「あほリズム」
(654)
「神が死んだ」と説いたニーチェはこう言います、
「われわれは、真の世界を破棄した。いかなる世界が残されたか。
もしかすると、仮象の世界でも?・・・・断じて否。われわれは、
真の世界とともに、仮象の世界をも廃棄してしまったのだ。」
* * *
「真の世界」とは永遠不滅の「神の世界」、つまり「あの世」の
ことで、「あの世」の存在を信じない者は移り変わる「仮象の世界」
、つまり「この世」こそが「真の世界」だと思えるだろうか?とこ
ろで、われわれはいずれ必ず死んでしまう。だとすれば、果たして
自分が居なくなる世界を「真の世界」だと言えるのだろうか?「あ
の世」を棄てたことで「この世」も意味を失ってしまったのではな
いか。こうして世界はニヒリズムに陥る。そして、ニヒリズムを埋
めるように科学技術が発達した。われわれは小石で遊ぶ猿のように
科学技術を玩(もてあそ)ぶ。しかし、科学はせいぜい世界の一部で
しかなく決して世界全体を掌握できない。つまり、われわれは何ひ
とつ解らないまま死んでいく。