「ドラマ『半沢直樹』を見て」
あまりにも世間の評判が高いので、その評判に促されて後半から
見始めたのだが、また例によってケチをつけることになるが、何と
も芝居がかった演出にリアリティが感じられなかった。金融庁検査
の最後の最後に大どんでん返しが起こる展開は、素直に溜飲を下げ
ることが出来なかった。外資からの資本提携に迷う融資先の社長か
らの一報だけが一縷の望みでケイタイ電話を睨みながら今か今かと
吉報を待ちながら、結果を携えずに会社の存亡が係った会議に臨ま
ざるを得ない時点で大抵の思惑は実を結ばないものである。さらに、
同志と信じてた仲間に寝返られて肝心の告発書が握り潰されたにも
関わらず、その男と酒を飲み交わすことに躊躇いを感じない出来た
人間など何処にいるだろうか。何よりも甘言に惑わされて仲間を裏切
った者がその気まずさから普通は断るだろう。ただ、前フリで仲間の
絆を強調していたが納得いかなかった。そして、上層部の不正を暴く
手段が係わった人間の弱みを握って曝露を迫った証言だけが頼りと
いうのも主人公のドヤ顔とは裏腹に証拠が貧弱すぎる。役員会議の
場での過剰な土下座の演技や、しばしばアップになる主人公の迷い
のないしたり顔も鼻についた。いったいどこからその自信は生まれる
のか。私は、迷いのない正義など信じない。
(おわり)