「あほリズム」
(767)
「生成そのもの――すなわち現実の全体――は、《いかなる価値をも
そなえていない》。」「というのは、存在者の全体の外には、この全
体にとって条件となりうるようなものは、もはやまったく存在してい
ないからである。」 ハイデガー著「ニーチェ」Ⅱ、354頁
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価値とは相対的価値である。全体は相対化できない。たとえば、全
国民が等しく億万長者になれば、億万長者としての価値はなくなる。
世界を外部から見れば、世界は存在することのいかなる《価値》も、
つまり生きることのいかなる《意味》もそなえていない。生きること
が《無意味》であるなら、自殺することは《理》には適っている。た
だ、命《生成》は《理》によってもたらされるわけではない。つまり、
「実存」は《理性》に先行するのだ。