「技術と芸術」
(7)
ニーチェによると、世界とは《生成》の世界であり、《生成》の世
界とは変遷流転する世界であり、それは《力への意志》によっても
たらされる。《力への意志》とは、変遷流転する生成の世界をもた
らす根源的な《意志》で、たとえば、春になれば植物の新芽が一斉
に萌え出でてくることや、または、人は思春期を迎えれば異性を意
識するようになるが、それは何も自分の「意志」からというよりは、
動物本能に促されての意志でしかなかったり、或は、そもそも我々
は意志して生れて来た訳ではないのに、だからといって引き返す意
志も思い通りにならないといったような、それぞれの意志ではどう
することもならない沸々と萌え出でる生成の「意志」であり、この
世界のすべての存在は、もちろん道端に転がっているの石にしても、
《力への意志》に突き動かされて変遷流転を繰り返している。それ
では、人間にとって《力への意志》はどう作用するのかといえば、
それは《情動》であり、《情動》こそが《力への意志》の発達形態
であると言う。
(つづく)