「技術と芸術」(7 )のつづきの続き

2020-03-05 10:55:07 | 従って、本来の「ブログ」

         「技術と芸術」

 

         (7)のつづきの続き


 ここでニーチェは驚くべきことを言っている。それは「感情の

状態性こそ根源的なものであり、思惟と意志もこれに属している

のである」と言うのだ。我々は当然思惟も意志も理性によって規

定されると思っているが、それらは根源的には感情の状態性に依

存していると言うのだ。たとえば、「正義」について考えてみる

と、そもそも個人だけだと善悪は認識できても社会は存在しない

のだから社会正義は成り立たない。正義とは社会的価値であり社

会正義のことである。正義が社会的価値であるとすれば、正義は

社会が変わる度に価値が変わる相対的価値であり、つまり絶対正

義は存在しない。「正義」とは社会的で相対的な価値であるなら

それを規定するのは社会を構成する個人に委ねられ、そして個人

の価値判断はそれぞれの善悪、否、もっとその根源を遡れば個人

の好き嫌いからもたらされ、その根源は感情にほかならない。

 

                      (つづく)