「あほリズム」
(640)
我々の世界認識は我々の身体能力に適応して得られる。ところが、
科学技術の進歩によって我々の身体能力が及ばない世界をも認識で
きるようになり、我々は身体能力を超えた世界認識を手に入れた。
かつてギリシャの哲学者プラトンは、永遠不変ではないこの世界
を真の世界ではないとして、真の世界、つまり「イデアの世界」の
存在を説いたが、それはカントでは「物自体」、ショウペンハウア
―は「意志」と、呼び方は変わっても「プラト二ズム」の世界観は
ゆるがなかった。しかし、ミクロの世界もマクロの世界にも「イデ
ア」をうかがわせる形跡は何一つ見当たらなかった。最も大きな科
学の功績は何かと問われれば、「プラト二ズム」の終焉をもたらし
たことに尽きる。