「アブラの冬」③
日本を含む西側先進諸国は、国際社会の警告を無視して核開発す
るイランに対して石油の輸入を止める経済制裁を科そうとしている
が、それに対抗してイランはホルムズ海峡の封鎖を言って脅したり
と、一触即発の危機にあることは間違いない。私は本来、これから
の日本経済を危惧して以下の本題を記すつもりでいたのだが、これ
までの前説が長くなってしまった。
「アラブの冬」①で言ったように、イスラエルによるイラン国内に
ある核施設への攻撃は高い確率で行われ、イスラム諸国を巻き込ん
だ第何次か知らないが中東戦争が起こる可能性だって否定できない。
ただ、産油国の多くは国内に民主化運動という内憂を抱えているの
でそれに係わってばかりはいられない。ところが、イスラエルでは民主
化が進み国家の代表は投票によって選ばれ、それらの国より憂いが
なく、ただ、外患のみに煩わされてきた。選択肢は遥かにイスラエルの
方が多い。しかし、選択肢が多いことが優位であると断定できないこと
は、以前に高坂正尭氏が「日本存亡の時」の中で述べていたように「迷
いを生み」結果的に間違った選択をすることだってある。言えることは、
中東の混迷は間違いなく原油価格を高騰させ、エネルギーをそれらの
国々に頼っている日本の経済を直撃することは避けられない。さらに、
先頃はインドネシアも自国の経済成長をまかなう供給を優先するために
石油の輸出を禁止しようとしている。
ところで、我が国は東日本大震災による福島原発の事故から、原
発の再稼働が国民の反対から困難になっている。すると当然、今の
ところ石油による火力発電に頼るしかないのだが、その想定も原油
不足と高騰から思惑通りいかないかもしれない。もし、中東の混迷
が長引くようなことになれば石油の備蓄が底を突き、かつてのよう
に石油ショックに見舞われて去年の夏以上に電力不足から日本経済
を担う製造業が生産できなくなって失速するかもしれない。そして、
一年も経てばフクシマのことなど忘れてしまい、冷めやすい世論は
背に腹は替えられんと原発の再稼働もやむなしと逆振れするかもし
れない。
もちろん、それは日本経済だけが被る危機ではなく、中国を始め
新興国でも深刻なエネルギー不足に悩まされることだろう。恐らく、
それらはロンドンオリンピックが閉幕した辺りに現れて、おっと忘
れてた、EUの経済危機もギリシャ一国さえも未だ片をつけられず
に果たしてそれ以外の国々をどうして救済できるだろうか。そう言
えば、四年前に北京オリンピックが閉幕すれば中国経済が崩壊
すると散々言われたが、豈図らんや、アメリカで格付け会社からト
リプルA の評価を受けていたサブプライムローンが破綻してリーマ
ンショックが起こったように、思いがけない国が経済危機に陥るの
ではないだろうか。それは世界経済の危機をもたらすに違いないが、
日本から起こらないことを祈るばかりだ。ただ、我々には更なる「冬
の時代」が待っているかもしれないことを忘れてはならない。「アラブ
の冬」は、資源を持たない我々にとっては「アブラの冬」の時代なのだ。
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