日銀は「1%の物価上昇を目指すことを明確化するとと

もに、達成に向けて10兆円規模の追加金融緩和を断行、デフレ脱

却と日本経済回復に向けた強い姿勢を打ち出した。」

                   [東京14日ロイター]

 その結果、今日(15日)の株式は大きく値を上げて9千円台を回

復した。まず、私が気になるのは「デフレ脱却」のシナリオが金融

政策にだけに頼ろうとしていることだ。難しいことは書けなので身

近な例で考えると、幾ら金融市場にお金を注ぎ込んでも実体経済が

冷え込んでいるのに金融の健全な循環は生まれないだろうと思う。

その結果、ダブついた金は再び金融市場へ投資されてカジノ市場を

賑わすだけに終わるのではないだろうか。実は、消費者は将来の不

安からいくらお金があっても使う気にならないのだ。それらは銀行

に預けられたり投資されたりして、経済にとって手段だった金融が

目的化して経済そのものは不活化から抜け出せないでいる。戦争を

するために戦費を増やして最新兵器を開発しても、手段である兵器

の開発が目的化してしまい、最新兵器で闘っても肝心の兵士の士気

はいっこうに揚がらず勝つことが出来ないアメリカ軍のようなものだ。

つまり、金融市場のための金融緩和に終わってしまうだろう。

 我々はこれまでにも数多く「デフレの克服」を唱える学者や経済

人を見てきたが、終ぞ誰一人、では、どうすればそれを克服するこ

とが出来るかを実体経済から語った人はいなかった。つまり、彼ら

は金さえ与えれば消費者は消費するものだと思っているのだ。もち

ろん、私にしても金さえあれば欲しいモノは山のようにあるが、だ

からと言って纏まった金を手にしてもすぐに買い求めたりはしない

だろう。何故なら、新しいテレビも新しい車も新しい家も、もうそ

んなに我々を歓ばせてくれはしないからだ。つまり、そんなものは

安いほど有難いのだ。そんな消費意欲に踊らされない冷めた社会で、

金さえバラ撒けば景気が良くなると信じるケインジアンの経済理論

は、産業革命によって古い経済が終わり、近代社会が発展した成長

期にのみ通用する古い経済学だ。何よりも消費者の意識が変わった

のだ。彼らはチョンマゲを結って文明を知らずに暮らしていたわけで

はないのだ。彼らをただ消費する「消費者(consumer)」と呼んでいる

限り、売り買いが活況を呈するのは博打好きだけが集う金融カジノ

市場に止まり、実体経済の中でモノが売り買いされ活性化することは

まずないだろう。先人の残した既得権益にしがみつきイノベーション

を怠ったこの国の財界の人々は、要するに、彼らのイノベーションとは

テレビや車を最先端技術でリニューアルすることであり、すでにテレビ

や車そのものが古いモノであることを認識していない。彼らは言い古さ

れた言葉ではあるが、以下のアメリカの諺を肝に銘じるべきだ。

「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」

(You can take a horse to the water, but you can't make him drink.)

金融緩和は、「消費者」に金を与えて市場まで連れ行こうとするが、

「消費者」はたとえ欲しいモノがあったとしてもかつてのように飛

びつくことはないだろう。

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