「コロナ脳」

2020-10-10 23:48:26 | 従って、本来の「ブログ」

          「コロナ脳」


 いま、あのホリエモンがコロナ禍への対応を巡って、飲食店との

間の対立が話題になっている。SNSで多くのフォロワ―の支持を

得ているホリエモンは、彼の言動がSNSによって拡がって、彼の

意見と異なる飲食店のオーナーに彼のフォロワ―たちからのバッシ

ングのデンワが殺到しているという。私は、数ヶ月前に全く反対の

立場から施設内でのマスクの着用を訴えたことがあったので、他人

事とは思えなかった。私のマスクを巡る顛末は以下の通りです。

 今年の夏の盛りに、あれは確かお盆前だったと思うが、いつもの

ように週に一度の近くの温泉施設へ行った。そこは長らくコロナ禍

の影響で休業を強いられていたが、と言うのも、我が町は都心から

離れた山間地にも関わらず4月にクラスタ―が発生し、誰もが未知

のウイルスに戦々恐々としていて、しかしその後は辛うじて収束に

向かって普段の生活を取り戻していた。その日はたしか日曜日で、

昼過ぎの施設はコロナ禍の最中にもかかわらずいつもよりも人出が

多かった。車を止めて玄関辺りを見ると、傍らのベンチに十人余り

の男ばかりの若者が屯していた。私はすぐに彼らが浴場へ入らなけ

ればいいがと思いながら、マスクをしながら、彼らを脇に見て中へ

入った。そして、靴を脱ぎ下駄箱へ入れていると、すぐに周りが騒

々しくなって、外で屯していた若い男たちが、一斉に、しかも誰一

人マスクをせずに、急かすように私の後に続いた。私は驚いて、す

ぐにフロントに駆け寄って彼らにマスクをさせるように訴えた。当

然、玄関ホールには、マスクの着用と手の消毒そして三密を避け大

声で話さないことの注意書きが掲げられていて、誰もがマスクをし

ている中で、彼らだけが堂々とマスクもせずに入場させるのはおか

しいだろうと訴えて、戸惑う彼らを後にして浴場に向かった。当然、

浴場ではマスクをして入るわけにはいかないが、施設側も三密を避

けるためにロッカーの使用を一つ措きにしたり、サウナの定員を半

減させていた。開いているロッカーを見ればすでにほとんどが使用

されていて、もしも彼らが入って来てもロッカーが使えないことは

明白だった。一連の抗議によってすこし興奮しながらも、自分の行

動の正当性を確かめながら湯に浸かっていると、今度はその男たち

が浴場の中へ躊躇いもなく入って来た。私は「えっ?」と思ったが、

すぐに軽装の彼らが残されたロッカーを一緒に使っていることに気

付いた。そして、彼らが入ってきただけで浴場は人集りで、とても

三密は避けられない状況だった。しかし、施設側は浴場内の過密化

を考慮せずに彼らを入場させた。私は慌てて浴場を飛び出て服を着

て、タテマエだけの管理責任に終始する温泉施設を後にした。

 さて、コロナ禍への不安の程度は人それぞれで、ホリエモンは従

来のインフルエンザとそれほど違わないと言いますが、しかし、一

般にはPCR検査で陽性と診断されると、少なくとも最低2週間の

隔離療養を強いられます。ほとんどの人が2週間も仕事を休むこと

はそれまでの生活を失ってしまいます。それが飲食店では営業の自

粛が求められ、たとえ再開したとしても風評被害は避けられないで

しょう。つまり、コロナ禍がそれほどの脅威でなかったとしても、

風評によって浮き沈みする飲食店にとっては決して侮れない病気な

のです。ここにコロナ禍を軽微な感染症だと考えるホリエモンと、

感染症そのものはどうであれ、一度でも店から罹患者が発生すれば

営業を続けられなくなることを気にかけている店主とは、そもそも

問題の論点が根本的に噛み合っていないのだ。